レース・オブ・チャンピオンズ2022年大会でEVラリークロス車両の『RX2e』を採用へ
2021年3月13日(土)8時0分 AUTOSPORT web
ラリークロス界の名門コンストラクターであるOlsbergs MSE(オルスバーグMSE)と、燃料潤滑油企業のP1 Performance Fuels GmbH(P1パフォーマンス・フューエルズ)は3月9日付で声明をリリースし、Race Of Champions(レース・オブ・チャンピオンズ/RoC)初のスノー&アイスイベント」となる2022年大会で、両者が共同開発した100%化石由来成分を使用しないバイオ燃料を供給すると発表。その燃料を使用する従来のスーパーカー・ライトクラスに加えて、電動ラリークロス車両として開発された『FIA RX2e』も新たに供給するとアナウンスした。
RoCで2017年大会以来採用され、フォードのフィエスタを模したボディを架装するワンメイク4WD車両のスーパーカー・ライトは、2022年大会よりイベントの歴史上初めて、石油を含まない100%化学合成燃料で走行することになった。
2021年初頭の発表により、スウェーデンのピーテオに史上初の氷上特設トラックを設置し、北極圏の南60マイル(約97km)にある凍ったバルト海の一大リゾート地に建設されたサーキットは、今後5年間イベントのホスト役を務める。
これまでトム・クリステンセンやセバスチャン・ベッテル、ジェンソン・バトンにペター・ソルベルグ、そしてセバスチャン・ローブらがドライブしてきたスーパーカー・ライトは、このオクタン価105のバイオ燃料を使用することにより、さらなる高出力化を実現。グリップレベルに応じて、3.85〜4.10秒で0-100km/h加速をこなすマシンへと変貌する。
一方、そのスーパーカー・ライトと並んで新たにラインアップに加わる電動モデルは、今季からのラウンチが予定されるFIA RX2e選手権向けのEVラリークロス車両で、こちらもRoC スノー&アイス初のエレクトリックカーとして採用される。
オルスバーグMSEとスペインの電動化企業QEV Technologies(QEVテクノロジーズ社)が開発したRX2eは、すでに3度のWorldRX世界ラリークロス選手権チャンピオン、ヨハン・クリストファーソンらの手で開発テストが進められており、そのマシンを「印象的な“ポケットロケット”」と表現したクリストファーソンは「世界選手権レベルへの素晴らしい出発点で、正しい方向への本当の一歩」と評していた。
■他の開発担当ドライバーも「RX2eのドライバビリティは他に類を見ないほど高い」と絶賛
このRX2eはスペースフレームシャシーを中心に構築され、30kWhのバッテリーと前後独立したふたつのモーターを搭載。最大250kW(約334PS)のパワーと最大510Nmのトルクを発生する。
RoCの代表兼共同創設者であるフレデリック・ジョンソンは、このRX2eが「完全に持続可能でカーボンニュートラルになることを目指しているRoCにとって、素晴らしい追加のピースになる」と、歓迎の言葉を語っている。
「スウェーデンのピーテオで開催されるレース・オブ・チャンピオンズ“スノー&アイスイベント”の車両の中で、最初の電気自動車として完璧なFIA RX2eマシンの採用を発表できたことを、非常にうれしく思っている」と続けたジョンソン代表。
「最初のテストで見たところ、この真新しい電動ラリークロスカーは非常に印象的なトルクと圧倒的なパフォーマンスを備えている。RoCに参加する多くのスタードライバーは、この電気自動車を限界まで押し上げて、自身が最速であることを証明するため真っ向から戦うだろう。その光景を見るのを本当に楽しみにしている!」
一方、オルスバーグMSE代表のアンドレアス・エリクソンの子息であり、自身もWorldRX優勝経験を持つケビン・エリクソンと、2017年ユーロRX王者のアントン・マルクランドも、このRX2eの開発作業を継続しており、ともに3月初旬にテストした氷上でのパフォーマンスを高く評価するコメントを残している。
「あらゆるものが初めてで、開発テストを始めた頃はどう評価するべきか迷ったけれど、そのドライバビリティは他に類を見ないほど高いんだ。従来のスーパーカーはギヤを間違えたり、回転が落ちすぎたり、アングルが深すぎたりすれば若干の遅れとタイムロスに繋がったが、このマシンではトルクとパワーが常にそこにあるんだ!」とエリクソン。
一方のマルクランドもケビンの言葉に同調し「まず第一印象はその運転のしやすさ。これはとてもうれしい驚きだったよ。ハンドリングは最高だし、ギヤボックスの扱いやすさも見逃せないね」と、その性能を高く評価している。