大坂なおみが成し遂げた3人目の偉業。レジェンド選手たちに並んだ勝負強さ

2月21日(日)17時45分 Sportiva

 女子シングルスの優勝トロフィーを抱えながらロッド・レーバー・アリーナを後にした大坂なおみ。センターコートから続く通路の先で待ち構えていたウィム・フィセッテコーチ、茂木奈津子トレーナー、中村豊トレーナーを見つけると、一瞬で子どものような満面の笑顔に変わった。思わず小走りになり、トロフィーのふたを床に落としてしまうほどの喜びようだった。


決勝翌日に行なわれたフォトセッションにドレスで登場した大坂なおみ
 オーストラリアンオープン(全豪オープン)女子シングルス決勝で、大坂(WTAランキング3位、2月8日づけ/以下同)は、ジェニファー・ブレイディ(24位、アメリカ)を6−4、6−3で破り、2年ぶり2度目の優勝を果たした。

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 ブレイディは、オーストラリア入国者全員に課された新型コロナウィルス対策の検疫14日間で、完全隔離となった72名中の1人だった。

 この困難な状況を乗り越え、25歳で自身初のグランドスラム決勝進出を果たしたが、全豪オープンで2回目、グランドスラムでは通算4回目の決勝進出となる23歳の大坂に、経験の差を見せつけられる形になった。

 決勝までに、サービスエースを大坂は44本、ブレイディは32本。サービスゲームの獲得率は、大坂が86.7%、ブレイディが85.5%。サーブの最高時速は、大坂が時速196km、ブレイディが時速191km。ともにビッグサーブを軸にゲームを展開できる強さがあるが、今の大坂には、サーブだけに頼らず勝てる多様性がある。

 決勝では、互いにファーストサーブの確率がよくなかったが、「(リターンは)プレースメントがとても大切で、いかに安定性を保って返すかも大切」と語る大坂のリターン返球率は71%と安定していた。第1セットでは第4ゲーム、第2セットでは第2ゲームで、大坂が先にブレークに成功。両セットともにゲームカウントで常に先行しながら、ブレイディにプレッシャーをかけることができた。

「彼女(大坂)は、必要な時にいいショットを打って来た。すごく攻撃的で、いいパフォーマンスでプレッシャーをかけてくる。これはどの選手にもできることではない」

 このように振り返ったブレイディに対して、大坂はラリー戦で深さや角度を駆使して好機をうかがいながら打ち合った。無理を強いられるプレーが多かったブレイディは31本のミスを犯し、最後まで大坂のテニスを崩すことができなかった。

「パンデミックの中、グランドスラムでプレーできてうれしかった。(全豪で2回目の優勝ができて)穏やかな気持ちです」

 こう語る大坂は、以前とは目標設定が変わり、今は自分のためだけでなく、一緒に戦うフィセッテコーチ、中村トレーナー、茂木トレーナー、いわゆる"チーム大坂"のために勝ちたいという気持ちになっている。

 大坂と茂木トレーナーは2018年からの付き合いだが、大坂によると茂木トレーナーは、とても穏やかな人で泣き上戸らしい。買い物仲間でもある。フィセッテコーチと中村トレーナーとは、昨年の新型コロナウイルスの感染拡大によるツアー中断中や、昨年末のオフシーズンに、ロサンゼルスにある大坂の自宅でともに過ごし、厳しいトレーニングを積むことで仲間としての絆が深まった。

「(以前は)私は歴史を作りたかった。日本人初のグランドスラム優勝者になりたかったし、それが私の目標だったと思う。トロフィーや壁に自分の名前が刻まれているのを見るのはうれしいけれど、(今は)それより大きなことがあるように思います」

 大坂は自分自身を、"チーム大坂"の"器"に見立てている。みんなが自分を勝たせるためにやってくれているサポートに報いるため、選手としていい結果を残し、チームみんなの努力を具現化していくのが役目。大坂はチームの成果が結集される"器"になり、いい結果が生じてチームのみんなが笑顔になることに、より大きな意味を見出しているのだ。

「自分自身のことを考えていない時のほうが、よりいいプレーができているように感じます。それが道理にかなっているかはわからないけれど、よりモチベーションが上がります」

 自分自身のためだけではなく、チームメンバーの喜ぶ顔を見たいというのは、何とも心優しい大坂らしいモチベーションなのだが、それとは裏腹に、グランドスラムの決勝では負け知らずの強さを誇っている。

 これで大坂は、4個目のグランドスラムタイトルを獲得した。1968年のオープン化(プロ解禁)以降、グランドスラムで4回優勝した女子選手は15人。さらに、初回から4回目のグランドスラム決勝で4連勝しているのは3人しかおらず、女子ではモニカ・セレス(当時ユーゴスラビア)と大坂、男子ではロジャー・フェデラー(スイス)だけという偉業だ。

 今回の優勝によって、大坂のWTAランキングは2位に浮上するが、「まったくランキングのことは考えていません。いいプレーをすれば、ランキングはついてくる。そう自分に言い聞かせています」とこれまでの姿勢をまったく崩さない。

 一見すると、大坂には欲があまりないようにも見受けられるが、勝ち負けだけで自分の価値を計るのではなく、今自分のできることに集中して挑戦を続けていきたいのだ。

「(グランドスラム優勝)5個目をトライしていきたい。ビッグピクチャーを抱いているわけではなく、今この瞬間を大事にしたい。自分自身にプレッシャーや期待をかけたくないから。今は自分がコントロールできることだけをしていくだけです。ハードに練習すれば、自分自身にチャンスをもたらすことができるでしょう」

 コート上では、持ち前のパワーとスピードで強さを感じさせる大坂だが、勝負が終われば試合の時とは別人のように、言動には思慮深さがあり、相手を思いやる優しさがにじみ出ている。それは、大坂が21世紀に作り出す、今までにない新しいチャンピオンの姿なのかもしれない。そして、彼女ののびしろのあるテニスからは、"大坂なおみ時代"の到来が近いことも予感させられる。


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