カタール、W杯準備は順調か? ホスピタリティと労働環境。知られざる舞台裏【潜入レポート】

3月16日(水)8時0分 フットボールチャンネル

「劣悪な労働環境」という報道は事実か?

 2022年のFIFA W杯の開催国カタール。その準備に際して、スタジアム建設に携わる労働者が、「劣悪な環境に置かれている」と指摘する一部欧州メディアがあったが、それは実態に即したものなのだろうか。現地カタールに潜入し、その深層を探った。(文:森本高史)

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「全ては順調に行っている」

 2022年カタールW杯組織委員会専務理事を務めるハッサン・アル・タワディ氏は、2月10日世界各国のスポーツ関係者を対象に行ったW杯開催準備状況視察ツアーにて自信満々に語った。

「皆さんに特に強調したいのが、スタジアム建設労働者について。一部メディアから『水と食べ物を満足に与えていない劣悪環境』と批判され続けてきたが、それはねつ造に過ぎない。我々は、労働者に対し、世界基準で最高の環境を与えている」

 スタジアム建設は、多大な疲労、そしてときに危険を伴う肉体労働である。「だからこそ、労働者を最大限にケアしなければならない」とアル・タワディ氏は力説した。

 カタールには労働者が暮らす地区がある。場所はカタールの首都ドーハの中心部から車で30分ほどの郊外。名前は「レイバー・シティ(Labour City)」、その名の通り労働者が暮らす地区だ。今回はこの地区を現地視察した。

 アパートは、スペースの関係で個室が与えられているわけではないが、2人もしくは3人の共同部屋でカーテンが敷かれていることで、最低限のプライバシーは保護されている。そしてそれぞれの棟には食堂が設置されており、1日3食提供されている。

 食堂で提供されているのはチキンカレー、マットン(羊)カレーだ。労働者の大半は、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、ネパールなど南アジア諸国出身であるため、彼らにとっての国民食が出されているということだ。

 余暇活動も充実している。フィットネスジムには最新の器具が備えられているし、卓球台やビリヤードに興じることもできる。棟によってはプールが設置されているところすらある。

 さらに、カタールW杯組織委員会は、2万人収容のクリケット場を建設している。プロチーム用に建設されたものではなく、労働者専用のスタジアムだ。週末にはこちらでクリケットの大会が開催され、クリケットを愛する労働者たちが、大勢の観客の前でプレーしている。

充実した商業・医療施設。出稼ぎ労働者にも手厚いサポート

 南アジア諸国ではサッカーも盛んであり、別のスタジアムでサッカーの大会が開催され、数多くの労働者がボールを蹴っている。優勝チームには賞金が出るということもあり、賞金を得れば故郷で待つ家族により多くの仕送りができる。労働者たちが休日に家で寝ているのではなく、スポーツに興じやすいよう、うまくアレンジされている。

 プレーするスポーツだけでなく、観るスポーツについても、観る側にとって価値の高いものが提供される。たとえばサッカーのネパール代表は、ここ2年で2回カタールに招待され、国際試合を行っている。この試合には、サッカーに熱狂的なネパール出身の多数の労働者が駆けつけ母国を応援した。母国を離れている彼らにとっては、この上なく熱狂的だったろう。

 イスラム教の寺院であるモスクでは、1日5回の礼拝が行われ、ここには労働者のみならず近隣住民も訪れる。仕事仲間以外の友人、知人と交流する絶好の機会だ。ショッピングモールも併設され、スーパー、カフェ、携帯ショップ、書店、両替屋に加え、映画館もあり、民族舞踊や音楽を鑑賞することもできる。

 このように労働者にカタールでは充実した環境が提供されており、ドバイ在住で、フランスフットボール誌の中東通信員を務めるダフララー・ムアドヘン記者は次のように語っている。

「建設労働者問題は、世界中で危惧されている深刻なものの一つ。なかには、水もないトイレもないテントに労働者を住ませている国も少なくない。しかしながら、カタールにとっては全く無縁。労働者は、会社の重役のような手厚いサポートを受けているから」

 サポートという意味では、アル・タワディ氏は「細心の注意を払っているのが医療」と続ける。レイバー・シティ内には最新の医療器具を完備した病院が作られ、無料で診察を受けられる。ドクターを務めているのは、主にカタール在住歴の長いインド人だ。患者と同じ言語で会話し、生活上のアドバイスができるのは重要である。

他国の失業者に雇用機会を創出

 レイバー・シティの現地視察後、アル・タワディ氏は、現在改修中のアル・カリファスタジアム(2011年アジアカップ決勝を開催)に視察団を連れて行ってくれた。

 工事現場の至る所で「あなたの安全が最重要だ(Your safety is the most important)」と安全第一をアピールされており、とりわけ3月から10月にかけては、炎天下の中での作業になるので、労働者の健康を考慮し、大量の飲料水が提供されている。

 約100ページからなる労働安全マニュアルは英語、アラビア語、ヒンドゥー語(インド)、ベンガル語(バングラデシュ)で作成され、労働者、管理者、経営者など多くの人に事故のない安全作業の実施を徹底している。

「カタールW杯組織委員会は、中東初と歴史的意義の深い2022年W杯開催の仲間として、労働者にこの上ない環境を用意している。インドやバングラデシュなど南アジア諸国が貧困による失業問題などを抱えているなか、カタールのスタジアム建設はそういった国々の労働者の雇用促進に大きく貢献している。

 給料は平均以上で、故郷に残る家族が安心して暮らしている。家族をカタールに連れて来られるようにビザ取得のサポートも行っている。FIFAも既に視察に訪れており、ブラボーと絶賛してくれた。

 その時のアドバイスは『カタールW杯は史上最高のW杯となる。あなた方は素晴らしいことを行っている。様々な批判があるかと思うが、世界に向けて積極的にアピールしてほしい』というものだ。

 まさしくその通り。批判に屈せず、全世界の人々に楽しんでもらえる2022年W杯を開催できるように最高の準備をしていきたい」とアル・タワディ氏は目を輝かせながら語っていたのが印象的だった。

(文:森本高史)

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