新時代Gen3スーパーカーは“物議”の船出。週末連勝1-2発進の王者SVGが初戦失格処分に/RSC開幕戦

2023年3月17日(金)6時55分 AUTOSPORT web

 南半球オーストラリア大陸で最高峰のツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの開幕戦『ニューカッスル500』が3月10〜12日に開催され、土日のスプリント戦ともに今季より新型『シボレー・カマロZL1スーパーカー』をドライブする王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング)が連勝を飾る好発進を決めた。しかし、土曜レース後にライバル陣営から正式な抗議文が提出され、チャンピオンは僚友ブロック・フィーニーとの初戦1-2が霧散するまさかの失格処分に。レースウイークが明けてレッドブル・アンポル・レーシングが上訴する“物議の船出”となっている。


 新車両規定“Gen3”導入で新時代の幕開けを迎え、今季より第7世代『フォード・マスタング・スーパーカー』vs『シボレー・カマロZL1スーパーカー』の“ポニーカー直接対決”が実現したRSCは、同国ニューサウスウェールズ州の世界的観光地、ニューカッスル市街地戦が開幕の舞台となった。そのレースウイーク直前の現地では、ポルシェのファクトリードライバーであるケビン・エストレが、シーズン終盤にも新たにグローブ・レーシングの耐久カップ登録コドライバーを務めることも発表され話題を呼んだ。


 こうしてフレッシュな新年度幕開けを迎えたシリーズだが、このオフ期間には紆余曲折も経験し、2月下旬の公式テストでは性能調整に関する疑義が噴出。これに対し昨季を通じて述べ1万km以上もマイレージを重ねてきた2台の新型車両には、このタイミングに及んで改めての車両制御空力試験(VCAT)が追加され、エアロダイナミクスの微調整も施された。


 開幕直前に晴れて正式なホモロゲーション登録を終えた両陣営のGen3レースカーは、金曜からの公式練習を経て土曜最初の予選に臨むと、狙いどおりトップ10シュートアウトは全車が0.4秒差圏内という僅差に。


 ここで栄えあるGen3時代初ポールポジションを射止めたのは、オフテストから好調を維持したシボレー陣営のブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)となり、フォード陣営のキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)とフロントロウを分け合う結果となった。


 そのまま土曜午後に開催された今季最初の95周スーパースプリントでは、6番手発進だったチャンピオンがさすがの逆襲劇を披露。序盤こそ集団内で我慢の燃費走行を強いられたものの、義務ピット前に3番手までポジションを上げると、上位勢で最後まで引っ張る完璧なストラテジーを遂行し、参戦2年目のフィーニーを従えトップチェッカー。スーパーカーの新時代を切り開く1-2フィニッシュを決めた……かと思われた。


 しかしレース直後、フォード陣営のティックフォード・レーシングとウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド(WAU)が揃って抗議書を提出し、上位の2台が「ドライアイスを誤って使用した」と指摘。より詳細には、規制で義務付けられている助手席側ではなく「運転席側に冷却機能を追加した」と報告した。

シボレー陣営のブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)が、栄えあるGen3時代初ポールポジションを獲得する
燃費走行で上位勢で最後まで引っ張る完璧なストラテジーを遂行したSVGだが、ドライアイスの使用法が嫌疑に
フォード陣営のホモロゲ登録担当チーム、ディック・ジョンソン・レーシングにとっては表彰台なしの厳しいスタートに
失格裁定の結果、優勝は3位フィニッシュだったキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)の手に渡る


■トリプルエイトは上訴の意向を表明。第2戦の前週に公聴会を実施へ


 このニューカッスルの開幕戦では、複数のドライバーから「Gen3車両のコクピット温度が高い」ことに不満の声は挙がっていたが、規則条文ではドライバー冷却に関し「助手席の指定された取り付けポイントを利用して、規定されたシステムを搭載」するよう明文化されていた。


 これに対しスポーツ審議を司るモータースポーツ・オーストラリアは声明を出し「副レースディレクターは、88号車と97号車のドライバー冷却システムに関するC16.2の技術的違反の主張を受領した。スチュワードの公聴会は終了しているが、技術部会は現在新たな審議に入った。決定は明日の朝に下される」と発表。


 その宣言どおり翌朝には、前日にトリプルエイトが「両方のクルマのドライバー側にドライアイスを追加したことが判明」し、正式にレース1の失格処分が確定。結果、優勝は3位フィニッシュだったウォーターズの手に渡り、2位にチャズ・モスタート(WAU/フォード・マスタング)、3位コステッキのトップ3と変わった。


 そんな空気のなかで始まった日曜予選は、2010年王者ジェームス・コートニー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)がトップ10シュートアウトでクラッシュを喫しDNSに。決勝序盤ではデクラン・フレイザー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)とマコーレー・ジョーンズ(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/シボレー・カマロZL1)がバリアを破壊し、赤旗中断の波乱が続発する不穏な展開に。


 それでも失意からの挽回を期す王者SVGが奮起し、宿敵モスタートとの激しいバトルで、幾度も接触を繰り返す“喧嘩上等”の走りをみせ連勝。ポール発進のレイノルズが最後のポディウムに登壇した。


 波乱に満ちたGen3最初の週末を終え、槍玉に挙げられたトリプルエイトのマネージングディレクターを務める元“7冠王者”ジェイミー・ウインカップは「我々は形式や手法を問わず、ルールをこっそり回避しようとしているわけではない」と憤怒。正式な上訴の意向を表明し、公聴会は次戦のF1オーストラリアGP併催の第2戦『メルボルン400』の前週にも開かれる方向となった。


「我々のクルマはモータースポーツ責任者から承認を得て、彼らをガレージに招き入れ、承認を与えられてレースに出場している。我々がクルマに何かを追加したかどうかについて混乱はないし、クーリングがどこに搭載されたかの認識だけだ」と続けたウインカップ。


「どちらかといえば、それはマシンのパフォーマンスにとって不利であり、有利ではない。こんな裁定はクレイジー、クレイジー、クレイジーだし、スーパーカーからの扱いが信じられないよ!」

日曜ポール獲得のデビッド・レイノルズ(グローブ・レーシング/シボレー・カマロZL1)は「安堵の」3位フィニッシュ
2010年王者ジェームス・コートニー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)は予選で、決勝序盤ではデクラン・フレイザー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)がバリアの餌食に
日曜も2位に入ったチャズ・モスタート(WAU/フォード・マスタング)が、ランキング首位発進を決めている
個人SNSでも声明を発表したSVG「弁解することも、同情を期待することもしないが、Gen3が運転の楽しさを絶賛できないのもまた現実」とコメント。「王者としてポジティブな側面に光を当てたいと願う」

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