「今年こそ」はこれで最後— 西武・菊池、開幕投手抜擢で芽生えた責任感

3月17日(木)20時16分 フルカウント

期待に応えられなかったもどかしさ、7年目の今年は「本当に今年こそ」

 このシーズンオフ、菊池雄星投手はチームの後輩である佐野泰雄、佐藤勇両投手とともに初めて合同トレーニングを実施した。練習内容は今までと同じく基礎的なフィジカルトレーニングやキャッチボールが中心だったが、二人の存在は期待していた以上にいい刺激になったという。

「今まではトレーナーと1対1だったので張り合う相手がいなかったんです。でも、今回は二人がいてくれたおかげで、いろんなことを競い合ってやることができました。ピッチングなら負けないんですけど、あの二人走るの速いんですよ(笑)。そういう体力的な部分は若い二人に引っ張ってもらいました。先輩として恥ずかしくない練習をしないといけないなっていう思いもあって、結果的にすごく充実した自主トレができたと思います」

 そんないい流れで迎えた南郷キャンプでも、コンディションは上々。キャンプ中は「ピッチングの基本的な動作の再現性を高める」というテーマを掲げて取り組んだ。監督室に呼ばれたのは第4クール、2月16日のこと。自身初の開幕投手に指名されたのだ。

「開幕2戦目と言われるだろうなと思っていたんです。だから、聞いたときには『まさか』と心臓がバクバクしました。なぜ自分が開幕投手に指名されたのか、当然それは考えましたね。もちろん、対戦チームとの相性とか、そういったこともあると思うんですけど、やはり監督の『頼むぞ』という思いは感じています」

 田邊徳雄監督からは、「今年は任せた。15勝頼むぞ」と明確な言葉で激励をもらっている。毎年同じように期待をかけてくれてきたが、それに応えられなかったことに強いもどかしさがあるのだと菊池投手は言う。

今年から取り入れた「脱力投法」、「力がフッといい感じで抜ける」

「昨年も9勝で止まってしまって、あと一つ勝ちたかったという思いがありました。やはり先発を任されたピッチャーとして、シーズンを通して投げることと、二桁勝利をすることの二つは最低限クリアしなくてはいけない。『今年こそ』って毎年言っているんですけど、今年は本当に今年こそという思いが強いです」

 菊池投手のこれまでの成績を振り返ると、1年目から4勝、4勝、9勝、5勝、9勝と、二桁勝利をまだ達成していない。10勝というハードルを超えるための策になりそうなのが、オープン戦で取り入れた「脱力投法」だ。

「キャッチャーに5〜6割の力で投げてみろと言われてやってみたんです。最初の試合では、『こんなに力抜いてもいいの?』って思ったんですけど、だんだん慣れてきて、リズムよくバランスよく投げられるようになった。全体的に安定して、再現性もグッと高まりました。しかも、思ったより球速も落ちないし、制球も定まる。キャッチャーが言いたかったのはこのことだったのかと。今までどれだけ力任せに投げていたんだって思いますね」

 もともとプレー中に力を入れてしまう癖があった。特に気持ちが入った時は過剰な力みとなり、それが原因でピッチングが崩れることも多かった。しかし、今はそれを攻略する術を身に付けつつある。

「でも、脱力って難しいですよね。力を入れることは誰でも簡単にできると思うんですけど。僕は、力むときに歯を喰いしばる癖があるので、上の歯と下の歯をくっつけないように意識しています。その状態で投げると、力がフッといい感じで抜けるんです」

菊池が語るエース像、「まだまだ僕には足りない」

 オープン戦では手ごたえを感じているが、それを公式戦でいかに応用できるかが今後の課題となる。ただ、場合によっては力を込めたピッチングがあってもいいと本人は考えている。

「場面によっては、多少力を入れてもいいときもあると思うんです。要は、スイッチを入れるところとの切り替えですね。『脱力』というキーワードを頭の中に入れておいて、場面に応じてその引き出しを使えばいい。そうやって、メリハリをつけたピッチングができたらと思います」

 今年でプロ7年目。今までは先輩についていく意識が強かったが、そろそろチームの成績に対しても責任を負う立場だと感じている。

「試合に限らず、練習に取り組む姿や普段の態度でも後輩にいい影響を与えられるようにならないといけないですね。これまで、西口さん、岸さん、涌井さんといったエースと呼ばれる方々をたくさん見てきましたが、共通しているのは本当によく練習をすること、そこにいるだけで場が引き締まること。まだまだ僕には足りないかなと思います。状態がよくても悪くても、いつも一定の精神状態や安定した振る舞いを心がけていきたいです」

 開幕投手という大役を与えられたことで、さらに強くなった責任感。今年は数字でも姿勢でも、エース級の風格を見せてくれることに期待したい。毎年続いた「今年こそ」は、きっと今年こそ最後になるはずだ。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」岡田真理●文

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