開幕迫るセンバツで必見の強打者 プロ注目の“打率6割の怪童”モイセエフ・ニキータは何が凄いのか?【高校野球】

2024年3月15日(金)6時0分 ココカラネクスト

随所でポテンシャルの高さを感じさせるモイセエフ。その注目度の高さは今大会屈指だ。写真:西尾典文

 3月18日に開幕する第96回選抜高校野球大会。今秋のドラフト候補となる選手たちにとって貴重なアピールの場として最初の全国大会となる。そのなかで野手において最も注目を集めている選手と言えるのが、モイセエフ・ニキータ(豊川)だろう。

 ロシア出身の両親を持つも、出身は愛知県で、生まれも育ちも日本であるニキータのポテンシャルは、かねてから垂涎の的だった。高校入学直後の1年春からベンチ入りすると、同年秋の新チームからは「3番・センター」で定位置を獲得。昨夏の愛知大会でも4試合で打率.467(15打数7安打)と目に見える結果を残した。

【動画】神宮を沸かせた驚愕弾! モイセエフ・ニキータのホームランを見る

 そして、モイセエフの名前が全国区となったのは、昨年の秋季大会での活躍がキッカケだ。東三河地区大会、愛知県大会、東海大会、明治神宮大会の17試合で打率.571、6本塁打、32打点という圧倒的な成績を残したのである。地区大会では力の差があるチームとの対戦も多くなるが、レベルの高い東海大会と明治神宮大会でも6割以上の打率を残しているのは見事という他ない。

 とくに名門・星陵との明治神宮大会準決勝で放ったホームランは、まさに目の覚めるような一だった。打った瞬間こそライトフライかと思われるような高々と打ち上がった当たりが、そのままスタンドまで届き、詰めかけた観衆からもどよめきが起こった。この時の球場内は決して強い風が吹いていたわけではない。ゆえに彼のヘッドスピードの速さとインパクトの強さがある証左と言えた。

 そんな観る者を魅了する打撃を生み出しているのが、全身を使った豪快なスイングだ。見た目は高校生らしくスラッとした体格に見えるものの、180センチ、82キロというプロフィールからも分かるように、上半身、下半身ともしっかりと筋肉はついている。

 高校生の強打者の多くは、どうしても上半身の力や腕力に頼る傾向にある多いが、モイセエフの場合は、力を入れるタイミングなどの“メリハリ”が良いように見える。バットを高く上げた大きい構えも迫力は十分で、フルスイングしてもバランスが崩れないというのも大きな長所である。

6割に迫った高打率は図抜けた対応力の高さの賜物

 そして、もう一つの大きな特長は、試合の中で問題点を修正できる能力が高さだ。明治神宮大会の初戦、対高知戦でも第1打席では相手バッテリーの変化球攻めに対してタイミングが合わずに三振に倒れたが、第2打席以降は少しタイミングをとる動きを小さくしてしっかり対応。ツーベースと犠牲フライを放っている。秋季大会トータルで6割近い打率を残せたのも、図抜けた対応力の高さの賜物と言えるだろう。

 また、大事な場面で打席が回ってくる巡り合わせの良さと、好機を逃さない勝負強さも彼の売りの一つだ。先述した対高知戦の犠牲フライも9回に1点差で回ってきた場面の同点打であり、また選抜出場に向けての大一番となった東海大会の準決勝、対宇治山田商戦でも9回裏に同点のタイムリーを放っている。

 偶然という見方もできるかもしれないが、こういった“運”を呼び込めるスター性を彼が秘めているのは確か。「自分が打ちとられたら負け」という場面で結果を出せる集中力の高さというのは、なかなか教えて身につくものではない。実際、プロのスカウト陣からも、このような目に見えづらい部分を評価する声もある。

 打撃ばかりに注目が集まるが、センターの守備範囲の広さと肩の強さも備えている。対宇治山田商戦ではダイビングキャッチを見せるなど、バッティング以外でも観客を沸かせるプレーができるというのも大きな長所である。

 初の全国の舞台となった明治神宮大会でも、堂々と実力を発揮しただけに、甲子園でも積極果敢なプレーで観衆を沸かせてくれると期待したい。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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