J2藤枝が今季初勝利 集団食中毒で前日練習参加は12人…須藤大輔監督「1勝の重みが違う」 2年目同期躍動 浅倉廉同点、前田翔茉がV弾
2025年3月2日(日)6時30分 スポーツ報知
前半アディショナルタイム、同点ゴールを決めてガッツポーズする浅倉
◆明治安田J2リーグ▽第3節 藤枝2—1秋田(1日、藤枝サ)
藤枝MYFCが秋田を2—1で下し、劇的な今季初勝利を挙げた。試合前日(2月28日)までに集団食中毒が発生し、選手・スタッフ25人が発症。前節から先発6人を変更するスクランブル体制で臨んだ。1点を追う前半アディショナルタイム(AT)にMF浅倉廉(23)が今季チーム1号の同点弾。後半43分にはMF前田翔茉(23)が決勝のプロ初ゴールを放り込んだ。ジュビロ磐田は長崎に0—1。開幕からの連勝は2で止まった。
奇跡が起きた。いや、自分たちの手で奇跡を起こした。試合前日までまともに練習できなかった藤枝が、鮮やかな逆転で昨年9月の仙台戦以来10試合ぶりの白星をもぎ取った。「1勝の重みが違う。こういう時に勝つのがエンターテインメント」。須藤大輔監督(47)の言葉にも実感がこもった。
2月26日深夜から複数の選手が下痢、嘔吐(おうと)など食中毒症状を訴える緊急事態が発生した。順次、医療機関で受診したが、最終的に25人が発症。前日(2月28日)の練習に参加できたのは12人で、先発予定だった選手が当日に離脱するなど、まさに綱渡りの状態で本番を迎えた。
プロ2年目の若き力を中心に逆境をはね返した。前半27分、CKから先制を許すも同AT、ペナルティーエリアの外で受けた浅倉が左足でクラブのJ2通算100号となる同点弾をねじ込んだ。本来はMF金子と共にシャドーを務めるがこの日はボランチで先発。金子から「試合で起こりうるシチュエーションでシュート練習しろ」と助言を受けていた通り決めてみせた。後半13分には相手シュートを顔面ブロック。同24分に脳しんとうで交代するまでチームのために懸命にプレーした。
同期の前田も続いた。幸い、症状が出ず今季初先発に抜てき。本職外の3バック右で奮闘し同43分、CKのこぼれに食らいつき豪快な右ミドルを突き刺した。「全員で戦っているのを伝えたかった」とベンチへ猛ダッシュ。優勝したかのようなお祭り騒ぎに身を委ねた。同ポジションで日頃から公私でかわいがってもらい、プレーも参考にしているベテランDF久富がこの日はベンチ外。「富さんのおかげで冷静に対応できた。やることをやれば結果が出せると証明できた」と胸を張った。
高熱で起き上がれない選手もおり、ベンチ入りは上限より2人少ない18人。指揮官が「長所と短所を補完しあった」と話した通り、本職外のポジションでも個々が役目を果たしカバーしあったからこそ星は転がり込んだ。次節は9日に敵地で甲府戦。クラブ史に残る1勝を弾みに藤色軍団が上昇していく。
(武藤 瑞基)
◆藤枝の集団食中毒
▽2月26日 報道陣に公開で練習。同日深夜から27日にかけて複数の選手・スタッフが下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴える。
▽同27日 午前8時半、保健所に事実関係を連絡。発症した関係者は順次、医療機関を受診。
▽同28日 午後8時前、公式サイトなどで事態を発表。また3月1日の秋田戦を通常通り開催すると告知。
▽3月1日 マスクなど感染対策を施した上で試合開催。なお原因については保健所が調査中。