今も色褪せぬ伝説の異種格闘戦 猪木vsアリの“価値”に再脚光「一見無害に見えた試合でアリは重傷を負った」
2025年2月22日(土)18時0分 ココカラネクスト

いわゆる「猪木アリ状態」でアリの膝裏にダメージを負わせ続けた猪木。(C)Getty Images
格闘技界、いやお茶の間をも震撼させた異種格闘戦だった。1976年6月に実現したモハメド・アリとアントニオ猪木のマッチアップだ。
PPVでの収入が重視される昨今の格闘技界では、もはや当たり前のように組まれるようになった「異種格闘戦」。当時のWBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンだった大スターと日本プロレス界のヒーローによる対戦は、その走りとも言える組み合わせであった。
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全世界に生中継された試合自体は単調、いや凡庸な内容に終始した。アリ側からレスリングの技やヘッドバットやチョップなど多くの禁止事項を設けられた猪木は、寝ながら相手の足を執拗に狙い続ける闘いを披露したが、めぼしい見どころはなし。戦前に「世紀の一戦」と謡われたマッチアップは、「世界的な茶番劇」とも揶揄された。
それでも時が経ち、事前交渉の舞台裏などが明るみになるにつれ、「茶番劇」とされた試合の評価は徐々に向上。いわゆる「猪木アリ状態」を続けながら、ボクシング界のカリスマに深手を負わせた猪木の攻撃スキルの高さは世界的な声価を高めるものとなった。
そんな一戦が“ボクシング大国”でふたたび脚光を浴びている。メキシコのスポーツメディア『Estadio Deportes』は「モハメド・アリとアントニオ・イノキの試合は、奇妙な展開だったが、異なる分野のアスリートによる戦いの礎となった」と強調。「アリにイノキが大幅な行動制限をされた試合は、盛り上がりに欠ける試合となった」とやはり凡庸な両雄のパフォーマンスを振り返りつつ、歴史的一戦の価値を説いた。
「15ラウンドでドロー決着となった試合はマスコミや世間から厳しく批判された。積極性に欠けたことと、がんじがらめにされたイノキ側の明らかな不利から『史上最悪の試合』とさえ呼ばれた。しかし、一見無害に見えた試合で、アリは重傷を負った。
日本人レスラーの蹴りにより足に打撲や血栓ができ、感染症の危険性から切断の可能性もあると懸念されたのだ。幸運にも彼は回復したが、リング上で以前と同じ状態に戻ることは二度となかった。アリとイノキの戦いは、間違いなく格闘技の歴史に消えない痕跡を残した」
約50年の時が流れてもなお、こうして海外メディアで特集される。その事実が何よりも日本の地で実現した異種格闘技戦の凄みを物語ると言えよう。あらゆる試合が組まれるようになった現在も異彩を放った伝説の一戦は色褪せない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]