豪州SC開幕戦:7冠王者vs連覇の新鋭。2020年は両雄の真っ向勝負で幕開け

2020年2月26日(水)6時11分 AUTOSPORT web

 フォードとホールデンの2大メーカー対決に回帰した、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの2020年シーズンが2月21〜23日に開幕を迎えた。第1戦の市街地スプリント“アデレード500”は、土曜レース1をセブン・タイムス・チャンピオンのジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・ホールデン・レーシング)が、続く日曜レース2をスコット・マクローリン(フォード・マスタング/DJRチーム・ペンスキー)が制し、両雄がっぷり四つの結果になると同時に、若き王者は3連覇に向け早々にシリーズリーダーの座を確保した。


 レースウイークに入った開幕直前、2月18日ザ・ベンドでの最後のプレシーズンテスト前日に発表された「ホールデン・ブランドの2021年限りでの廃止」というビッグニュースに揺れたVASCシリーズ。


 その衝撃も冷めやらぬアデレードのパドックでは、ホールデンのファクトリー・プログラムを担うレッドブル・ホールデン・レーシングのトリプルエイト・レースエンジニアリングが、7冠王者ウインカップと2016年チャンピオンの“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンとの契約延長を発表。ともに2021年まで契約の残るホールデンとともに「新たなタイトルに向け死力を尽くす」ことを誓った。


 一方、2018年はフォード・ファルコンFG-Xで、2019年は新型フォード・マスタング・スーパーカーでシリーズ連覇を達成し、新世代VASCの顔となったマクローリンは、この2020年を制して3連覇達成を手土産に、北米へと渡ることが確定的な見通しに。


 マクローリンはこのオフにもVASCタイトル獲得の報酬としてペンスキーのインディカー・テストに参加し好成果を挙げたことで、シリーズのインディアナポリス・ロード戦へのスポットデビューが決まるなど、DJRチーム・ペンスキーの共同オーナーであるディック・ジョンソン代表も「不測の事態でもない限り(北米への進出は)規定路線」と示唆するなど、マクローリンのかねてからの夢だったインディカー・シリーズへの本格デビュー実現が濃厚となった。


 これまでとは違う空気が流れるなか幕を開けた2020年シリーズ初戦は、プラクティスからホールデン勢が勢いを見せ、オープニングセッションでデビッド・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)がトップタイムをマークすると、その後もSVGや移籍により初のホールデンをドライブするチャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)らが立て続けに最速を記録。そのまま予選でも暫定ポールをSVGが、シュートアウトではウインカップが最前列を確保し、コモドアZBがマスタングへの逆襲を予感させるスピードを披露した。


 このトップ10シュートアウトでフォード勢最上位に入ったのは、フロントロウのレイノルズに次ぐ3番グリッドを確保したウィル・デイビソン(フォード・マスタング/23レッド・レーシング)で、5番手にティックフォードのキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/モンスターエナジー・レーシング)が続き、王者マクローリンは7番手に甘んじる結果となった。

GMによる「ホールデン廃止」の電撃決定を受け、陣営全チームが団結と惜別のフォトシューティングを実施した
2019年終盤の勢いを維持したホールデン・コモドアZBが土曜までの流れを掴んだ
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フォード・マスタングでの初陣を9位で飾ったリック・ケリー。「ポテンシャルの高さを感じる」と手応え


 迎えた78ラップ、250kmの2020年最初のスプリントは、ポール発進のウインカップが危なげなくホールショットを決めると、ホールデン陣営のレイノルズを従えて悠々とクルージング。アンダーカットを狙い、8周目に誰よりも早くピットストップを終えた王者マクローリンの追撃も許さず、ウインカップがポール・トゥ・ウインで開幕勝利を収めてみせた。


 これで最終スティントの逆転がかなわなかったマクローリンが2位、レイノルズとのホールデン対決を制したSVGが3位表彰台を確保し、コモドアZBとマスタングに施されたオフシーズンの空力性能調整がひとまず機能していることも証明された。


 明けた日曜の予選セッションは、前日とは逆にウインカップが暫定ポールを獲得すると、トップ10シュートアウトで意地を見せたSVGが2020年初ポールポジションを獲得。王者マクローリンは0.0383秒届かずフロントロウからのスタートとなった。


 そのオープニングではポールシッターのSVGがターン1〜3へと続く“セナ・シケイン”へ先頭で入ったものの、サイド・バイ・サイドに並んだディフェンディング・チャンピオンがバトルでの強さを発揮し、レッドブル・ホールデンをかわして早々に首位へと浮上。


 直後にエレバス・モータースポーツとチーム18の全4台が絡む多重クラッシュが発生し、週末初のセーフティカー(SC)が導入されると、数周後のリスタート直後には7番グリッド発進だったウインカップが前日の王者をコピーするかのような動きでピットロードへ。これで2番手浮上に成功する。


 しかし続く周回に反応していたティックフォードの1台、リー・ホールズワース(フォード・マスタング/トラック・アシスト・レーシング)がウインカップの前方に立ち塞がり、フォード陣営が見事なチームワークで前日ウイナーの希望を打ち砕く。


 その後、2度目のSC介入によりピット戦略を決めたSVGがトップランを奪還するも、最終のルーティンピットで悲劇が。燃料を補給して充分なマージンを得てコース復帰したかに見えたSVGのホールデンは、残る周回数のガソリン搭載量に達していないことが判明し、3度目の緊急ストップを強いられることに。


 78周レースの69周目にスプラッシュ&ゴーを敢行したSVGは4番手でコース復帰すると、前を行くウォーターズ、モスタートのパックを猛追。しかしこの際のチャージが祟ったか、SVGの97号車はフロントのショックアブソーバーに異常が出てしまい、残り5周のターン7でウォーターズ攻略に出るも失敗。そのままレースを終えることとなった。


 トラブルで仇敵が去った王者マクローリンは、2019年のバサースト1000以来となる優勝を記録。2位にホールデンでの初表彰台となったモスタート、3位ウォーターズのポディウムとなり、ウインカップはデイビソンの背後5位でチェッカーを受けた。


 タイトル候補が火花を散らした開幕戦を経て、2020年VASCシリーズの第2戦は世界的な露出度を誇るF1開幕戦併催ラウンドへ。3月12〜15日アルバートパークでの“メルボルン400”は、20ラップ×4ヒートのスプリントフォーマットで争われる。

2019年はフォード勢でも下位に甘んじたウィル・デイビソンが躍動。連日上位を争い5位、4位入賞
R2の予選から火花を散らしたSVGとスコット・マクローリン。レースではシェルVパワー陣営に軍配が上がった
ここアデレードで3勝を記録するSVGだが、燃料給油ミスとマシントラブルが重なり万事休す
移籍初戦で表彰台のチャズ・モスタート。ただしWAUは2020年限りでホールデン陣営を去ることをほのめかした


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