帰ってきた“投げる科学者”バウアーをどう使う? DeNA首脳陣が模索する「中4ローテ計画」と「12球団初の運用法」
2025年3月1日(土)7時0分 ココカラネクスト

バウアーは今季、沢村賞を目指すと宣言している(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
早くも高まるバウアーへの期待
2023年シーズンの途中、横浜DeNAベイスターズと電撃契約を果たしたトレバー・バウアーは、NPBを席巻。昨年もMLB復帰こそ叶わなかったが、メキシコで最優秀投手賞を獲得し、元サイ・ヤング賞右腕の実力を見せつけた。
そのバウアーが25年に活躍の舞台に選んだのは、横浜の地だった。
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無論、帰ってきた「投げる科学者」が生み出す化学反応への期待は高い。三浦大輔監督も「昨年の実績、経験をもとに、東(克樹)、(アンドレ・)ジャクソン、(アンソニー・)ケイ、普通に行けばバウアーもそうですよね」とローテーションに組み込むことを早々と見据えている。
2年前に10勝(4敗)を挙げ、月間MVPを2回も手にしたバウアー。19先発で130回2/3の投球回数というイニングイーターぶりを可能にしたのは、中4日、中5日ともに6試合ずつに登板した彼のタフネスさに紐づく。その副作用として、通常中6日のローテーションで投げていた他のピッチャーの調整にも少なからず影響が及んだ。それは今年も同様だろう。
昨年同様に二軍ピッチングコーチを務めるとともに、今季は投手コーディネーターも兼業する入来祐作コーチは「いまのところは東、ジャクソン、ケイ、バウアーの4人じゃないですか。この4人を中心に回していくとして、5番目、6番目を他の先発候補の子たちの中でやりくりをしていくっていうこと」と現時点でのプランを強調する。
その上で「いままではどちらかというと、日本の野球のローテの中に(外国人を)入れていくって感じでしたけど、あくまでも彼らのところの部分をうまく回していくことでチームをアジャストしていくっていう形。多分12球団でも初めての、新しい試みだと思うんですよ」とも告白。中6日のローテーションに外国人投手を合わせるのではなく、短い登板間隔をキープし、他の投手を空き日にマッチさせる取り組みの模索を示唆した。
また、「僕もアメリカでは中4日で回ってましたからね。その感覚はよくわかるんです」と語る入来コーチは、1、2軍の垣根を超えた運用を思案する。
「日本は1週間で6試合、もしくは5試合の時もありますから。だからなかなか難しいと思うんですよね。2軍と1軍の連携も丁寧にやっていく必要があると思います。2軍を1軍よりも優先させなきゃいけないってことは多分ないと思うので、あくまでも1軍が回るため、2軍は調整の場として優先されるんじゃないですかね」
さらに先発ローテ入りが確定的となっている4投手以外のピッチャーについて「調整は難しくなるでしょうね」とポツり。「メンタルのケアもしていかなくちゃいけないってことになるので、その辺でちょっと僕も頑張っていろんなことをしていかなくちゃいけない」と自身の“コーディネーター”としての役割に頷いた。

2年前は球界を席巻する投球術で異彩を放ったバウアー。(C)産経新聞社
バウアーを組み込むための「3パターン」
入来コーチが懸念したメンタル面は投手にとって重要なポイントだ。その点について他の首脳陣も同様の考えを示している。
大原慎司一軍ピッチングチーフコーチは「ローテーションを崩したら調整は難しくなりますし、先発6枚が5枚になったら投げられないピッチャーが出てきて、メンタルがブレたりする可能性がある」と指摘。「それを考えて、そうならないようにする、または最小限にするために手を尽くしてやる以外ないですね。考え得ることをなるべく潰していくだけです」と先を読んで対処していきたいと目論んだ。
もちろんバウアーを戦力として組み込んだ具体的なプランニングは進んでいる。小杉陽太一軍ピッチングコーチは「3パターンぐらいを考えてます」と自身の中で組んでいる“仮説”を明かしてくれた。
「短い間隔で、長いイニングを投げてくれるので、先発ピッチャーとしてAクラス。イニングを消化してくれるってのはすごいありがたいですよ。だって火曜日に投げて、日曜日にまた投げられるわけですよ。ただ、バウアーもずっと中4日でそもそも回り続けられるのかってところもありますよね。NPBの日程上、ずっと4日で回ることはできないじゃないですか。月曜日に絶対休みがあるし、週に4試合の時もあったりとかするので」
バウアー自身のコンディションと米球界とのギャップを視野に入れる小杉コーチは「うまくずらしていきながら、他のピッチャーの間隔を縮める時が来る」と強調。中4日でローテーションを回すことで生じる懸念をポジティブに捉えた。
「例えば、東は2年連続で相当なイニングを投げていますしね。それと、まだちょっと間隔を空けないとフィジカル的になかなか難しい選手がいるので、そういう選手がうまく中4とか中5で回っていく人たちのスポットに入っていける。それはそれでいいのかな」
当然ながら投手の負担を考えながらリスクマネージメントを管理する必要性は出てくる。それでも小杉コーチは「選手は難しいのかもしれないですけど、先にスケジュールを伝えておくなど、うまくコミュニケーションを取りながらやっていければ」と自信を示した。
バウアーがシーズン途中で加入した2年前は、首脳陣を含めて“初体験”となったローテーションのやりくりに四苦八苦することも少なくなかった。しかし、ノウハウの蓄積がある今年はある程度の対策が練られている様子が伺える。
今季のDeNAは、前出の先発4枚に加え、大貫晋一、平良拳太郎、伊勢大夢、石田健大、吉野光樹、小園健太、竹田祐と先発投手の駒は粒ぞろいだ。それだけに彼らを最大限に活用するマネージメントが、悲願のリーグ優勝のポイントのひとつとなる。
[取材・文/萩原孝弘]