【2025年FIA F2をイチから学ぶ】鍵はドライバーの腕とチーム力。F1登竜門の注目ポイント
2025年3月13日(木)12時55分 AUTOSPORT web

2025年シーズンのFIA F2は3月14日〜16日に開催される第1戦メルボルン(オーストラリア)に始まり、全14戦28レースが開催される。次のF1ドライバーを目指し、世界各地から有望な若手ドライバーが集うFIA F2について、改めてシリーズの基本情報やレギュレーション、2025年シーズンのドライバーラインアップや開催スケジュールを整理してみよう。
現在のFIA F2はGP2が名称を変更した2017年に誕生した。ただ、『F2』という名称の誕生は、F1が世界選手権となる前、最上位のF1規定よりも小排気量のシングルシーター車両規定として設定された1948年まで遡る。
1967年からは当時のF2規定の元でヨーロッパF2選手権が開催され、1985年に国際F3000選手権、2005年にGP2、そして2017年より現在のFIA F2へと発展を遂げた。時代の流れに応じて開催スタイルや名称を変えてきたが、ヨーロッパF2時代からF1へのステップアップカテゴリーとして、F1を目指す多くの若手ドライバーが参戦してきた歴史がある。2005年から始まったGP2初年度以降の日本人ドライバーの参戦歴とシリーズチャンピオンは下記のとおりだ。
■GP2/FIA F2歴代王者&日本人ドライバー参戦記録
年度 | チャンピオン | 参戦日本人ドライバー |
---|---|---|
2005 | ニコ・ロズベルグ | 吉本大樹 |
2006 | ルイス・ハミルトン | 吉本大樹 |
2007 | ティモ・グロック | 中嶋一貴/平手晃平/山本左近 |
2008 | ジョルジオ・パンターノ | 小林可夢偉/山本左近 |
2009 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 小林可夢偉 |
2010 | パストール・マルドナド | – |
2011 | ロマン・グロージャン | – |
2012 | ダヴィデ・ヴァルセッキ | – |
2013 | ファビオ・ライマー | – |
2014 | ジョリオン・パーマー | 伊沢拓也/佐藤公哉 |
2015 | ストフェル・バンドーン | 松下信治 |
2016 | ピエール・ガスリー | 松下信治 |
2017 | シャルル・ルクレール | 松下信治 |
2018 | ジョージ・ラッセル | 牧野任祐/福住仁嶺 |
2019 | ニック・デ・フリース | 松下信治/佐藤万璃音 |
2020 | ミック・シューマッハー | 松下信治/佐藤万璃音/角田裕毅 |
2021 | オスカー・ピアストリ | 佐藤万璃音 |
2022 | フェリペ・ドルゴヴィッチ | 佐藤万璃音/岩佐歩夢 |
2023 | テオ・プルシェール | 岩佐歩夢 |
2024 | ガブリエル・ボルトレート | 宮田莉朋 |
※2008年〜2011年に開催されたGP2アジアシリーズは除く
FIA F2はシャシー、エンジン、タイヤがワンメイクで争われるため、車両ごとのポテンシャルも変わらず、ドライバーの腕とチーム力が戦局を左右する。現在のシャシーは2024年に導入された『ダラーラF2 2024』で、2026年シーズンまでの3年間使用される計画だ。
エンジンはメカクローム製3.4リッターV6ターボエンジンを搭載する。燃料はアラムコがサプライヤーを務めており、2024年は55パーセントがバイオ由来の合成燃料を使用していたが、2025年シーズンからは100パーセント持続可能合成燃料が使用される。
また、F1と同じピレリ製のタイヤを使用するも、F1とは異なりタイヤウォーマーの使用が禁止されているため、短い時間でタイヤを適切な温度まで温めるウォームアップ技術もレースウイークの結果を左右する大きなポイントだ。
■ダラーラF2 2024の諸元抜粋
シャシー寸法 | 全長:5284mm 全幅:1900mm 全高:1097mm (FOMロールフープカメラ含む) |
ホイールベース | 3135mm |
エンジンメーカー | メカクローム(フランス) |
エンジン仕様 | V6 3.4リッターシングルターボ |
最大出力 | 620HP/8750rpm |
最大トルク | 570Nm/6000rpm |
安全基準 | 2024 FIA F1安全基準準拠 |
サバイバルセル | ダラーラ製サンドイッチカーボンアルミハニカム構造 ザイロン素材のアンチ・イントリュージョンパネル |
フロント&リアウイング | ダラーラ製カーボン構造 |
ボディワーク | カーボン/ダラーラ製のケブラーハニカム構造 |
ヘイロー | チタン製F1仕様 |
ギヤボックス | ヒューランド製6速縦型シーケンシャル |
ギヤ操作 | パドルシフトによる電気油圧制御 |
クラッチ | ZFザックス製カーボン |
車載スターター | 非搭載 |
サスペンション | プッシュロッド式ダブルスチールウィッシュボーン フロント:ツインダンパー&トーションバー リヤ:スプリング |
ダンパー | コニ製/フロント2方向/リア4方向調整可能 |
調整可能アンチロールバー | 前後 |
ブレーキキャリパー | ブレンボ製6ピストンモノブロックキャリパー |
ブレーキディスク&パッド | カーボンインダストリー製カーボン |
ホイール | OZ製マグネシウムホイール 前:18インチx12J/後:18インチx13.7J |
タイヤ | FIA F2専用のピレリスリック&ウエットタイヤ TPMS(タイヤ空気圧監視システム) |
DRS | F1のDRSと同じ機能/油圧可動式 |
DRS | F1のDRSと同じ機能/油圧可動式 |

■1週末に2レース&リバースグリッド。F1にはない独自フォーマット
FIA F2は全戦がF1のサポートイベントとして開催される。基本的なレースフォーマットはレースウイーク初日に45分間のフリー走行と30分間の予選。2日目にレース距離120km/最大時間45分のスプリントレース(決勝レース1)。3日目にタイヤ4本交換に伴うピットストップが義務付けられるレース距離170km/最大時間60分のフィーチャーレース(決勝レース2)が行われる。
レースフォーマットにおけるF1との大きな違いが1週末に2度の決勝レースが行われること、そしてリバースグリッド制の導入の2点だ。レースウイーク初日の予選結果により3日目のフィーチャーレース(決勝レース2)のグリッドが決定。そして予選結果から上位10台を逆順にし、2日目のスプリントレース(決勝レース1)のグリッドを決定する。
このリバースグリッド制により、たとえば、予選で最速タイムをマークしたドライバーは、スプリントレース(決勝レース1)では10番手から、フィーチャーレース(決勝レース2)ではポールポジションからのスタートすることになる。
一見不公平にも見えるリバースグリッド制だが、スプリントレース(決勝レース1)では上位8台までがポイントを獲得でき、優勝ドライバーには10点。一方、フィーチャーレース(決勝レース2)では上位10台までがポイントを獲得でき、優勝ドライバーには25点が与えられる。獲得できるポイント差が大きいため、タイトル獲得へ向けては2レース合わせてより多くのポイントを獲得し続けられるかが、大きなポイントとなる。
なお、予選ポールシッターには2ポイントが与えられるほか、レース中にファステストラップを記録したドライバーが10位以内でフィニッシュすれば1ポイントが与えられる。そのため、1大会(1週末)で獲得できる最大ポイントは39点となる。
■2025年FIA F2開催スケジュール
Round | 日程 | 開催地 |
---|---|---|
1 | 3月14〜16日 | メルボルン(オーストラリア) |
2 | 4月11〜13日 | サクヒール(バーレーン) |
3 | 4月18〜20日 | ジェッダ(サウジアラビア) |
4 | 5月16〜18日 | イモラ(イタリア) |
5 | 5月22〜25日 | モンテカルロ(モナコ) |
6 | 5月30〜6月1日 | バルセロナ(スペイン) |
7 | 6月27〜29日 | シュピールベルク(オーストリア) |
8 | 7月4〜6日 | シルバーストン(イギリス) |
9 | 7月25〜27日 | スパ・フランコルシャン(ベルギー) |
10 | 8月1〜3日 | ハンガロリンク(ハンガリー) |
11 | 9月5〜7日 | モンツァ(イタリア) |
12 | 9月19〜21日 | バクー(アゼルバイジャン) |
13 | 11月28〜30日 | ルサイル(カタール) |
14 | 12月5〜7日 | ヤス・マリーナ(アブダビ/アラブ首長国連邦) |

■注目の若手と宮田莉朋2年目の挑戦
2025年シーズンを戦う22名のドライバーラインアップのうち、10名がルーキーとなる。なかでもガブリエレ・ミニ(プレマ・レーシング/アルピーヌ育成)、そしてディーノ・ベガノビッチ(ハイテックTGR/フェラーリ育成)は注目の存在だろう。ふたりは昨年のスポット参戦の際に3位表彰台を獲得しており、FIA F2でもその実力を証明している。

また、2024年FIA F3王者のレオナルド・フォルナローリ(インビクタ・レーシング)、レッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコが「次に非常に有望なのはリンドブラッドだと思う」と言及するアービッド・リンドブラッド(カンポス・レーシング/レッドブル育成)は、昨年チームタイトルを競った強豪チームからの参戦となるだけに、開幕から上位につける走りを見せそうだ。

そして、日本のモータースポーツファンにとっては宮田莉朋(ARTグランプリ/TGR-DC)の2年目の活躍に期待したいところだ。1シーズンを戦った経験と実績のあるARTグランプリへの移籍により、どのような戦いを見せてくれるか。今季のFIA F2を観戦する上で最大の注目ポイントに違いない。
昨年FIA F2に参戦したガブリエル・ボルトレート、アイザック・ハジャー、アンドレア・キミ・アントネッリ、オリバー・ベアマンの4名が2025年シーズンのF1シートを獲得。また、フランコ・コラピントが代役として昨年シーズン途中からF1デビューを果たしている。FIA F2は未来のF1ドライバーが集う登竜門なだけに、3月14〜16日にメルボルンで迎える2025年シーズン開幕戦から、その戦いを注視しておきたい。

■2025年FIA F2エントリーリスト
Car.No | Rookie | Driver | Team | Program |
---|---|---|---|---|
1 | ○ | レオナルド・フォルナローリ | インビクタ・レーシング | – |
2 | ロマン・スタネ | インビクタ・レーシング | – | |
3 | ジョセップ・マリア・マルティ | カンポス・レーシング | レッドブル育成 | |
4 | ○ | アービッド・リンドブラッド | カンポス・レーシング | レッドブル育成 |
5 | オリバー・ゲーテ | MPモータースポーツ | レッドブル育成 | |
6 | リチャード・フェルシュフォー | MPモータースポーツ | – | |
7 | ルーク・ブラウニング | ハイテックTGR | ウイリアムズ育成 | |
8 | ○ | ディーノ・ベガノビッチ | ハイテックTGR | フェラーリ育成 |
9 | ○ | セバスチャン・モントーヤ | プレマ・レーシング | – |
10 | ○ | ガブリエレ・ミニ | プレマ・レーシング | アルピーヌ育成 |
11 | ジャック・クロフォード | ダムス・ルーカスオイル | アストンマーティン育成 | |
12 | クッシュ・マイニ | ダムス・ルーカスオイル | アルピーヌ育成 | |
14 | ビクトール・マルタンス | ARTグランプリ | – | |
15 | 宮田莉朋 | ARTグランプリ | TGR-DC | |
16 | アムーリ・コルデール | ロダン・モータースポーツ | – | |
17 | ○ | アレクサンダー・ダン | ロダン・モータースポーツ | マクラーレン育成 |
20 | ジョシュア・デュルクセン | AIXレーシング | – | |
21 | ○ | キアン・シールズ | AIXレーシング | – |
22 | ○ | サミ・メゲトゥニフ | トライデント | – |
23 | ○ | マックス・エスターソン | トライデント | – |
24 | ○ | ジョン・ベネット | ファン・アメルスフォールト・レーシング | – |
25 | ラファエル・ヴィラゴメス | ファン・アメルスフォールト・レーシング | – |