本田、ミランで戦力と評価されない理由。名門の経営難に翻弄された“10番”の苦闘【海外組の真価〜日本人選手の現在地】

2月20日(月)10時21分 フットボールチャンネル

本田、出場はますます困難。夏の退団は既定路線に

 これまで日本代表をけん引してきた選手たちが所属クラブで出場機会を失い、踊り場にあるように思える日本サッカー。いま改めて海外組の現在地を探っていきたい。今回取り上げるのは、ミランの本田圭佑。名門で10番を背負う日本代表MFは「ミランに在籍する実力はない」と批判されながらも、加入後2年半で公式戦83試合に出場するなど一時は主力としてプレーしてきた。しかし名門の経営難に翻弄された本田は、今季は出場機会を得ることができず、退団は既定路線とされている。果たして、本田はなぜ戦力として評価されなくなってしまったのだろうか。(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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 19日に行われたミランvsフィオレンティーナ戦でも、本田圭佑に出場機会は訪れなかった。

 前節のラツィオ戦では、凡庸なパフォーマンスに終始していたマヌエル・ロカテッリに代わってホセ・ソサが投入されたのち、本田はアップを命じられる。その後他に一人が投入された後にも最後の1枠の選択肢の一つとしてアップを続けていた。

 ところが、アンドレア・ポーリが後半29分にピッチで痛みを訴える。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督は3人目としてマティアス・フェルナンデスの投入を決断した。

 今季これまでのリーグ戦出場時間は合計92分と、やっと1試合分となっている。位置付けは、絶対的な立場を築いているスソの控え。層が薄いと言われたウイングには冬の移籍市場で選手が補強され、他のポジションで使われる様子はない。出場はますます難しい状況となった。

 17年6月30日の契約満了をもってクラブから離れるというのは、もはや既定路線。さらに出場機会が得られないことで、すでにロシアW杯アジア最終予選の試合で先発落ちも経験した日本代表の招集も危うくなるかもしれない。3年前、派手に入団会見を行ってミラノにやってきた10番は、音沙汰なく欧州の名門からフェードアウトする可能性も高くなってきている。

戦力として評価されず…加入当初から様々な批判

 戦力として評価をされていないということは、厳しいようだが出場時間の少なさが物語っている。短い出場機会の中でも満足なパフォーマンスを出来たわけではなかったから、監督からの評価が低いものになるのも仕方がない。

 ただ、2年半の間で公式戦83試合に出場していた選手が急にこうなるというのも解せないところだ。この3年間の成績の意味は何だったのか。

 本田圭祐が加入当初から様々な批判にさらされた選手だったことは、これまでも様々なニュースソースで伝えられているところである。「本田は10番どころか、本当だったらミランに在籍するべき実力の選手ではない」ということを、ファンもメディアも、元選手も語っていた。

 しかし、経営難に直面するミランは昔のように良い選手を取れなくなっていた。新戦力の獲得手段はピークを過ぎて出場機会のない「元スター選手」を買うか、移籍金ゼロで取れそうな選手を獲得するかという2手に分かれていた。そして本田は、後者のうちの一人だった。

 かつてのオランダトリオにアンドリー・シェフチェンコ、全盛期のカカー、またアンドレア・ピルロらの名手に見慣れたファンは激しく拒絶した。本田が14/15シーズンの序盤で6試合連続ゴールを挙げても、評価は全く変わらなかったのである。マークがきつくなって点が奪えなくなれば一斉に批判を浴びる。

 過渡期でチーム全体のパフォーマンスが低迷していたことも、彼には不運だった。ショートパスの交換をベースとした遅攻の中で活きる選手だが、必要とされる距離感は得られない。そして、個で状況を打開できなければさらなる批判に晒された。

モンテッラ監督のもと戦術的に噛み合いにくく

 昨季も本来のトップ下で成績を残せずに、前半戦はポジションを失う。ただそれでも、最終的にはスタメンの一角を不動のものとした。シニシャ・ミハイロビッチ監督(現トリノ)のもと、4-4-2の右サイドハーフとして戦術の安定に寄与したのだ。

 そのプレゼンスは、中盤戦でのチーム成績の上昇につながった。守備をやらない選手も多いなか、黙々と攻守両面での上下動をこなす本田は必要とされる存在となっていた。

 個人成績も残った。カップ戦を含めて、2ゴール7アシスト。得点が要求される10番としてはもちろん物足りないが、ゴールから離れたサイドでプレーをするMFとして考えるならそれほど悪い数字でもなかった。

 本田はチームプレーに徹することで爪痕を残すことができ、定位置と継続した出場機会を得ることができた。しかし今季になり、事情が変わった。

 監督が変わり、戦術が変わった。モンテッラ監督は、4-3-3にシステムをシフト。そしてビルドアップの仕方も、攻撃的な選手に求めるタスクも大きく変えた。

 組み立ては中盤から前線の位置ではなく、センターバックとアンカーの位置でやる。パスワークに緩急をつけるためのゲームメイクは後方で行うのだ。そして前線の3トップと両サイドバックは攻撃時に高い位置を取り、後方の選手は彼らに素早くパスを入れて攻守を切り替える。

 そして両ウイングには、高い位置に張りつつ、外から中へと仕掛ける動きでゴールを脅かすことが求められることとなった。こうなると、エリア内の密集に仕掛ける敏捷性と強引さに欠け、プレースタイルも遅攻寄りの本田は、戦術的にも噛み合いにくくなった。

3年間で翻弄された本田。個の力量にも疑問は残るが…

 そして守備への貢献という部分でも他の選手で間に合うようになった。経営難に直面していたミランは、イタリア人を中心とした若手重視の方向に舵をとる。そんな若手たちは皆よく走り、勤勉に守備にも参加している。

 右ウイングとして結果を出したスソは、実はこの面でも期待を裏切らなかった。守備の際には、よく戻ってサイドバックをフォローする。この上でも、本田を置く必要がなくなったのである。加えてスソを温存させるために先発出場した10節のジェノア戦などは、凡庸なパフォーマンスに終始。これもまた、評価を下げる原因となっただろう。

 監督も頻繁に変わり、チームのコンセプトも定まらない。本田は、その中で翻弄された選手の一人だった。そして規律あるプレーで評価を掴んだかと思えば、チームが変わって別の物差しが必要となるという不運。もっとも、個の力量でそれらを跳ね飛ばすことができなかったという現実もまた残る。その顛末として、今の状況があるのだ。

 ミランは、ここにきて各選手に疲労が蓄積している。果たしてその中で、もう一度必要とされる時は来るのか。

(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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