U-23代表の“救世主”、V・ウェルメスケルケン際。蘭で揉まれた若武者が抱く果てなき野望【独占取材】

3月15日(火)10時0分 フットボールチャンネル

元々はFW。プロ1年目でレギュラーを奪取

 U-23日本代表は今月末、ポルトガルで強化遠征を行う。そのメンバーにサプライズ招集されたのがオランダで奮闘を続けるファン・ウェルメスケルケン際だ。オランダ人と日本人のハーフである際はこれまでどんな軌跡を描き、そしてU-23代表へどんな思いを抱いているのか? 2月にオランダで独占インタビューし、また代表メンバー発表後に追加で話を聞いた。(取材:舩木渉)

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——オランダに来て3年目、プロとしては1年目ですが今季ここまでどんな7ヶ月間でしたか?

「シーズン開幕前は先発組に割って入れるかどうかだったのですが、いろいろな巡り合わせで結果的にチャンスが回ってきました。そこからほぼレギュラーとしてチームに関われたことは大きかったですし、素直に嬉しかったですね」

——プロになって、環境の変化や重圧は感じますか?

「ありがたいことに日本でも僕のことを知っている人が徐々に増えているみたいで、応援メッセージをもらうこともあってすごく嬉しいです。プロという実感が湧きますし、責任も感じます。ただサッカーに対する意識は変わりません。

 もちろん試合の緊張感は増しましたが、無駄に気負いすぎることなく、今まで通り大好きなサッカーの延長で、ザ・仕事という感覚はないです。素直にサッカーが大好きなので、楽しんでやれていることの方が大きいです。プレーする喜びを感じています。プロとアマチュアに『お金』という違いはありますが、根本的な部分はブレていないので」

——昨年11月にはヨングPSV戦でプロ初ゴールを挙げました。決まった瞬間のことを覚えていますか?

「正直実感が湧かなかったですね。『あれ?本当に入ったのかな?』という感じでゴールを二度見してしまいました(笑)。信じられなかったですけど、昔はFWとしてプレーしていたので久々にゴールを決められて嬉しかったです。

 決まったとわかった時、いつも応援してくれているサポーターがすぐそこにいたので無心でそこへ走っていました。試合が終わったら友達がお祝いのメッセージをくれたり、サポーターが寄ってきてくれてささやかながらお祝いもしました。目に見える数字があるのはいいことなので、今後もスキがあれば貪欲に狙っていきたいと思います」

中盤でプレーも「自分はSB」。目指す先はラーム

——後半戦は少し出番が減っています。1年目ということもあって仕方ないのかもしれませんが…。

「プロ1年目でここまでいろいろなことを経験できる選手はそういないので、正直に言うと『面白いな』と思っています。1部と2部両方を経験できて、先発で出る楽しさだけでなく、チーム事情や移籍の関係でベンチに座る日々の大変さと葛藤も身をもって知りました。どれだけ自分を信じ続けられるかですよね。全部ひっくるめて濃い1年です。

 どの選手も好きでベンチに座っていないと思いますし、もちろん悔しいです。一方でベンチに座っているからこそわかることや得るものがあります。ベンチで監督が何を言っているのか、もし自分が出たらどんなことを要求されるのか、横で集中して聞いていられるのはいいですね。

 現状をあまり悲観せず、自分を信じ続けられるか、出ないなりに何を得られるかを整理して努力し続ければチャンスは必ずめぐってくると思います」

——サイドバック(SB)としてトップチームデビューを果たし、今季は新しいポジションも開拓しました。

「最近は中盤を任されることも多くなりました。選手としての幅が広がるので、いろいろなポジションをやらせてもらえるのはありがたいと思っています。ただ自分はSBの選手で、やっていても一番楽しいのはSB。器用貧乏になってはダメなので、最終的にフィリップ・ラームのように両方を高いレベルでできるようになればいいですね」

——サイドと中央では全く見える景色や求められるプレーが変わります。自分の中に変化はありますか?

「中盤をやってみて、SBでプレーするときに中盤の選手がどんなことを考えて、何を要求してくるかもわかるようになりました。昔からサイドという180°の世界でプレーしてきましたが、プロのレベルで中盤の360°の世界を経験できるというのは貴重です。1部のクラブで同じようなコンバートはかなり難しいことだと思いますが、この環境で中盤をやらせてもらうことは成長につながりますし、いい勉強になっています」

体調管理へのこだわり。激しく当たる意味

——練習では監督からどんなことを求められていますか?

「ドルトレヒトは豊富な運動量が求められるチームなので、監督も毎日ハードな練習を課します。ただ甲府ユースの練習やトップチームへの練習参加で経験してきた辛さや難しさみたいなものはそれほど感じません。これまで日本でやってきたことが生きていると思います。オランダ人たちは毎日大変と言っていますけど(笑)」

——ウィンターブレイク明けからチームに負傷者が続出する中で、全く離脱することなく試合に絡み続けています。何か特別なケアや心がけがあるのでしょうか。

「せっかくのチャンスを怪我や風邪で無駄にしてしまうのは本当にもったいないので特に気をつけるようにしています。ただ特別なことはやっていないですね。自分の中で生活のメインにサッカーがあって、『日本を飛び出してサッカーをしに海外へ来た』という根本がハッキリしています。

 ここでは少なからず『外国人』という目線で見られますが、そこまで意識せずとも自分がやるべきことをちゃんとやっていれば自然に進むべき道が見えてきます。僕自身がヨーロッパでもっと上のレベルを目指したいので、そう考えるとやらなければいけないことも見えてきます」

——以前より身体が一回り大きくなったような気がします。

「たしかに最近は身体の大きいオランダ人に当たっても簡単に倒れることが減ってきましたし、逆に吹っとばせる回数が増えてきました。徐々にですが、パワーがついてきていると思います」

——オランダは1対1でもかなり激しい守備が要求されますし、パワーアップは不可欠ですね。ハリルホジッチ監督も「デュエル」を何度も強調しています。

「オランダに来た当初はボール1つに対しても激しくタックルすることに驚きました。彼らは練習中でも普通に足裏を見せてきますし、そういう部分でのタフさやハードさは日本でなかなか経験できるものではないですから。

 激しく当たられたら同じだけ強く返さないと、何もせずタックルを受けるだけでは自分が怪我してしまうんです。怪我のリスクを減らすためにも自分から激しくいくことが大事になります」

1部でもやれる自信。そして代表への思い

——仮にいま1部のクラブに移籍したとして、対等にやれる自信はありますか?

「あります。昨季トゥエンテ戦に出場して1部のレベルがどんなものかだいたいわかりました。エールディビジ(1部)とジュピラーリーグ(2部)の違いを挙げるとすれば『プレーや判断のスピード』だと思いますが、スピードに関してはチームに入ってしまえば順応していくものなので、それにどれくらいの時間を要するかが重要になります。

 1部と2部のチームが対戦すればそれなりに差が出ると思いますが、選手個々のレベルはそれほど変わらないと思います。2部にもアンダー世代の代表に入っているような、ビッグタレントはそこらじゅうにいます。1部で通用するかどうかは個人の努力しだいです」

——U-23日本代表のアジア選手権は見ていましたか?

「時間が合えば見るようにしていました。大会前は五輪へ行けるのか少し不安でしたが、僕は彼らの何人かとユース時代に対戦した経験があるので『あれだけ強いのになぜ結果が出ないのだろう』と思っていたんです。本当にレベルの高い選手たちが集まっている場所なので。

 今回は結果が出たので、やっぱり強かったんだと再確認できました。この世代のレベルが低いのではなく、これまで結果が出なかったのは運やちょっとしたギャップが影響していたのではないでしょうか」

——同年代の選手たちが活躍する姿を見て刺激はありましたか?

「五輪に出たいという気持ちは一層強くなりました。ああいう経験はそうそうできるものではないですし、国を背負って大会に出て、同じように国家の誇りを持って向かってくる選手たちと戦う、そんな環境でサッカーをしてみたいです。選手としての本望です」

——そしてついにU-23日本代表招集が決まりました。いまの気持ちはどうですか?

「いままで続けてきたことが目に見える成果になったことは素直に嬉しいです。ただ、同じポジションの2人が怪我で離脱したことによるラッキーな部分も大きいと思います。僕はずば抜けてすごい選手ではないので、地道にできることをしっかりやって自分の実力を証明できればいい。チャンスをものにしたい気持ちはもちろん強いので、死に物狂いでやるつもりでいます」

「救世主になれるよう全てを捧げたい」

——自分がチームに入ったとしてどんなプレーをするかイメージできますか?

「正直その姿をイメージするのは難しいです。実際にどういう選手がいて、どういうサッカーをするかというのは見ているだけではわからないし、一緒にプレーするからこそわかる部分が大きい。そこを通して自分にできることとできないことがハッキリしてくると思います。

 たとえば今なら『いろいろなポジションでプレーしているのでユーティリティ性を生かしてチームに貢献できます』と言えなくはないですけど、日本代表のレベルを知らずにその主張はできません。代表には各ポジションのプロフェッショナルたちが集まってくるので、そのレベルと同じだけのことができないと意味がないですから」

——日本ではU-23代表の「救世主」と報じられることもありました。

「僕は今回が初めての年代別代表招集です。自分に何ができるかは行ってみないとわからないけど、日本で書かれていたような『救世主』になれるように、日本代表に貢献できるように自分の持っているものを全て捧げたいと思います」

——シーズン終了後に今思い描いている理想を実現するには何が必要でしょうか。

「今後のキャリアを描く中で今季が最も重要になると思っています。徐々にチャンスは回ってきていますし、前半戦のようにレギュラーとしてできるだけ多くの試合に絡んでいきたいです。サッカー選手として試合に出続けることが一番大変なことではありますが、一番楽しい部分でもあります」

——夏には五輪が待っていますね。

「もちろん五輪本大会で日本代表に入りたい気持ちはありますし、サッカー選手としてのキャリアを積む中でめったにないチャンスだと思います。でもまずはクラブです。シーズンは残り数ヶ月ですが、いかに自分のパフォーマンスを高められるかが鍵になります。

 そこで初めていろいろなものが付いてくるはずなので、自分を信じ毎日を大切にして気を抜くことなく努力を続けていきたいと思います」

フットボールチャンネル

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