スペインとホンダの新たな可能性を担うアレックス・パロウ【スペイン人ライターのインディコラム】

2020年3月4日(水)8時15分 AUTOSPORT web

 スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。今回はスーパーフォーミュラから2020年のNTTインディカー・シリーズに活躍の場を移すスペイン人ドライバーのアレックス・パロウについて語る。
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 近年のホンダとスペインの関係は、フェルナンド・アロンソとマクラーレンF1および2017年のインディ500の挑戦とともに語られてきた。しかし2020年は、アメリカで成功した未来を築きたいと願う若手スターを通じて、スペインとホンダに向けられる視線は変わるだろう。


 その若手とはアレックス・パロウだ。パロウは2018年ヨーロピアンF3選手権に参戦し、2019年はスーパーフォーミュラのタイトル争いに絡んで世間に衝撃を与えた。2020年にパロウはデイル・コイン・レーシングからフルタイムのドライバーとしてインディカー・シリーズに参戦する予定だ。もちろん、ロジャー安川のおかげでチームゴウに起用され、日本との関係が生まれたのだ。


 言い換えれば、パロウは早くも自身をホンダにふさわしいスペイン人ドライバーとして確立したのだ。パロウは2018年の12月に行われたルーキーテスト初日から速かった。そして2019年にスーパーフォーミュラの新車SF19が登場したときは、さらに速かったのだ。2019年は素晴らしい内容のレースで埋め尽くされ、予選の走行も見事だった。パロウには勝てるスピードがあるし、スーパーGTで苦戦した年にチームゴウと良好な関係を築いたことで、将来に向けての種が植えられた。彼にとっての夢はインディカーだったので、テストで成功を収めてチャンスが訪れると、パロウはすぐにそれに飛びついた。


 パロウの物語は色々な意味で独特なものだ。エイドリアン・カンポスはフェルナンド・アロンソを見出した元F1ドライバーだが、パロウは彼に育てられた。カンポスはパロウのことを、2度のF1世界チャンピオンであるアロンソ以来の最高の若手であると語っている。しばらくの間、パロウはスペインの次の偉大なる希望のように見られていたが、慢性的な資金不足のせいで行き詰まり、将来の希望は潰えたかに見えた。しかしそれもダラーラが全日本F3選手権への出場を支援してくれるまでのことだった。パロウは将来に向けチャンスを掴んだ。パロウの才能を認めたホンダは、チームゴウが彼をスーパーGTに参戦させている間に、スーパーフォーミュラでレースをするチャンスを与えたのだ。

2019年シーズン、最終戦までシリーズチャンピオンを争ったアレックス・パロウ。2020年はインディカー転向が噂されている


 そしてここから状況が変わってくる。スーパーフォーミュラからインディカーへの移行は前例のないものであり、近年ふたつのシリーズに関連する例としては、TEAM無限からゲスト参戦してある程度の成功を収めた佐藤琢磨しかいない。さらに前には、トニー・カナーンがフォーミュラ・ニッポンで入賞を果たしている。太平洋の両側でスキルを証明したという点で少々状況が似ている。少なくともこれまでのところ、インディでデイル・コイン・レーシングのマシンを駆るパロウの経験は、昨年の日本で見られたような才能が今年も健在であることをよく示している。


 最近、初めてのオーバルサーキットでの走行を終えたパロウに話を聞いたが、彼はテキサスでの走行に少々不安があることを認めた。一部のドライバーがオーバルでのレースを好んでいないことを知っているからだ。しかしパロウは、これがただのテストであっても、あらゆる瞬間を楽しんだと語った。


「実際にオーバルでレースをするときには、さらに楽しめるのは確かだよ!」とパロウは私に語った。パロウの声には熱意を感じることができた。そしてパロウがインディ500について語るとき、彼の声には何か特別な響きがあった。特にこの数年、インディ500に参戦しているスペイン人ドライバーのフェルナンド・アロンソとオリオール・セルビアのふたりと、コースで戦うことができるかもしれないということについてだ。


 しかしアロンソやセルビアと違って、パロウはインディ500でレースをするためにアメリカへ来て、その後家に帰るわけではない。パロウの目標はアメリカでレーシングキャリアを築き上げることにあり、それが彼をホンダにふさわしい人材にしている。結局のところ、セルビアはベテランであり、アロンソはインディ500で優勝したいだけだ。


 参戦すべきチャンピオンシップがあり、パロウはそのひとつひとつのレースを楽しみにしている。ストリートサーキット、ロードコース、オーバールコース、それらすべてをだ。そこで大きな疑問が出てくるだろう。パロウにはインディカーの重要なプレイヤーとなる才能が本当にあるのだろうか?そしてパロウは適切なチームに所属しているのだろうか?


 最初の質問ははっきりとイエスだ。パロウのレースを生で見た者は、誰もがそのことを認めるだろう。ふたつ目の質問はもう少々複雑だ。彼は始めるにあたって適切なチームにいることは間違いないが、将来的にはより大規模なチームへ移籍する必要があるのではないかと私は思わずにはいられない。


 2020年シーズンに、パロウはルーキー・オブ・ザ・イヤーを目指す必要がある。パロウの主なライバルはオランダの新星リーナス・ビーケイになるだろう。ビーケイはマシン性能の点ではパロウに対しアドバンテージを持っていないはずだ。


 ビーケイのアドバンテージは、インディ・ライツの参戦経験があり、いくつかのコースについてよく知っていることにある。ふたりともこの年をトップ10以内で終わらせようとするだろう。個人的に、私は同国人のパロウに賭ける。


 私はパロウのキャリアを追いかけ、スーパーフォーミュラで彼の実力を目にした。彼はインディカーで素晴らしい仕事ができることに間違いはないと考えている。とりあえず今の時点でひとつはっきりしていることがひとつある。パロウのダラーラ・ホンダ55号車は、シリーズのなかでも最もクールなカラーリングが施されているのだ!

2020年インディカー・シリーズ:アレックス・パロウ


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