【土屋雅史氏のJ2展望】激戦の歴史を紡ぐ大分と山形が激突!…開幕節黒星の甲府は大卒ルーキーに注目

2018年3月2日(金)17時0分 サッカーキング

開幕節で快勝した大分は、3失点を喫し黒星スタートとなった山形と対戦する。

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■また、あのチャント聞くために…甲府のルーキーは激しい競争の渦に身を投じる

 6年ぶりのJ2を戦うことになった甲府が、11年ぶりのJ1復帰を狙う東京Vをホームに迎える一戦。このゲームでは念願の“小瀬”デビューを狙うルーキーにスポットライトを当てたいと思います。

 甲府のアカデミー出身者としては、初めて大学経由でトップチームに帰ってきたFW太田修介。「自分の中でデビュー戦としてピッチに立つというのは1歩目の目標だった」という開幕節は、スタメンには届かなかったものの7人のサブメンバーに入り、その目標達成の可能性を手にすることに。「サポーターの声援とか雰囲気がものすごくて、鳥肌が立っていた」と語る彼は、アップの時点であることに気付きます。それは自身のチャントが既に用意されていたこと。「凄く嬉しかったですね。アップから歌ってくれて、なんかアップ中はずっとその音楽が心の中で流れていました(笑)」と笑った大卒ルーキー。サポーターからの期待をひしひしと感じ、ゲームをベンチとアップエリアから見守ります。

 1点ビハインドの86分。最後の交替として吉田達磨監督が決断したのは、太田というカード。「ずっと憧れていたピッチだったので、声援を聞いてテンションも高くなっていて。でも、ピッチに入った瞬間はもう結構冷静になれていて、負けていたのでどうにかして1点取りたいなと思っていた」背番号13番がデビュー戦のピッチへ飛び出します。ただ、縦に仕掛けたファーストプレーはクロスを上げ切れず、「その後もカウンターになった瞬間にパスを選択して、取られちゃったシーンがあって、『自分で運べば良かったかな』って、『もっと積極的にやって良かったな』と思います」と振り返る10分弱を経て、スコアは変わらず1−2で終了。白星でのプロデビューとはなりませんでした。

 試合後。改めてデビューの感想を問われた太田は「いつも“応援席から見ていた側”の方に入っている自分というのに最初はちょっとなんか変な感覚があって、だいぶ気持ちが高揚していくというか。でも、今日は最近で一番体が軽かったし、違う力が働いていたのかなと思います」と答えつつ、1歩目の目標を達成したことを受けて「次は得点に絡むことですね。結果を出したいです。アシストでもいいですし、とにかく勝利に貢献したいです」と2歩目、3歩目の目標をハッキリと見据えます。

「練習からしっかりアピールしないと、今日のプレーでは次もベンチに入れる確証はないし、達磨さんはそういう監督なので、しっかり気を抜かずにやっていきます。まあ僕の立場で気が抜ける訳はないんですけど(笑)」と最後は少し笑わせてくれた太田。『心の中でずっと流れていた』チャントを憧れの“小瀬”で聞くために、また激しい競争の渦に身を置いていくルーキーの今後にも是非期待したい所です。

 一方の東京Vは開始早々に数的優位を得た開幕節でしたが、先制しながらも後半は10人の千葉に押し込まれる時間を作られ、同点に追い付かれる嫌な展開に。最後はセットプレーから決勝点を奪い勝ち点3を手にしたものの、やや消化不良気味のオープニングゲームを過ごしました。それでもスタメンに抜擢されたルーキーのMF藤本寛也に、実質プロ3年目となるMF渡辺皓太と、10代のアカデミー出身者は堂々たるプレーぶりを披露。若い息吹が確かな成長の跡をアピールしています。太田の“小瀬”デビューも気になる今節屈指の好カードは、開幕節を落とした甲府がホームで意地を見せるのではないかと予想。甲府勝利の「1」で勝負に出ます!

■J2の“オリジナル10”同士の対決は、どのような結末を迎えるのか

 昨季のチーム得点王でもあるFW後藤優介と、2年連続でJ3得点王に輝いたFW藤本憲明がともにゴールを奪い、敵地で栃木に快勝を収めた大分が、こちらはアウェイ戦で水戸に3失点を喫し、悔しい黒星スタートとなった山形を、大分銀行ドームで迎え撃つホーム開幕戦。いわゆるJ2の“オリジナル10”とも言うべき両者は、そのJ2以前から何度も対戦していたライバルでもあります。

 先に旧JFLへ参入していたNEC山形から遅れること2年。大分トリニティが1996年に日本フットボールリーグ(旧JFL)へと昇格してきたことで、同じカテゴリーで戦うことになった両チーム。記念すべき初対戦は1996年4月28日。会場は鶴岡市小真木原陸上競技場。吉川功二のゴールでアウェイチームが先制するも、アンジェロが同点弾を叩き込むと、延長終了間際の119分に山田信秀がVゴールを記録し、山形が劇的に勝ち点3をさらいました。このゲームも含め、旧JFL時代の対戦成績は山形から見て5勝1敗。意外にも一方的な数字が残っています。

 Jリーグの舞台における対戦は全部で24回。トータルでの結果は大分から見て9勝5分10敗とほとんど五分。いくつもの好勝負が演じられてきましたが、最もこの両雄の一戦が注目を集めたのは、おそらく大分が自動昇格を懸けて、山形と大分市営陸上競技場で戦うことになった1999年のJ2最終節。のちに金子達仁氏が『秋天の陽炎』という作品で描くことになるゲームです。

 3位のF東京とは1ポイント差。90分以内に勝てば文句なし、延長Vゴールでの勝利でも、得失点差の関係でほぼ昇格を手繰り寄せられた2位の大分は、58分に挙げたウィルのゴールで奪ったリードを、そのまま後半のアディショナルタイムまでキープします。ところが、その土壇場で現在は甲府を率いる吉田達磨が蹴り込んだFKは、誰にも当たらずにそのままゴールネットへ吸い込まれ、山形が同点に追い付くと、延長でもホームチームに得点は生まれず、1−1のままでタイムアップ。1万5千を超えるスタンドの観衆に、歓喜がもたらされることはありませんでした。

 2009年4月11日。既にJ1へと昇格していた大分に対し、その悲願達成を監督として経験した小林伸二の下、クラブ史上初のJ1へ挑戦する山形が、とうとうトップディビジョンで激突します。ゲームは63分にFW古橋達弥が決勝ゴールをマークし、アウェイの山形がJ1初の連勝を記録。結果的に1年での降格を予想する大半の声を覆し、山形が15位での残留を果たした一方で、前年にリーグ4位、ナビスコ杯優勝を果たすなど、躍進を遂げた大分はまさかの降格。2チームの明暗はくっきり分かれます。

 その後もお互いに昇格や降格を経験し、カテゴリーがすれ違うなか、3年ぶりにJ2での対戦が実現した昨季は2試合とも劇的な展開に。第7節は2点のビハインドを大分が追い付きながら、85分にFW阪野豊史の決勝弾でホームの山形が勝ち点3を獲得。第40節は88分にまたも阪野のゴールで山形が先制するも、2分後にFW大津耀誠が同点ゴール。ドロー決着となりました。

 翻って今節。大分銀行ドームに改称後、ホームで山形には2勝1分と無敗を誇っている相性の良さと、開幕戦で見せた後藤、藤本、FW三平和司の強力1トップ2シャドーのハイパフォーマンスに加え、やや不安定さを露呈した山形の守備陣を考慮して、ここは大分の連勝を予想。「1」にマークしたいと考えています。

文=土屋雅史

予想難易度が高いとされるJ2は、toto当せんのカギを握る重要な要素の一つ。国内サッカー事情に精通した土屋雅史氏がJ2を徹底解剖する! 『今週のJ2(http://www.totoone.jp/j2/)』はサッカーくじtoto予想サイト『totoONE(http://www.totoone.jp/)』にて好評連載中。
※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J2リーグ第2節
2018年3月3日(土)14時キックオフ
ヴァンフォーレ甲府vs東京ヴェルディ(山梨中銀スタジアム)

■明治安田生命J2リーグ第2節
2018年3月4日(日)15時キックオフ
大分トリニータvsモンテディオ山形(大分銀行ドーム)

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