NPBはどうする? 故障者増加でピッチクロックに懸念 米韓で現場から嘆きの声「投手が不利に」「怪我が蔓延している」

2024年3月4日(月)6時0分 ココカラネクスト

大谷も昨季に違反を取られたピッチクロック。MLBで設けられているルールは、今季も物議を醸す気配が漂っている。(C)Getty Images

 投手たちにかけられる“制限”は今季も物議を醸しそうだ。

 メジャーリーグは昨季から試合時間の短縮などを目的とした「ピッチクロック」という独自のルールを導入した。

【動画】史上初、大谷翔平が投打の両方でピッチクロック違反を取られたシーンの映像

 これは投手がボールを受けてから、ランナーがいない場合は15秒以内、ランナーがいる場合には20秒以内に投球動作に入らなければいけないというもの。打者も制限時間の残り8秒までに投球に備えなければならない。

 たしかに一定の効果を出ている。昨季のメジャーリーグの9イニング平均の試合時間は2時間40分と前年から25分近くも短縮。スピーディーな試合展開が続いた影響もあり、観客動員数も前年比で9.5%アップの7074万7365人となった。当然ながら施策を「成功」と踏んだMLBは、今季から秒数をさらに短縮。ランナーがいる場合の時間を20秒から18秒とした。

 もっとも、影響を受ける選手、とりわけ投手たちからは不満の声が上がっている。

 昨季にナ・リーグの最多勝と最多奪三振のタイトルを獲得したスペンサー・ストライダー(ブレーブス)は、米紙『USA Today』で「これだけ怪我が蔓延しているのにもかかわらず、リーグはピッチクロックの短縮やロースターの投手数の制限など、怪我を助長しかねないルール変更を行なっている」と断言。「怪我人の割合が増えているのに、どうして話し合うこともなく、ピッチクロックを短縮させることができるのか。俺には分からない」と嘆いている。

 昨季の大谷翔平(現ドジャース)やジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)に代表されるように選手生命を脅かす故障を抱える投手の割合は増えている。事実、トミー・ジョン手術を受けたメジャー投手の割合は2016年から29%増となる35.3%にまで登っている。

 こうした負担増加の懸念は、今季からピッチクロックの導入を決めた韓国でも指摘されている。

 日刊紙『朝鮮日報』のインタビューでKTウィズに所属する助っ人投手のウィリアム・クエバスは「韓国の投手たちも適応には苦労すると思う。僕らは負傷の原因がピッチクロックにあるという話をたくさん聞いた。大変な時期になると思う」と不安を吐露。さらにNCダイノスのカン・インクォン監督も「実戦で適応するようにしなければいけない」と語ったうえで、こう続けている。

「投手が不利になるのではないかと思う。今シーズンの投手の大部分は防御率などの成績が悪化するはずだ。投手がテンポの速い投球を多くすれば、体力の消耗は必ず大きくなる。だから結局は体力勝負になってしまう。メジャーリーグで6イニング、7イニング、8イニングになるにつれて、先発投手の負傷率が増加するデータを見ている。こっちはその部分もケアしなければならない」

 日本でも将来的な導入が囁かれている「ピッチクロック」。とはいえ、米韓の両球界にいる現役選手たちから多くの反発の声を招いている現状を見るに、取り入れる際は熟考する必要がありそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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