【インディカー2025年プレビュー】ハイブリッド初のフルシーズンは総合力勝負に。開幕戦の優勝ドライバーも予想
2025年2月28日(金)10時16分 AUTOSPORT web

今年もインディカーシリーズはフロリダ州セントピーターズバーグ(3月1日決勝)開幕する。
レース数は全17戦で2024年と同じだが、ウィスコンシン州ミルウォーキーでのダブルヘッダーは1戦のみの開催に変わり、昨年は開幕前テストとノンタイトル戦を開催したカリフォルニア州パームスプリングス郊外のザ・サーマルクラブがシリーズ第2戦の舞台となる。アイオワ州ニュートンのアイオワスピードウェイでは今年もダブルヘッダーを行い、最終戦が繰り広げられるのは今年もテネシー州ナッシュビル郊外のナッシュビルスーパースピードウェイだ。
そして一番の注目点となるのは、2025年のインディカーシリーズは全レースがハイブリッドパワーユニット搭載で争われる初めてのシーズンとなることだ。ハイブリッドシステムは昨シーズン半ばから導入され、各チームともに実戦経験を積むことができた。しかし、以下の9コースについては、ハイブリッドマシンでの戦いは今年が初めてとなる。
・フロリダ州セントピーターズバーグ
・カリフォルニア州サーマルクラブ
・カリフォルニア州ロングビーチ
・アラバマ州バーバーモータースポーツパーク
・インディアナポリスモータースピードウェイ/ロード
・インディアナポリスモータースピードウェイ(インディ500)
・ミシガン州デトロイト
・ウィスコンシン州ロードアメリカ
・カリフォルニア州ラグナセカ
全長2.5マイルのスーパースピードウェイを使った伝統の一戦インディ500も、第109回目の開催にして初めて、ハイブリッドパワーユニット搭載マシンでのレースとなる。昨年までとどれだけ違う戦いになるのか、もしくはほとんど変わらないのか、どんなストラテジーが可能となるかなど実に興味深い。
マシンは今年もダラーラDW12にホンダかシボレーの2.2リッターV6ツインターボエンジン+モーターで、従来のプッシュトゥパスも装備されるため、最大800馬力以上のパワフルなマシンでの戦いになる。また、ハイブリッド化の影響もあって、今シーズンは以下の5戦でレース距離が伸ばされた。
・ロングビーチ:プラス5周
・ミッドオハイオ:プラス10周
・アイオワ:プラス25周
・トロント:プラス5周
・ナッシュビル:プラス19周
また、タイヤの供給数も変わる。ハードコンパウンドのプライマリーとソフトコンパウンドのオルタネートタイヤが使われるレースでは、昨年まではプライマリー6セット/オルタネート4セットとされていたが、タイヤの摩耗が激しいサーマルクラブだけはそのままに、他のコースではプライマリーとオルタネートどちらも5セットずつの供給とされる予定だ。
ハイブリッド化でパワーアップしたマシン、車重が増し、バランスの変わったマシンによるフルシーズンバトルは、タイヤストラテジーも検討し直す必要があり、伸ばされたレース距離への対応も求められる。新たな要素が盛り込まれることでドライバーの対応力を含め、チームとしての総合力が試されることになるだろう。
■昨年の開幕勝者オワード、2連勝の可能性は
ここからは、シーズン序盤戦へと話を移そう。開幕戦セントピーターズバーグのコースは、空港の滑走路と公道を組み合わせたフラットなストリートコース。第2戦はコーナー数の多い常設ロードコースのサーマルクラブで行われる。
ここで両レースの優勝候補を挙げてみる。まずセントピーターズバーグはスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー/シボレー)そしてサーマルクラブはアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)だ。そして、両コースで優勝争いに絡んできそうなおもしろい存在としては、コルトン・ハータ(アンドレッティ・グローバル/ホンダ)がいる。
注目したいのは、マクラフランは2023、2024年と2年連続で年間ランキング3位となっていること。しかも、この2年とも強豪チーム・ペンスキー内でランキング最上位だった。ウィル・パワー、ジョセフ・ニューガーデンといったビッグネームより成績がよかったということで、ニュージーランドからやってきたツーリングカーチャンピオンでもある彼は今や、インディカーチャンピオンの座を掴み取れるだけの力を身につけている。
なお、昨年のセントピーターズバーグはニューガーデンがウィナーだったが、プッシュトゥパスの違法改造・使用があったため失格とされ、優勝はパト・オワード(アロウ・マクラーレン/シボレー)のものとなった。
ここで、このオワードの2連勝はあるのかどうかを考えてみるが、ランキング5位となった昨年よりも今年はパフォーマンスが下がるのでは? との心配をしている。昨シーズン終了直後にチーム代表だったエンジニア出身のギャビン・ウォードが解雇され、シーズン開幕直前になってドライバー出身のトニー・カナーンがトップに立つ新体制となった。グラグラし続けてきているチームのマネジメントの安定と強化をカナーンは実現できるのだろうか。
それに加えて、マクラーレンはドライバーの布陣も安定しない。2020年の彼らはオワードとオリバー・アスキューの若手コンビだったが、その後アスキューはローゼンクヴィストに代わり、さらにアレクサンダー・ロッシを迎えたが2年で離脱。さらに後任のデイビッド・マルーカスは開幕前に怪我をして解雇の憂き目。その空席を埋めるよう雇い入れられたテオ・プルシェールも突然契約打ち切りとなり、さらなる若手ノーラン・シーゲルの新規採用……。オワード以外のメンバーは目まぐるしく次から次へと交代してきている。
■パロウ擁するチップ・ガナッシ・レーシングは盤石の体制に
一方、ホンダエンジン勢筆頭の強豪チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)は、“名参謀”マイク・ハルが現場の陣頭指揮を取る。チームとしての実力はペンスキーと並ぶ高さ。モチベーションは高く、規律も取れている。そんなチームで走るパロウはとてつもなく速く、ミスをせず、逆境に陥っても絶対に諦めない精神力の強さを武器にタイトルを獲得した。
CGRは今年に向けてチーム体制を縮小したが、それも彼にとっては大きな悪影響とはならないだろう。なぜなら、同じホンダ勢のメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)と技術提携したからだ。今季のMSRには、昨年までCGRで走っていたマーカス・アームストロングと、2020年までCGRにいたフェリックス・ローゼンクヴィストがおり、彼らがほぼチームメイトと同等の存在となることで、収集データは質・量ともに充分なものを得られる。
また、パロウからすれば大先輩のスコット・ディクソンもあわせ、マシン・セッティングに関しては高度なディスカッションがなされることでレベルの高いマシンを作り上げることができそうだ。オーバルでの勝利がいまだないパロウだが、初勝利を飾るのは時間の問題。5年間で4回目、そして、3年連続のチャンピオンとなる可能性は充分にある。
最後に注目のルーキーとして、ロバート・シュワルツマン(プレマ・レーシング)の名前も挙げておきたい。フェラーリF1の元リザーブドライバーはインディカーへの対応もスムーズにこなすと見られる。チームもインディカー初挑戦という状況は理想的ではないにしろ、ヨーロッパの幾つものシリーズで活躍してきたプレマはアメリカのレースにもすぐさま順応することと期待されている。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)
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