伊調馨 「パワハラ告発」の動機は「コーチの娘」か

3月11日(日)7時0分 NEWSポストセブン

2016年のリオ五輪(時事通信フォト)

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 五輪四連覇し国民栄誉賞も受賞した女子レスリングの伊調馨が、日本レスリング協会の幹部からパワハラを受けていたとされる問題。「告発状には関わっておりません」と正式にコメントしながら、パワハラの内容については否定せず、伊調の態度がまるで、告発側の行動を容認しているかのようにみえるのはなぜか。


「自分のことは二の次で、これから五輪を目指す若い選手たち、とくに田南部さんのお子さんたちのことを気づかってだと思います」


 こう話すのは、伊調が北京五輪後のカナダ留学から帰国後、拠点を東京に移した頃の様子を知るレスリング関係者だ。


「馨さんは、レスリングのために中学卒業と同時に青森から愛知県の中京女子大学付属高校(現・至学館高校)へ進学したから、親元を離れるのは早かった。でもずっと寮生活だったし、カナダへの留学も姉の千春さんと一緒でしたし、本当の一人暮らしは東京に来てからが初めてでした。その時期に、レスリングの指導だけでなく、家族ぐるみで田南部コーチとは仲良くなっていったんだなと周囲からは見えていました」


 田南部コーチとは、伊調馨が協会幹部にパワハラを受けていると内閣府に提出された告発状に「関係者B」として登場する、2009年以降の伊調を指導していた、警視庁の田南部力コーチのこと。代表合宿のためよく家を留守にする田南部に会うため、現役時代から妻と子供たちはナショナルトレーニングセンターへよく足を運んでいた。そのなかで、自然と田南部の子供たちと伊調も親しい関係を築いていったようだ。


「とくに当時、小学生だった娘さんは馨さんにすごく影響を受けたと思います。彼女は中学生になるとき将来の五輪選手を養成するJOCのエリートアカデミーに入るのですが、女子レスリングの金メダリストである馨さんと親しくなったことで、五輪の金メダルを目指す決心がついたように見えました」(前出の関係者)


 その後、全国中学生選手権で優勝した田南部氏の長女は2014年、2015年と世界カデット(16、17歳)選手権で優勝。成長期のため階級をあげる時期に入ったこともあり、優勝ばかりではなくなったが表彰台に上がる常連だ。ところが、このところ女子の代表合宿にまったく招聘されない。代表合宿には3位以内の選手が招聘されるのが通例だが、2位だったときも呼ばれず、同じ大会で3位の選手は合宿に参加するという奇妙な現象も起きた。内閣府に提出された告発状には、この件もレスリング協会幹部によるパワハラのひとつとして記されている。


「田南部コーチの娘さんが、女子代表の合宿からハブられているのは皆が気づいていました。でも、それを問いただすとか、彼女も呼ぶべきだと意見する場所がない。女子の代表選考や強化のシステムは、栄さんが気に入るかどうかという点も大きく影響するようになっていると私たちは思っていました」(元女子レスリング選手)


 レスリング協会の栄和人・強化本部長は長く女子レスリングの強化に携わってきた。伊調馨を世界チャンピオンと五輪金メダリストに育てたのは、栄氏だと誰もが認めている。だが、長く女子の強化部門でトップに居つづけるうちに、代表決定に私的な感情を持ち込むようになったとの指摘が聞こえてくるようになった。


「ある年、世界選手権代表決定プレーオフで勝った選手を栄さんが気に入らなかった。そこで『あの選手は練習態度が悪いから、合宿で改めて代表を決める』と突然、プレーオフ直後に言い出したんです。そのときは勝った選手の側が、事前に公表されていたのと違う選考方法をいきなり言い出すのはおかしいと抗議したら、すぐに引っ込めました。でも次の年からは、女子だけ、代表決定プレーオフ戦が設定されなくなりました。合宿のなかで決めていくようになりました」(前出の元選手)


 レスリングの競技人口は、日本全国で1万人にも満たない。そのなかの女子レスラー、さらに五輪の金メダルを目指す選手ともなれば、皆が顔と名前をすぐ覚えられるくらいの人数しかいない。そのなかで好成績をおさめるためには、選手の良さを少しでも引き出して強化するしかない。女子レスリングを発展させるためには、強くなりたい選手に機会が公平に与えられる環境が必要だろう。

NEWSポストセブン

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