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PSG、バルサに完勝の衝撃。まさかの結果に大騒ぎの仏メディア。指揮官の評価は一転か

フットボールチャンネル2月17日(金)15時29分
画像:PSG、バルサに完勝の衝撃。まさかの結果に大騒ぎの仏メディア。指揮官の評価は一転か
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「驚異的」、「魔法のようだ」。翌日の現地紙は大騒ぎ

 14日、UEFAチャンピオンズリーグラウンド16、パリ・サンジェルマン(PSG)対バルセロナの一戦が行われ、ホームのPSGが4-0という驚きのスコアでカタルーニャのクラブを打ち破った。まさかの結果とも言えるこの完勝劇に、フランスは大騒ぎとなっている。(取材・文:小川由紀子【パリ】)

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「勝てると信じていたが、まさか4-0とは……」(マルコ・ヴェッラッティ)

 と実際にプレーした選手でさえ漏らしたほど、ほぼ完璧なプレー内容でPSGはバルセロナに圧勝した。

 パリジャン紙によれば、過去に第1レグを4-0で勝利した185チームのうち、次ラウンドに勝ち抜けたのは……185チーム。つまり、PSGは8強入りの可能性を、ほぼ100%に近い確率で手に入れた。

 翌日のレキップ紙の見出しは『PRODIGIEUX』(驚異的)、パリジャン紙は『MAGIQUE!』(魔法のようだ!)等々、現地は『パリ・サンジェルマン史上最高の一戦』と大騒ぎだ。この試合を中継したBeINスポーツは、ピーク時には180万人という歴代最高視聴人数を記録した。

 実際、この試合でのPSGの戦いぶりは「驚き」だった。試合後の会見で、ウナイ・エメリへの質問の口火を切ったパリジャン紙のPSG担当ドミニク・セベラックの質問が、「今日のパフォーマンスにはいったいどんな秘密が?」だったのも、今季のPSGからは予想し難いパフォーマンスだったから。

 その質問にエメリはこう答えた。

「この試合に合わせて的確な準備をしてきた。バルサのような強豪相手の試合では、90分間、一瞬たりとも気を抜かない集中力と、個人技とチームプレーが両方とも効果的に発揮されることが必要だ。それらすべてが機能した結果だ」

 指揮官が口にするありがちなセリフではあるが、実際に勝利の決め手となったのは、選手も含めたチーム全員が何本も何本もバルサの試合のビデオを見て相手を研究し、それをベースに講じた戦略をピッチ上の選手全員がまっとうしたこと。

 そして選手ひとりひとりが自分に与えられた役割に忠実に動きつつ、試合によってパフォーマンスに波があるのは避けられない中、全員が持てる力を最高レベルで発揮できたこと、だったように思う。

 たとえば18分、直接FKからという最高の形で先制点をとったアンヘル・ディ・マリア。彼は今季レギュラーに定着できず、この冬のメルカートでユリアン・ドラクスラーの入団が発表されると、中国リーグ行きはほぼ確実と言われていた。

ディ・マリア活躍の布石。直前のリーグ戦での起用

 チーム最高額のキャプテン、チアゴ・シウバに次いで月額105万ユーロを稼ぐディ・マリアには、サポーターから「給料ドロボー」の野次が飛んでいたほどだ。しかし55分にも追加点をあげたアルゼンチン人MFは、この夜一躍ヒーローとなった。

 今季は右サイドでルーカスを多用していたエメリ監督だが、おそらくバルサ戦にはディ・マリアを使おうと早くから決めていたのだろう。直前のリーグ戦で2試合続けてディ・マリアを先発で起用。その期待に応えるかのようにバルサ戦の4日前のボルドー戦では1ゴール1アシストの活躍と、すでにエンジンは良い感じで回転数を上げていた。

 素晴らしい才能を持ちながら、コンスタントに実力を出す点に問題があったディ・マリアの絶好調期がぴったりこのバルサ戦にぶつかった形だが、エメリ監督の使い方もうまかった。

 そして逆サイドのドラクスラーが2点目、エースのカバーニがダメ押しの4点目をあげて、トップの3人が揃って得点というのも絵に描いたような出来。

 試合後の会見で「バルサのMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)の脅威はみな知っていたが、PSGのCDD(カバーニ、ディ・マリア、ドラクスラー)については過小評価していたのでは?」と聞かれたバルセロナのルイス・エンリケ監督は、

「もちろん彼らがワールドクラスのアタッカーだということは熟知していた。攻撃の才に加え、ディフェンス面での貢献も大きい。次の試合までに対策を講じたい」と答えたが、彼の言葉どおり、両サイドのドラクスラーとディ・マリアはハーフライン付近まで下がって精力的に守備に参加した。

傑出したパフォーマンスを披露したヴェッラッティ

 そしてカバーニは、もとよりトップで踏ん張る“王様ストライカー”ではなく身を粉にしてディフェンスにも貢献するタイプだ。

 単純に攻撃の能力だけ見ればMSNの方がCDDより勝るだろうが、守備貢献などを含めたチームプレーへの寄与を考慮するならCDDの価値は相当高い。

 それに、スアレスがボールを持って前を向けば必ず紺色のシャツが目の前をふさいでいる、といった徹底マークの状態にあったこの試合、MSNのシュート数は、メッシがブロックされたショット1本、ネイマールが枠外2本の計3本のみに対してCDDの3人はゴール4本も含めて計10本と圧勝だった。

 中盤での勝負も、PSG勢に軍配が上がる。中でも圧巻だったのはヴェッラッティだ。レキップ紙に面白い統計があった。

 この試合でチームナンバー1のパス数を記録したのはマテュイディだったが、彼は後方へのパスも多く、前方をプラス、後方をマイナスとして全部のパスで稼いだ距離を計算すると、マテュイディの場合は1回のパスの平均がほぼ0m、という数字になった。

 ところが、パス総数では劣るヴェッラッティは、ほとんどのパスを攻撃方向へ出していて、1回のパスにつき6m以上押し上げるという驚異的な数字だった。ドラクスラーの得点をアシストした場面でも、右サイドで彼がフリーになるのを一瞬で見極めて正確なパスを送っている。ヴェッラッティの優れたビジョンはPSGにとって強力な武器だ。

 昨年、準々決勝のマンチェスター・シティ戦で両レグとも勝利を逃したときも、彼の不在の影響は計り知れなかった。

チアゴ・シウバ欠場も代役の21歳DFが躍動

 しかしマテュイディとラビオの貢献度も大きかった。上の統計では一見ネガティブな要素にも思えるが、マテュイディに任されている仕事は、相手からボールを奪い取って素早く近くの味方にさばくことあり、ヴェッラッティのように、攻撃の起点となることではない。自慢の体力をフル稼働させて、マテュイディはこの地味な作業を懸命にこなした。

 活力あふれるプレーが売りのラビオもしかり。彼は相手からボールを奪うと、意気揚々と前線に上がって最後のパスチョイスに失敗してチャンスを潰す、というダメパターンがちょくちょく出るのが欠点だが、この試合ではエメリ監督が特に徹底したのか、ある高さまで持ち上がったら必ず攻撃陣にボールを預けていた。

 まるで「僕が持ち上がれるのはこのラインまで」という見えない線でも引かれているかのように。このおかげで欠点は出ずに良い面だけが活きた。

 彼らが中盤を支配した結果、バルセロナはボール支配率ではPSGのそれを上回ったにもかかわらず、まったく自分たちの思惑どおりにゲームを展開することができなかった。

 1週前のリール戦でふくらはぎを痛めてこの試合を欠場した主将チアゴ・シウバの穴を埋めた21歳のセンターバック、キンペンベも、初CL出場がバルセロナ戦、というテンションの高い状況をものともせず、スピードと瞬発力をフルに生かしてバルサの攻撃陣を苦しめた。

 不安要素だったシウバの不在は、「逆にメンタルの弱いシウバがいなくて良かったかもしれない」などと言われているほどだ。

エメリ監督、クラブ内での立場好転か

 そしてエメリ監督。12月12日の抽選会でラウンド16の相手にバルセロナを引き当てた頃、PSGは3戦連続勝ち星から遠ざかり、エメリの首はまさに皮一枚でつながっている状態だった。

 アル・ケライフィ会長がカタールのお偉いさんに呼ばれたという噂も流れたが、案件はもっぱら「監督の去就問題」だと言われていた。抽選の結果が決まったあとは、フランスのメディアは『エメリのバルサ戦の対戦成績は絶望的!』と報じていた。

 アルメリア、バレンシア、そしてセビージャでの監督時代に計23回バルセロナと対戦し、エメリはわずか1回しか勝利をあげていなかった(1勝16敗6分)。

 年間総得点数など、数々の歴代リーグ記録を作ってリーグアン4連覇をおさめた前任者のローラン・ブランがクビになったのは、CL4強入りの壁を越えられなかったからだが、それに加えて、欧州制覇を目標とするPSGにとって、バルセロナ超えはひとつの指標でもあった。

 期せずして、カタール勢が参入して以来、PSGは今年を含めて3シーズン、バルサと相見えるチャンスを得ている。12-13シーズンは準々決勝であたり、総計3-3ながらアウェイゴールの差で敗退、14-15シーズンはGLで同グループとなり、ホームでは3-2で勝利したが、その後準々決勝で再戦すると、このときは両レグで敗れて総計1-5と完敗だった。

 何度も道を阻まれたバルセロナ。その彼らを踏み越えてCLの頂点を目指すことは、PSG、そしてオーナーのカタール勢にとって、この上なく重要なことだった。

 それを実現するべく招聘されたウナイ・エメリに、まるでオーナーの信用を得るための通過試験のごとく与えられた、今回のバルセロナとの対戦チャンス。そして彼は見事、4-0という結果を手にいれた。

 試合後「この試合に勝ったことであなた自身のクラブでのポジションも好転するのでは?」と聞かれたエメリは、「監督の仕事は1試合の勝利で変わるようなものではない。私が満足しているのは、選手がファイティングスピリッツをもって戦ったこと、そしてサポーターも一体となって素晴らしい雰囲気を作ったこと。個人的なことではなくね」と答えた。

 実際まだ勝ち抜けが決まったわけではない。過去の統計を鵜呑みにして浮かれるのは早い。しかしこのバルサ戦の夜は、エメリはPSGの指揮官に着任して初めて、枕をいつもよりほんのすこし高くして眠れたのではないか、という気がする。

(取材・文:小川由紀子【パリ】)

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