潰えたアジア制覇の夢。川崎Fが解決できなかったACL山東泰山戦の課題

2024年2月21日(水)18時30分 FOOTBALL TRIBE

川崎フロンターレ 写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のラウンド16第2戦(計8試合)が、2月20日より各地で開催されている。このラウンド16で、川崎フロンターレと山東泰山(中国)が激突。川崎Fの本拠地、等々力陸上競技場にて行われた2月20日の第2戦で、同クラブが2-4の黒星を喫した。これにより2戦合計スコアが5-6となり、川崎Fのラウンド16敗退が決定している。


2月13日に行われた敵地での第1戦を3-2で制したものの、このリードをふいにしてしまった川崎F。特に前半の試合運びが拙く、同25分までに喫した2失点が尾を引く展開となった。


川崎Fのラウンド16敗退の原因は何か。ここでは同クラブDF三浦颯太の第2戦終了後のコメントを紹介しながら、この点を検証・論評していく。




川崎フロンターレ DF三浦颯太 写真:Getty Images

三浦「もう少しチーム内で意思統一できる」


昨年12月にヴァンフォーレ甲府から川崎Fへの移籍が発表され、今回の第2戦で基本布陣[4-1-2-3]の左サイドバックを務めた三浦。同選手は第2戦終了後の囲み取材(質疑応答)で、自チームの自陣からのパス回し(ビルドアップ)に関する反省点を口にしている。


ー今年の公式戦3試合(ACLラウンド16の2試合と、2月17日のFUJIFILM SUPER CUP 2024)を拝見した限り、試合の序盤で川崎Fのビルドアップが手詰まりになっている印象を受けました。この原因について、三浦選手はどのようにお考えですか。


「試合の入り(序盤)から相手チームがガツガツ来るので(前線から積極的に守備を仕掛けてくるので)、無理をしてパスを繋ぐか繋がないかの判断は、もう少しチーム内で意思統一できるかなと思っています。そこは修正したいですね。(基本的には自陣から丁寧に)パスを繋ごうとしているんですけど、もう少し簡単にやっていい部分(ロングパスで相手の守備を掻い潜るべき場面)もあったと思います」




川崎フロンターレ DF大南拓磨 写真:Getty Images

攻撃配置が整わなかった川崎F


自陣から丁寧にパスを繋ぐべきか否か。この状況判断がチーム全体として的確でなかったと三浦は振り返っており、確かにそれも反省材料のひとつだが、川崎Fの根本的な課題は別にあると筆者は考える。特に今回のACLラウンド16の2試合では、同クラブがビルドアップを試みた際の、各選手の立ち位置に問題があった。


川崎Fが先制ゴールを奪われた、第2戦の前半8分がこの典型例。同クラブはこの場面でもビルドアップを試みており、GKチョン・ソンリョンのショートパスをDF大南拓磨(センターバック)が自陣ペナルティエリア付近で受けたが、DF佐々木旭の攻め上がり開始が早すぎたため、大南との距離が延びてしまっている。右サイドバックの佐々木へパスを出せなくなった大南は体の向きを変えようとしたが、この動きを対面の山東のMFリー・ユェンイーに読まれ、ボールを奪われてしまった。


大南のボールロストから始まったこの速攻を、山東のFWクリサンに物にされた川崎F。この場面では基本布陣[4-1-2-3]の中盤の底を務めたMF橘田健人が2センターバック間へ降り、[4-4-2]の守備隊形を敷いた山東の2トップとの数的優位(3対2)を確保したかったが、こうした工夫も見られなかった。


川崎フロンターレvs山東泰山、先発メンバー

ビルドアップに最適な配置を整えるのに時間がかかる。そしてこれによって相手チームの前線からの守備(プレッシング)に手を焼く。これが今回のACLラウンド16の2試合や、2月17日のFUJIFILM SUPER CUP 2024(ヴィッセル神戸戦)で窺えた川崎Fの現状の課題。特にセンターバックとサイドバックの距離感は修正ポイントだろう。サイドバックを常時高い位置へ上げたいのであれば、センターバックとサイドバックの間へ中盤の選手を降ろし、両者の中継役を担わせるという手段が有効だ。今回のACLラウンド16第2戦の途中からこの動きが徐々に見られたが、この隊形変化をより磨き上げる必要があるだろう。


前述の失点以降もパスの出し手と受け手の距離が遠く、ゆえにビルドアップが安定しなかった川崎Fは、前半25分にも山東に得点される。MF脇坂泰斗のコーナーキックが山東の選手に直接渡ると、アウェイチームが自陣から速攻を繰り出す。山東のMFバレリ・カザイシュビリの敵陣左サイドからのクロスに、味方DFガオ・ジュンイーがスライディングで合わせている。この時点で第2戦のスコアは0-2、2戦合計スコアは3-4。川崎Fはさらなる苦境に陥った。


川崎フロンターレ FWエリソン 写真:Getty Images

新加入選手の躍動も報われず


川崎Fにとって最悪と言える試合展開のなかで、MF山本悠樹、FWエリソン、DF三浦の新加入トリオが気を吐いた。


迎えた前半30分、山東の選手の縦パスを三浦が自陣でカットし、センターサークル付近に立っていたエリソンにボールを渡す。その後エリソンからボールを預かった山本が相手最終ラインの背後へパスを送ると、後方から攻め上がった三浦がこれに反応。山東の2センターバック間を走り抜けた三浦のシュートがゴールマウスに吸い込まれ、川崎Fが2戦合計スコア(4-4)で追いついた。


後半14分には、山東の最終ライン、中盤、最前線の3列が間延びした隙を突くことに成功。山東の最終ラインと中盤の間に立っていたMF脇坂が右サイドへパスを送り、このボールをMF家長昭博が受ける。家長のクロスボールに合わせたFWマルシーニョのシュートはゴールポストに阻まれるも、こぼれ球をエリソンが押し込んだ。


ACL 川崎フロンターレvs山東泰山 写真:Getty Images

2戦合計スコアを5-4とし、川崎Fは準々決勝進出に近づいたが、後半28分に守備が崩壊。基本布陣[4-1-2-3]の中盤の底、MF橘田の隣のスペースを相手MFカザイシュビリに突かれると、その後左サイドに立っていたFWクリサンにボールが渡る。左サイドから中央へ切り込んだクリサンにミドルシュートを放たれ、川崎Fは失点した。


2戦合計スコア5-5で迎えた後半アディショナルタイム、山東がコーナーキックのチャンスを得ると、川崎F陣営がこれをクリアしきれず。ゴール前にこぼれたボールを山東のDFジャジソンが押し込み、アウェイチームが後半終了間際に勝ち越した。


第1戦から続いた壮絶な点の取り合いは、このゴールを以て幕引き。ACL2023/24のグループステージを無敗(5勝1分け)で突破し、クラブ史上初のアジア制覇への気運が高まっていた川崎Fだが、ホーム等々力での悲劇的な敗戦によってこの夢が潰えた。

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