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岡崎慎司、泥臭さ以上に際立つ適応力。プレミア制覇を経験した非エリート、さらなる成長へ【海外組の真価〜日本人選手の現在地】

フットボールチャンネル2月17日(金)10時21分
画像:岡崎慎司、泥臭さ以上に際立つ適応力。プレミア制覇を経験した非エリート、さらなる成長へ【海外組の真価〜日本人選手の現在地】
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岡崎慎司、10年間の変貌。恩師が語る順応する力

 これまで日本代表をけん引してきた選手たちが所属クラブで出場機会を失い、踊り場にあるように思える日本サッカー。いま改めて海外組の現在地を探っていきたい。今回取り上げるのは、レスターで奇跡のプレミアリーグ優勝を経験した岡崎慎司。日本代表歴代第3位の通算ゴール数を誇るFWは泥臭いイメージが先行しているが、その本来のすごみは「環境に順応する適応力」にある。プレミアリーグでは厳しい戦いが続いているが、その強みは30代となった今でも失われておらず、プレミア残留に向けチームの力になれるはずだ。(取材・文:元川悦子)

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「オカ(岡崎慎司)の10年間の変貌ぶりはホントすごいですよ。特に際立っているのが環境に順応する力。最初からエリートでない中で滝二(滝川第二高校)に行って、結果を残して清水(エスパルス)に来たけど、そこでも初めは出られない状況からポジションを掴んだ。

 日本代表でも、ドイツ、イングランドへ行ってもそうでしたよね。背景にあるのが『何とかして状況を打開するメンタリティ』。そこは飛び抜けたところがある。フィジカルとかテクニックとか能力は若干劣っていたかもしれないけど、それを補うだけのメンタリティとハートの強さをオカは持っているから。プロとしてはその部分が一番大事なのかなと思います」

 2005年にプロ入りした際、清水で指揮を執っていた長谷川健太監督(現ガンバ大阪)がしみじみ語った通り、岡崎慎司ほど大いなる変貌を遂げたストライカーは皆無に近いと言っても過言ではない。釜本邦茂、三浦知良(横浜FC)に次ぐ日本代表歴代3位の49得点という記録はそう簡単に打ち立てられないもの。滝川第二高の恩師・黒田和生監督(現台湾代表監督)でさえ「岡崎がここまで成長するとは思わなかった」と驚きを口にしていた。

 滝二から清水入りし、Jリーグを主戦場にしていた頃の岡崎は相手守備陣の裏に抜け出してからのワンタッチゴール、あるいはヘディングシュートが目立っていた。頭からの得点が多かったのは、少年時代を過ごした宝塚ジュニアの頃からの座右の銘「一生ダイビングヘッド」をピッチ上で体現すべく、貪欲に取り組んでいた成果でもあったはずだ。

 当時の岡崎の象徴的シーンの1つが、2010年南アフリカワールドカップ出場を決めた2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)の決勝弾。中村憲剛(川崎)のスルーパスに反応して裏を取り、いったんは左足でシュートを放ったもののGKにセーブされ、こぼれ球を頭で押し込む形で、「裏」と「ヘッド」の両方という得意パターンで奪った歴史的1点だった。

「(ラストパスが)足元に入ったなと思ったけど、跳ね返ってきて、たまたま近くに来て、勢いで入ったゴール」と本人は息を弾ませていたが、これが彼の大きな飛躍につながったのは間違いない。

マインツでは1トップで主に出場。全力でやり抜いて出した結果

 だがFWというのは、得意な形だけを繰り返していたら必ずと言っていいほど相手に読まれる。岡崎はその厳しい現実を南アW杯での先発落ちによって痛感する。

「(代表で)はワンタッチでゴールを決めるってのを求められることが多かったけど、選択肢1つだけだと世界に出た時に困った。だからこそ、前を向いて仕掛けていくことが大事だと思った」と2010年夏、彼は自らに言い聞かせるようにコメント。ドリブル突破や相手を背負いながらの反転など、ゴールのバリエーションを増やそうと必死にトライしつつあった。

 こうした地道な努力が大きく花開いたのが、2013年夏に移籍したマインツ時代だろう。2011年アジアカップ(カタール)制覇の直後に赴いたシュトゥットガルト、アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表では右サイドでの起用がメインで、思うようにゴールへ突き進むことはできなかったが、マインツでは1トップでコンスタントに出場。13/14シーズンに15点、翌14/15シーズンも12点を奪うことに成功し、2年連続2ケタゴールという偉業を達成する。

 これは高原直泰(沖縄SV)も香川真司(ドルトムント)もなし得なかったことだ。最前線からの激しい守備に加え、相手を背負って起点を作る仕事も担いつつゴール前へ飛び込んでいく。その幅広い仕事を全力でやり抜いた結果が数字に表れたのだ。

 岡崎はマインツ1年目に自身の変化をこう語っていたことがある。

「マインツでのゴールは今までの自分にないパターンばっかりなんです。左右の足もあったし、持ち込んだゴールもある。日本ではクロスから決めるイメージが80%くらいだった。時間はかかったけど、ここまで自分がやってきたことは間違いじゃなかったって思えるのは大きいですね。正直、このチームでやってると相手が大したことなくてもチャンスが少ないんで、そういう中でよく2ケタ取れたなと思います」

「泥臭い点取り屋」が「華麗な点取り屋」へ

 清水を離れてからの足掛け5年間で、岡崎はサイドでのプレー経験によってもともと得意だった裏への飛び出しに磨きをかけ、さらにマインツでの1トップで相手を背負いながらフィニッシュまで持っていく力強さを身につけた。苦手だった両足でのゴールもスムーズに決められるようになり、点取り屋としての存在感を高めていった。

 日本代表でも2014年ブラジルワールドカップ・コロンビア戦の意地のゴール、2014年11月のオーストラリア戦(大阪・長居)で右足インサイドのヒールなど多彩な得点を挙げられるようになった。

 このオーストラリア戦の一撃は、南アで定位置を奪われた同い年の本田圭佑(ミラン)に「あんなに下手やったやつがみなさんの期待に続けて得点を取り続けて、並大抵の努力じゃなかったと思うし、ストライカーとしての気質というか、エゴイスト的なものもどんどん磨かれてるなという印象ですね」と言わしめるほどのインパクトを残した。「泥臭い点取り屋」が「華麗な点取り屋」へと変化しつつあったのは間違いない。

 その進化形と言えるのが、2015年夏に移籍したレスターでの一挙手一投足だ。レスターでは傑出した点取り屋であるジェイミー・ヴァーディーと2トップを組み、彼を輝かせる黒子としての役割を担ったが、ストライカーの意地とプライドは失わなかった。

「(クラウディオ・ラニエリ)監督に会った時にも『お前はレスターでは守備の人間だ』と言われましたし、いろんな役割があると思いますけど、自分が求めてるものはゴール。点を取って監督に『どうだ』って言えるようなくらいのものを見せたいという気持ちがすごく強いです」と岡崎は言い切り、屈強な肉体作りや走力アップなど、フィジカル強化にも務めた。

レスターでプレミア優勝。30歳でも進化は止まらず

 指揮官が求めるハードワークをこなしながらゴールにも突き進んでいくことは非常に難易度が高いが、岡崎は新天地1年目だった15/16シーズンに5ゴールを記録。その中の1つである2016年3月14日のニューカッスル戦のオーバーヘッド弾は目の肥えたイングランドメディアからも絶賛された。

「あれだけ切り取るのもなんだけど、ああいうのが増えてくればいい。少ないチャンスを決めるのは前からやっていたことだけど、やっぱり自分はチャンスが多くないと決められない。何回自分がチャレンジしたとか、何回チャレンジできるボールが来たかとか、そういう場面を自分が数多く作り出していくことが大事だと思います」と岡崎は得点に至る形を増やしていく努力を続けていることを明かしていた。

 そういった試みは苦境にあえぐ今季も続いているはず。岡崎慎司は単に泥臭いだけでなく、チーム事情や状況に合わせて変化していける柔軟性や臨機応変さでここまで生き抜いてきた。

 その強みは30代を迎えた今も失われていない。奇跡のプレミアリーグ優勝を遂げたレスターで36試合に出場し、高い評価を得ることができたのは、そういったものの積み重ねがあったからだ。

 自分自身に限界を作らず、高い領域を追い求めていく彼なら、もっと多彩で幅広いプレーをこなせるストライカーになれるはず。恩師・長谷川監督が認める通り、それだけのメンタリティをこの男は持っている。

(取材・文:元川悦子)

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