総監督だけど「走り1本でやっていく」。立川祐路のプライドと新生セルモ・インギングの新しい試み

2019年3月3日(日)18時58分 AUTOSPORT web

 今年のセルモ・インギングは実は大きな変化を迎えることになった。目に見える陣容こそ変化は大きくはないが、ドライバーの石浦宏明がチームの取締役に就任し、立川祐路がスーパーGTで総監督となり、スーパーフォーミュラとともに現場を取りまとめる役を担うことになったのだ。


 このシーズンオフ、ニッサンの本山哲がGT500クラスからの引退を発表し、ホンダでは小暮卓史がGT500のラインアップから派すれることになった。長年、コース上でしのぎを削ったライバルでもあるふたりの発表をどのように受け止めたのか。立川に聞いた。


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──今年、セルモ・インギングの社内体制が大きく変わりました。佐藤正幸氏に代わって卜部治久氏が会長と社長を兼任して、スーパーGTでのチームメイトでもある石浦宏明選手が取締役に就任するなど、チームの経営陣が大きく変わりました。


立川祐路(以下、立川):オートスポーツwebのニュースを見て、僕もそれを知りました。「そうなの!?」って(笑)。ビックリですよ。


──いやいや、そんなわけないじゃないですか。当然、立川選手にも同様の話があったと思います。石浦選手の選手と取締役の兼任という形もとても現代的だと思いますけど、会社の経営陣としてではなく、あくまで現場の総監督という形になったところに、立川選手の美学があったように思えます。


立川:……そうですね、まあ、(取締役就任の)話を僕も頂きまして、その話自体は大変、いい話だと思いますし、僕たちドライバーのことを考えて頂いての判断だと思いますので話自体に問題があったわけではありません。ですので、これはもう自分の勝手な考えといいますか、『走り1本でやっていく』という、今までも、今も、ドライバーとしてやっていくという自分なりのプライドというか。カッコつけているだけかもしれないですけど、そういう気持ちですので、「今は待って下さい」という話をさせて頂きました。それだけのことです。


──同世代のドライバーたちが次々と監督などチームのマネジメントに関わるようになるなか、もちろん、それ自体はとてもいいことだと思いますが、その反対の選択をするところに立川選手のらしさというか、フィロソフィーを感じます。


立川:まあ……総監督という肩書きにしても、当初は自分が監督をやるつもりはありませんでした。それでもチームと今シーズンどう戦っていくかを話し合っていくなかでチームのみんなからの後押しがあって、チームがうまくいって、そしてよりいい結果を残せるようになるのであれば、それはドライバーとしてもプラスになることなので、サーキットでの実務的なことに関してはできる範囲でやりたいと思っています。


 当然、自分はチームにいる期間も長いですし、今までもドライバーとしてクルマに乗っているときからそういう類いの役割はしてきたので、総監督と言っても今までとやること自体はそんなに変わるわけではありません。もちろんドライバーとしてクルマに乗っているので、チームのみんなの力を借りて、協力してもらいながらできればと思っています。


──今年はニッサンの本山哲選手やホンダの小暮卓史選手など、メーカーを代表してコース上で戦っていたライバルたちがGT500クラスからの引退を発表するなど、大きな世代の変化がありました。本山選手のニュースはどのように受け止めましたか?


立川:本山選手のGT500引退ということに関しては、正直、寂しいですよね。小暮選手にしても同じで、同世代で戦ってきたドライバーたちがどんどんいなくなってしまうので、やっぱり残念です。


──同世代として、自分はまだまだ、という気持ちになりましたか。


立川:そうですね……まだまだ、というか……なんて言うんですかね……。引退系の話については自分はレーシングドライバーなので、『誰よりも速く走って結果を出す』ということを求められているので、レーシングドライバーとしてはそれがすべてなので、それができなくなったら身を退きたいと思っています。そうじゃない限りは当然、まだまだ負けるつもりはないですし、勝つつもりでいます。


──今年、セルモ・インギングの経営体制が新しくなったわけですが、どんな期待をしていますか。


立川:石浦取締役を筆頭にチームが変わりましたので、そこ次第だと思います。石浦は石浦で大変で、取締役としてチームの経営関連のことを一生懸命やってくれているので、僕は現場の方で結果を残せるように、チームのみんなで力を合わせて頑張ろうと思っています。


──ふたりともドライバーとしてだけでなく、石浦選手はチームの経営の方、立川選手は現場ということで、ふたりのプレーイングマネージャーが両輪となってセルモ・インギングを前に進めていくイメージということですね。


立川:石浦は石浦の考えがあって、チームのため、自分のために役割をまっとうして、僕は僕で現場レベルで任されている部分があるので、お互い協力してきちんとやっていこうと思っています。そういう意味では今、チーム一丸となっているので、それをうまく結果につなげたいなと思っています。


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 これまでの佐藤&浜島裕英体制から、大きく舵を変えた新生セルモ・インギング。昨年はスーパーGT、そしてスーパーフォーミュラともにタイトル争いから脱落する結果となったが、今年、ふたりのプレーイングマネージャーが、どのような役割を果たし、そして結果を残せるか。国内トップチームの新しい試みとして、そのゆくえが楽しみだ。


AUTOSPORT web

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