「満足の結果」とマグヌッセン/初の選手権首位/散々だったポルシェetc.【WECカタール決勝後Topics】
2025年3月3日(月)12時33分 AUTOSPORT web

2月26日から28日にかけて、中東・カタールのルサイル・インターナショナル・サーキットで開催された、WEC世界耐久選手権第1戦カタール1812km。金曜の決勝レースは既報のとおりフェラーリ499P勢がワン・ツー・スリーフィニッシュを達成し、LMGT3クラスではファイナルラップまで続いたバトルの末、シボレー・コルベットZ06 GT3.Rがシリーズ初優勝を飾った。
そんな開幕戦の決勝レースから主なトピックをお届けする。
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今季開幕戦『カタール1812km』での50号車フェラーリ499Pの勝利は、イタリアのメーカーにとってWECレースでの4度目の総合優勝であり、ル・マン24時間以外のレースで同社のファクトリーカーが記録した最初のシリーズ戦優勝となった。
同時に、アントニオ・フォコ、ニクラス・ニールセン、ミゲル・モリーナの3名にとっては、昨季2024年のル・マンでの総合優勝以来初めて、通算2度目の勝利となっている。
AFコルセの83号車が2位、ワークスエントリーの51号車が3位となったことで、フェラーリは初めて総合表彰台独占した。これは昨年のカタール・ラウンドでポルシェがトップ3を独占して以来、ハイパーカー時代では2度目のことだ。マラネロのブランドの優位性をさらに強調すると、318周のうち9周を除くすべてをいずれかのフェラーリ499Pがリードし、キャデラックが7周、トヨタが残りの2周をリードした。
同様の歴史的勝利は1972年まで遡る。当時フェラーリ312 PBが、ジャッキー・イクス/ブライアン・レッドマン組を筆頭に、オーストリアのオスターライヒリンク1000kmでトップ4を独占した。
ジェームス・カラドは、51号車フェラーリが一連のペナルティで一時トップ10の最下位まで落ちた後、3位に返り咲くとは思っていなかったと認めた。「ジョヴィ(ジョビナッツィ)がクルマに乗っていた時間帯が厄介だった。彼は無線で何も聞こえなかったと思うので、ピット側とコミュニケーションがうまく取れなかった。でも、こういうことは時々ある」とカラドはSportscar365に語った。「イモラでまた戻ってくるよ。ペースの面で今日は実力を発揮できた」
51号車がポールポジションも獲得したフェラーリは、マニュファクチャラーズ・ランキングで66ポイントを獲得し、決勝で総合4位と7位となったBMWに31ポイントのリードを築いた。総合5位・6位でレースを終えたトヨタはさらに2ポイント差でランキング3位となっている。
2023年に499Pプロジェクトが開始されて以来、フェラーリがハイパーカーのメーカー選手権でトップに立ったのはこれが初めてだ。
■ポルシェにとって過去最悪のレースに
元F1ドライバーのケビン・マグヌッセンは、BMWでのWECデビューで4位になったことを「満足のいく」結果だと評した。「3台のフェラーリが先行していたが、明らかに彼らの方が速かった」とデンマーク出身の彼はSportscar365に語った。「(BMWの)クルマは素晴らしく、昨年から大きく前進しているので、ポジティブだ。ポールポジションと表彰台を争えることは、本当に喜ばしいことだ。僕自身、チームとうまくやっていて、大きな進歩を遂げている」
ポルシェLMDhディレクターのウルス・クラトルは金曜日のレース後、記者団に対し、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)の2台のクルマが10位と11位でフィニッシュしたことについて「フェラーリは間違いなく別格だった」と述べた。これはドイツのブランドにとってハイパーカー時代で最悪の結果だ。2023年に彼らのLMDhカーがデビューして以来、ヴァイザッハのブランドは『963』をトップ7に入れ損ねたことは一度もなかった。
クラトルは次のように付け加えた。「私たちにはチャンスがなかった。単純なことだ。完全に失敗のないレースではななかったが、ドライバーもチームも全体的に素晴らしい仕事をした。スピードが足りなかっただけだ」
ファクトリーからエントリーした2台のポルシェ963はレース中、いくつかの問題に見舞われ、5号車は序盤にタイヤがパンクし、後にリヤダンパーの調整に迫られた。また姉妹車の6号車もパンクチャーに見舞われ、リヤエンドカウルの交換が必要になった。
前年メーカーランキング4位のアルピーヌも厳しい開幕戦となった。このフランスのメーカーは、トップクラスでデビューしたアストンマーティン以外で唯一、ポイントを獲得できなかった。ミック・シューマッハーは、36号車がレース終盤に気温が低下したことで苦戦したと説明し、問題を完全に理解するには「より深い分析」が必要だと述べている。
シューマッハはSportscar365に次のように語った。「適度に気温が高いときはクルマの調子が良く、少なくとも周りの人たちについていくことができた。しかし気温が下がった瞬間、明らかにパフォーマンスが大きく低下した。姉妹車(35号車)も同様だ。表面的に示されているよろも、もう少し深刻な問題があるように思うね」
■上出来のデビュー戦
アストンマーティンの耐久レース責任者であるアダム・カーターは、ハート・オブ・レーシング・チーム(HoR)が走らせるヴァルキリーがレースデビューで示したペースに「勇気づけられた」と語った。007号車のトム・ギャンブルが記録した1分42秒978というベストラップは、アルピーヌが記録したベストラップからコンマ2秒しか遅れておらず、最速のポルシェからも0.3秒遅れただけだった。
カーターは次のように語った。「ヴァルキリーにとって、これは『学びの週末』になることはわかっていたし、新しいレースプログラムにつきものである『初期問題』にもいくつか遭遇した。とはいえ、2台がスティント中に示していたレースペースには勇気づけられた。カタールでのプロローグと開幕戦では、シーズンが進むにつれて競争力を発揮できると確信できる理由となる兆候をたくさん見ることができた」
TFスポーツの33号車コルベットZ06 LMGT3.Rをドライブしたダニエル・ジャンカデラ、ジョニー・エドガー、ベン・キーティングのトリオは、シボレーを昨年始まったLMGT3カテゴリーで優勝した5番目のメーカーにするのに貢献した。米国ゼネラルモーターズのブランドの勝利は、ポルシェ、BMW、アストンマーティン、フェラーリに続くものだ。
コルベットZ06 GT3.Rにとっては、1月末にIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦『デイトナ24時間レース』でAWAがGTDクラスを制して以来、今年2度目の優勝となった。
キーティングが2023年のル・マン以来となるWEC通算8勝目を飾った一方、チームメイトのジュンカデラと初参戦のエドガーはともに初勝利をマークした。TFスポーツにとっては、キーティング/エンリケ・シャベス/マルコ・ソーレンセン組がアストンマーティンのGTEカーを走らせた2022年富士ラウンド以来の優勝を果たしている。
その一方で、トム・ファン・ロンパウ、チャーリー・イーストウッド、ルイ・アンドラーデが駆る姉妹車81号車は、オルタネーター・シャフトプーリーの破損により早期のリタイアを余儀なくされた。
■レクサスとマクラーレンはペナルティに泣く
マクラーレンはWEC初優勝を逃したものの、59号車がクラス2位となりLMGT3で過去最高の成績を収めた。このアングロ・アメリカンチームの過去最高位は昨年のサンパウロでの3位だった。
レクサスは、アーノルド・ロバン/フィン・ゲルシッツ/ベン・バーニコート組78号車RC F LMGT3が4位に入り、過去のベストリザルトを大幅に上回った。
アコーディスASPチームの78号車は、クラス最多となる97周をリードしたが、パワーリミット違反で5秒間のストップ・アンド・ホールドのペナルティを受けて優勝争いから脱落した。同様に、ポールポジションを獲得した95号車マクラーレン720S GT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)は87周をリードしたものの、アンセーフリリースにするドライブスルーペナルティが響いてトップ争いから遠ざかり、最終的には7位でレースを終えた。
アウグスト・ファーフスは、チームWRTの3位入賞を「予想外」と表現した。彼と31号車をシェアしたティムール・ボグスラフスキーとヤセル・シャヒンは、アップグレードされたBMW M4 LMGT3(M4 GT3エボ)のWECデビューで表彰台を獲得している。
ファーフスはSportscar365に次のように語った。「僕たちはコース上で最速と言うには程遠かったが、良い戦略がありセーフティカーをうまく利用し、ドライブスルーを受けなかったた数少ないマシンのひとつだった。それが大いに助けになった。レース前は表彰台に上がるなんてはあり得ないと言っていたが、実際にはここまで来たんだ!」
■AMGは試練の船出に
アストンマーティンのカスタマーチーム、レーシング・スピリット・オブ・レマンは、WEC初参戦でクリーンな走りに努め9位入賞。初陣で2ポイントを獲得した。
「僕たちは持てるスピードを最大限に発揮したと思う」と“鉄人”ルーベンス・バリチェロの息子であるエドゥアルドは語った。「クルマは運転しやすかったし、チームとしても素晴らしい仕事をしたと思う。結果に満足しているとは言えないが、これが今日の結果だ。ここから犯したミスのいくつかを学ばなければならない」
アイアン・リンクスは、メルセデスAMG GT3エボでの初戦で忘れられないレースを経験した。61号車はブレーキに問題が発生し、クリスチャン・リードのドライブ時にスピンを喫し、そのままリタイアに。姉妹車の60号車はクラッチトラブルに見舞われ、ギアボックスの交換に3時間かかった。クルマはチェッカーフラッグを受けることができたが、LMGT3リーダーより93周少ない194周に終わったため完走扱いに含まれなかった。
ユナイテッド・オートスポーツのショーン・ゲラエルは、新しい形式で『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』を初めて受賞した。このアワードは、以前のように平均スティントペースで決定するのではなく、ファンの投票に基づいて授与されるようになった。ゲラエルは、バーニコート、ロバン、アハマド・アル・ハーシーとの競争を制していている。
レース中の計4回のセーフティカー・ピリオドと同数のフルコースイエローは、今年の『カタール1812km』がタイムリミットまでに、予定されていた335周に17周も届かなかった一因となった。初再開となった昨年は、10時間レースの残りわずか数分前にトップ車両が335周を走りきった。
WECの次戦はイモラ6時間だ。イタリアのイモラ・サーキットが舞台となるこの第2戦は4月18〜20日に行われる。
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