モウリーニョとハグ、101年で初の決勝進出…チームを助けたボールボーイたち

2022年3月8日(火)14時56分 サッカーキング

ワトフォード戦で見せたアルテタ監督が話題となった [写真]=Getty Images

写真を拡大

 今月6日に行われたプレミアリーグ第28節のワトフォード対アーセナルの試合では、アーセナルのミケル・アルテタ監督がチームの3点目を“アシスト”して話題を集めた。

 52分、敵のサイドチェンジが流れてそのままタッチラインを割ると、アルテタ監督はテクニカルエリアから飛び出してボールをキャッチして即座にブカヨ・サカに渡した。するとサカのスローインから、DFセドリック・ソアレス、MFマルティン・ウーデゴール、FWアレクサンドル・ラカゼットとワンタッチでつなぎ、最後はボックスの外からFWガブリエウ・マルティネッリが右足一閃。見事なシュートを叩き込んでリードを広げた。

 2−3の勝利を呼び込むゴールを“アシスト”する形となったアルテタ監督は「咄嗟に体が動いた。私はフットボールと共に生きており、可能な限りチームの力になりたい。チャンスがあったので、ああしただけさ」と試合後に語りつつも「第4審判には『ミケル、あれはいけないよ』と言われた」と注意を受けたことを明かした。

 BBCラジオの実況は「サカにボールを渡した“ボールボーイ”は、テクニカルエリアを飛び出したミケル・アルテタでした」とコメント。このように、時にはボールボーイが勝敗に大きく関わることもある。それでは、そんな「チームを助けたボールボーイたち」をいくつか紹介しよう。

■モウリーニョとハグ

 2019年11月26日のチャンピオンズリーグ・グループステージでは、トッテナムのボールボーイがアシストを記録した。その1週間前に監督に就任したばかりのジョゼ・モウリーニョにとっては、初のホームゲームという大事な一戦。だが、試合はスパーズが早々に2点のリードを許す苦しい展開に。それでもデリ・アリのゴールで1点を返し、1−2で迎えた50分、ボールがタッチラインを割るとボールボーイが間髪入れずに新しいボールをDFセルジュ・オーリエにパスした。するとオーリエのスローインからルーカス・モウラが右サイドを抜け出し、最後はエースのハリー・ケインが決めて同点ゴール。結局スパーズは、その後も追加点を奪って4−2の逆転勝利。新監督のホーム初陣を白星で飾ったのだ。

 モウリーニョ監督は、大仕事をしたボールボーイを絶賛し、彼の元に行って堅い握手とハグを交わすと、試合後に「私は知的なボールボーイが大好きなんだ。ちょうど私がそうだったようにね。私は優秀なボールボーイだったよ」と思い出話を口にしたあと「今日の彼は素晴らしかったね。うまく試合の流れを読んで重要なアシストをした」と賛辞を送った。

 当時15歳のカラムくんは「ただ自分の役目を全うしただけ。ゴールシーンも見逃しちゃった。外に出たボールを拾うことに夢中だったからね。歓声が沸いたので振り返ったらハリー・ケインが喜んでいたんだ」とクラブ公式HPに語った。後日、カラムくんはチームの食事の席に招待され、ケインから「先日は僕のゴールをアシストしてくれたね」と声をかけられるなど、選手一同から感謝されることになった。

■あの伝説ゴールの陰にもボールボーイ

 2019年5月のチャンピオンズリーグ準決勝、リヴァプールに“奇跡の大逆転勝利”を呼び込んだのもボールボーイだった。バルセロナを相手にファーストレグを0−3で落としたリヴァプールは絶体絶命の危機に立たされていた。大逆転が必要なホームでの第2戦は、FWモハメド・サラーとFWロベルト・フィルミーノを怪我で欠く非常事態。それでも伏兵のFWディヴォック・オリギとMFジョルジニオ・ワイナルドゥムが2ゴールずつを決めて4−0。計4−3の大逆転で決勝に駒を進めたのだ。

 勝敗を決する4点目が生まれたのは89分のこと。コーナーキックのシーンでバルセロナが守備の陣形を整える前に、DFトレント・アレクサンダー・アーノルドが低い弾道のクロスを入れてオリギのゴールをアシストしたのだ。世界中から称賛を集めたアレクサンダー・アーノルドの頭脳的なプレーだが、それをアシストしたのがボールボーイのオークリー・キャノニアくん(当時14歳)である。

 ボールが外に出たあと、キャノニアくんは即座に新しいボールをアレクサンダー・アーノルドに渡していた。それについてリヴァプールOBのグレイム・スーネスは「このボールボーイを見てくれ。すぐに反応した。この子にシーズンチケットと決勝戦のチケットをあげるべきだね!」と試合を中継した番組内で絶賛していた。

 実はキャノニアくんはリヴァプール下部組織に所属する選手で現在17歳。イングランドの年代別代表にも選ばれており、昨年7月にはリヴァプールとプロ契約も結んだ。今季はリヴァプールのU18チームでストライカーとしてゴールを量産しており、UEFAユースリーグでは3月2日に行われた16強のヘンク戦でゴールを決めて勝利に貢献。今月15日にはユヴェントスとの準々決勝を控えている。既にファーストチームの練習にも招かれおり、今後が楽しみな若武者だ。

■101年のクラブ史で初のファイナルへ導く

 2012−13シーズンのイングランドのリーグカップでは思わぬヒーローが生まれた。それがスウォンジーのボールボーイを務めていたチャーリー・モーガン(当時17歳)だ。当時プレミアリーグに所属していたスウォンジーは、ミカエル・ラウドルップ監督の元で小気味よいサッカーを披露してリーグ戦でも健闘していた。そしてリーグカップでは4回戦でリヴァプール、準々決勝でミドルズブラを下して4強に進出。チェルシーとホーム&アウェイ制の準決勝を戦うことになった。

 敵地での初戦では元スペイン代表FWミチュなどのゴールで2-0の勝利を収めると、迎えたホームでの第2戦、ボールボーイがチェルシーのエースを退場に追いやるのだった。0−0で迎えた80分、追いかける展開のチェルシーには時間がなかった。そのためベルギー代表のエデン・アザールは、ボールがゴールラインを割ってスウォンジーのゴールキックになっても、急がせるためにボールを取りに行った。しかし一足先にボールを拾ったボールボーイが、アザールにボールを渡そうとしなかったのだ。渡さないどころから、体ごとボールの上に覆いかぶさってアザールに触らせようとしなかったのだ。

 これに苛立ちを覚えたアザールは何とかボールを奪おうとして、ボールボーイの体ごとボールを蹴ってしまったのだ。このプレーでアザールは一発退場。一人少なくなったチェルシーは1点も返せないまま計0−2で敗退。勝利したスウォンジーは、101年のクラブ史において初めて主要大会の決勝に進出。ファイナルではブラッドフォードを5−0で一蹴してクラブ史上初のタイトルを手にするのだった。

 試合後、警察はアザールによる傷害事件の可能性を調査。だが、ボールボーイのモーガンが父親と共に事件性がないと供述したため警察は介入せず、アザールは3試合出場停止処分だけで済んだ。実は、モーガンの父親はスウォンジーの株主であり役員という億万長者。そのためモーガン自身も、過去には高級車を所持するSNSの投稿をしているなど派手な生活を披露していた。そして試合前にはツイッターで「時間稼ぎが必要」と投稿していたこともあり、モーガン本人も批判の対象に。

 選手OBの中にはアザールの行為を擁護する者さえいた。バッドボーイで知られる元イングランド代表MFジョーイ・バートン(当時マルセイユ所属)に至っては「アザールの唯一の罪は思い切り蹴らなかったことだ」とSNSに投稿。思い切り蹴り飛ばすべきだったことを示唆したのだ。

 ちなみにモーガンは、今ではビジネス界で有名人に。友達とウォッカ(お酒)の販売に乗り出すとそれが大ヒット。『Au Vodka』はたちまち人気になり、元ボクシング世界王者のフロイド・メイウェザーなどがウォッカの瓶を持ってSNSに写真を投稿するほど。大成功を収めているという。

(記事/Footmedia)

サッカーキング

「ボールボーイ」をもっと詳しく

「ボールボーイ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ