4年ぶりの完全ニューマシン。2025年型SUBARU BRZ GT300の5つの開発ポイント
2025年2月26日(水)16時48分 AUTOSPORT web

2月26日、スーパーGT GT300クラスを戦う61号車SUBARU BRZ R&D SPORTの2025年型マシンが、富士スピードウェイにてシェイクダウンされた。
関係者やチームのスポンサーの前で走行を披露したこの2025年モデルは、チームの小澤正弘総監督によれば「フレームから登録し直して」イチから製作されたのだという。具体的にはどのような改良が施されているのか、テスト走行が行われた現場で聞いた。
■重量増に対応した剛性&空力の強化
まずは2025年モデルの設計コンセプトについて小澤総監督は、「重量に見合った剛性を出せるように強化」することをターゲットに開発したと明かす。
「以前まで使用していたクルマは、2021年に作りまして、以来4年間使用しておりました。そのなかで、BoP(性能調整)の変化によって車両重量がどんどんと重たくなり、計150キロほど増えました。その変化にしっかりと対応するために、重量に見合った剛性を出せるように強化しています」
小澤総監督によると車両重量は「1150kgほどだったところから、1200kgから1250kgの間ぐらい」まで増加してきた一方で、剛性面は「10パーセントほどアップしている」とのことだが、ひとつ目の変更点となったフレームおよびシャシーの強化は、走りの面でどのような効果を生むのか。
「極端な話ですが、クルマはタイヤからホイール、スプリング、フレームと直列に繋がったバネのようなものだと言えます。そのなかでシャシーが安定してくると、さらにその分サスペンションも仕事ができるようになってきます」
「そうして減衰がしっかり効くようになると、車両全体のバタつきも抑えられますし、動きのコントロール性やタイヤの制御性も上がってくると思います」
剛性強化に続くふたつ目の変更ポイントは、ダウンフォースを生む空力面だ。なかでも大きく変わったのはフロントボンネットで、ダクトやフィンの形状が変更された。
「従来は『センターフロー』という、真ん中から空気を抜く方式でしたが、今年から『サイドフロー』となったことで空気がフロントウインドウの横を抜けて、リヤウイングに当たるような形状に変更しました」
「このサイドフローに関しては、従来からも何回かトライしてきたのですが、なかなかしっかりとしたダウンフォース性能が出せずにおりました。今年はやっといいものができ、すでに岡山国際サーキットで走った際にもダウンフォースが増加したことが確認できています」
さらに、もうひとつの主要な変化として、リヤディフーザーの両端に位置する、『サイドカッター』と呼ばれるエリアについても再設計が行われた。こちらは「フロア全体の効果を上げてダウンフォース量を増やすため」とのことで、フロントボンネットの変更と合わせて総合的なバランスもとりつつ、車体全体での空力性能の向上が図られたようだ。
■フロントタイヤのサイズが変更に。“電気式”シフトも試験導入
また3つ目として、レギュレーションの変更に伴ってフロントタイヤのサイズが変更された。具体的には、幅が330mmから300mm、直径が710mmから680mmとなることで1インチほど小さくなり、接地面積が減るという。
この変更に対するアジャストとして小澤総監督は、「ダンロップさんに、一生懸命いろいろなアイデアを盛り込みながら新たなタイヤを開発していただいてる」と話すが、そのほかにもホイールの再設計を行うことで対応を進めているのだそうだ。
「それに伴って、ホイールも横幅が狭くなるのですが、それでも従来と同じような剛性をちゃんと得られるようにBBSさんに開発をしていただきました」
こうした対応を進めているものの、ネガティブな点も残っているようで「前後のバランスが変化していて、今までよりもフロントの摩耗が進みやすい」傾向にあるのだそう。
「グリップ性能においてはなんとかなるかなと思っているのですが、リヤ2輪交換などはこれからさらにやりづらくなるかもしれない」とタイヤ戦略パターンの減少が懸念されるとのことだ。
4つ目に挙げる電装面においてもアップデートが進められており、各信号を管理するコンピュータがモーテックからコスワースに変わっている。それに伴い、ステアリングもコスワース製の新型が導入された。
こちらは『CCW Mk3』というモデルであると見られ、全日本スーパーフォーミュラ選手権におけるトヨタとホンダのテスト車両(通称:赤寅/白寅)に使用されていたモデルのカスタムバージョンのようだ。なお、こちらはひとつ数百万はする部品とのことで、スペアも合わせると1000万円に迫るコストがかかっていると思われる。スバル/STIの本気度合いを感じる変更点だ。
さらに、正式採用されるかはまだわからないとのことだが、シフトチェンジのシステムが従来のエア式から電気式になっている。
こちらの目的は「制御性の向上」だそうで、ギヤの入れ替えを担うモーターを電子的に制御することで、スムーズな作動が可能になるという。この電気式シフトは、ドライバーの井口卓人も「通信によって細かい調整ができたりして、さらに詰めくことでスムーズかつショック感の少ないギヤチェンジができると思う」と好評だった。
2025年型の刷新点の5つ目は、2024年シーズンの61号車BRZを苦しめたマシントラブルの修正だ。なかでも、ブレーキまわりやトランスミッションに不具合が生じていたようだが、ブレーキはキャパシティを再分析、トランスミッションは材質を見直して対応したという。こうして4年ぶりのニューマシンへと生まれ変わった2025年型は、ふたたびトップ争いに戻り、ファンの声援に応える走りを見せることができるだろうか。
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