27年ぶり開幕連勝スタートの湘南ベルマーレ。活かされている昨季の基盤
2025年2月25日(火)18時0分 FOOTBALL TRIBE

2025明治安田J1リーグ第2節の全10試合が、2月22日と23日に各地で行われた。湘南ベルマーレは22日、敵地ヨドコウ桜スタジアムにてセレッソ大阪と対戦。最終スコア2-1で勝利している。
前身のベルマーレ平塚時代(※)以来となる、27年ぶりのJ1リーグ開幕連勝スタートを飾った湘南。2021シーズン途中にコーチから昇格した山口智監督のもとで、2023シーズンや昨シーズン序盤に極度の成績不振に陥ったが、戦い方の試行錯誤がここに来て実を結んでいる。
湘南の好調の理由や、2025シーズンを上位で終えるために突き詰めるべき課題は何か。ここではC大阪戦を振り返るとともに、この2点を中心に論評していく。
(※)当時のJリーグは2部制導入前。

試合序盤に見えた湘南の課題
この試合における両クラブの基本布陣は、C大阪が[4-2-3-1]で湘南が[3-1-4-2]。C大阪のセンターバックからボランチへのパスコースを塞ぎ、パス回しをサイドへ追いやるという湘南陣営の意図が、試合序盤から窺えた。
湘南は福田翔生と鈴木章斗の両FW、及びMF平岡大陽を起点に守備を行ったものの、前半4分にはC大阪のDF進藤亮佑からDF奥田勇斗(センターバックからサイドバック)、奥田からMF香川真司へのパスが繋がってしまっている。最終的には逆サイドへボールを運ばれた。

このシーンではC大阪のFW北野颯太(トップ下)が味方2センターバック間に降りてボールを保持したため、湘南としては対応が難しかったが、福田と鈴木章斗のプレスでC大阪のパス回しをサイドへ誘導したうえで、香川には平岡が付く構図を作りたかったところ。C大阪の右サイドバック奥田に湘南DF畑大雅と平岡の2人が寄せたため、ボランチの香川がフリーになってしまった。
相手センターバックからサイドバックへボールが渡った際に、相手のボランチを誰が捕まえるのか。これが曖昧になるケースが昨シーズンの湘南から散見されており、今季序盤にもこの課題が浮き彫りになっている。この問題が致命傷とならないうちに、早急に改善したいところだ。

湘南の守備が良くなったきっかけは
C大阪の右サイドバック奥田がタッチライン際から内側へポジションを移すことで、湘南のウイングバック畑がここへ寄せられない展開が生まれていたものの、前半10分すぎより奥田がタッチライン際でビルドアップ(最終ラインからのパス回し)に関わるように。これが湘南にとって好都合となり、守備の段取りが整理されるきっかけとなった。
前半11分には、福田と鈴木章斗がC大阪の2ボランチ(香川とMF田中駿汰)へのパスコースを塞ぐと同時に、平岡が相手センターバック進藤に寄せる。これにより進藤からサイドバック奥田への横パスを誘発すると、畑がすかさず奥田にプレスをかけている。福田と鈴木章斗、そして平岡の守備の役割が明確になってからは、湘南の最前線からの守備(ハイプレス)が機能し始めた。

ただ、C大阪のゴールキックで再開された前半28分にも、自陣後方タッチライン際でボールを受けた奥田に平岡と畑の2人が寄せてしまったため、進藤がフリーに。その後田中駿汰のバックパスを受けた進藤、GKキム・ジンヒョン、DF舩木翔、北野の順でボールが渡り、湘南はC大阪の速攻を浴びている。ここでは平岡が進藤を捕捉し、GKへのバックパスや逆サイドへのパスを許さない構図を作りたかった。
C大阪の悪い攻撃配置に乗じて守備を立て直せたのは良かったが、個々の役割が不明瞭なシーンがあったことも確か。これこそ湘南が今季を上位で終えるために突き詰めるべき課題であり、伸び代だ。

C大阪の弱点を突く
前半32分、自陣タッチライン際でボールを受けた舩木に湘南MF小野瀬康介が寄せる。小野瀬の斜め後ろで香川がフリーになっていたが、舩木は縦パスを選択。このパスを受けようとしたC大阪のMF阪田澪哉を、湘南MF鈴木雄斗(センターバック)とMF藤井智也が挟み込んでボールを奪うと、小野瀬のロングパスに福田が反応する。相手最終ライン背後へ走った福田のラストパスを、今季よりキャプテンを務める21歳の鈴木章斗が受け、強烈なミドルシュートをゴールネットに突き刺した。
後半6分にも小野瀬のロングパスがC大阪の最終ライン背後に到達し、これに反応した鈴木章斗が追加点を挙げる。試合序盤から不揃いで、上げ下げも緩慢だったC大阪の最終ラインの背後を湘南は何度も突き、2得点に結びつけた。
後半12分、C大阪のMFルーカス・フェルナンデスのフリーキックに進藤がヘディングで合わせ、1点差に詰め寄るゴールを挙げる。湘南は失点後も[4-1-2-3]に布陣を変えたホームチームに攻め込まれたものの、こちらも[5-4-1]への布陣変更を行い、自陣への撤退守備で猛攻を凌ぎきった。

改善された攻撃配置
昨夏よりビルドアップ時の選手配置が改善され、パス回しが円滑になった湘南。昨シーズン序盤は3センターバックの両脇の選手がタッチライン際でボールを保持する場面があり、それゆえ相手のハイプレスをもろに浴びていたが、センターバックがペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとるようになった昨夏以降はパス回しが安定。中央と左右、どの方面へもパスを出せる状況を常に作ることで、相手の守備の出足を鈍らせていた。
今回のC大阪戦では自陣後方タッチライン際へ降りる場面が散見されたものの、藤井と畑の両ウイングバックは今季開幕からの2試合で概ね高い位置をキープ。両選手とも相手のサイドバックとサイドハーフの間でボールを受け、相手ゴールを向いてドリブルを仕掛けたときの破壊力は抜群であり、これは湘南の今後の武器となり得る。攻撃時の両ウイングバックの立ち位置も昨夏以降に改善されており、今季もこれが湘南のバロメーターとなりそうだ。
攻撃面に関しては昨季の基盤を活かせているだけに、湘南としては守備のアップデートを急ぎたいところ。昨年のJ1リーグにおける無失点試合数は6で、これは同リーグワーストタイの成績である。守備の改善が、今季の上位フィニッシュに欠かせないのは明白だ。