球界最年長野手になってもハードトレ 井口資仁を奮い立たせた王氏の言葉

3月18日(金)14時7分 フルカウント

ロッテを牽引する41歳、プロ20年目の今年も過酷トレで始動

 井口の朝は早い。まだ日が昇らぬ朝6時に集合をすると、起伏の激しいゴルフコースを40分間、ひたすら走る。朝食をとって、8時半に今度はグラウンドへ。1時間近い、入念なアップを行った後、ノックや打ち込みなどの技術練習を3時間。昼食を挟んで午後からはウェートトレーニングを行う。体幹を1時間。その後は、重い負荷を加えたマシントレで締める。

 すべてのメニューが終わるのは16時過ぎ。井口資仁内野手、41歳。日本プロ野球最年長野手とは思えぬ練習量で毎年恒例、沖縄での1月の自主トレで今年も体をイジメ抜き、一年をスタートさせた。

「昔から変わらないメニューをこなしたよ。若い選手とも同じメニュー。1月にしっかりとトレーニングをしないと、シーズンはもたない。1月が一番、キツいんじゃないかな」

 球界でも屈指のハードトレとして知られる井口の自主トレ。弟子入りしたいと毎年、多くの選手が門を叩く。阪神・鳥谷敬内野手など他球団の選手も、ここで鍛え、一年をスタートさせる。一番若い選手で26歳。今年、42歳になる大ベテランは、それでも若手と同じメニューを涼しげにこなす。

「今、ベンチプレスは125キロぐらいかな。これまで最高で150キロ。ただ、今は筋肉よりスピード。筋肉や関節を柔らかく怪我をしない体作りを意識している」

 気が付けば、日本球界で最年長野手となった。「さすがに40歳になって現役でいる姿は想像を出来なかった」と井口は笑う。それでも、強い信念で体を鍛え、バットを振る。

思い描いてきたベテラン像、「そんな姿を絶対に見せたくないと思っていた」

「いろいろな意味で見本とならないといけない。ランニングひとつとっても、オレがすることで、若手はもっとしないといけない。そういう姿勢を見せる事も大事だと思っている。そういう意味でもしっかりと動けるように準備をすることが大切となる」

 若い選手たちは自分の背中を見ている。それを誰よりも理解しているからこそ、日ごろの鍛錬を怠らない。妥協を許さず、何事にも全力で取り組む。それは自分が若い頃に感じた教訓でもある。

「ベテランで動けない人、動かない人がいた。オレはそんな姿を同じぐらいの年になった時に絶対に見せたくないと思っていた」

 ベテランだからと、あぐらをかくつもりは毛頭ない。ベテランだからこそ率先して練習をする。その姿こそが若い選手を引っ張り、チーム力の底上げになると思う。だから、自主トレでも、春季キャンプでも誰よりも早く球場入りをして練習を重ねた。

 97年にデビューし華やかに実績を積み重ねてきた。順風満帆な野球人生のように思われがちだが、決してそうではない。

「途中、自分の打撃を見失い、打ち方が分からなくなった事もある」

 井口が振り返るように打撃でもっとも悩みが深かったのは00年。左肩も負傷し手術をするなど、わずか54試合の出場にとどまった。そんな時、キッカケを与えてくれたのが当時在籍していた福岡ダイエーホークスの王貞治監督の一言だった。

王氏からかけられた言葉とは、「心に残っているものは多い」

 練習前のお風呂場。シャワーを浴びていた井口の横をサウナ室から出てきた王監督が隣に立った。

「俺も入団したばかりのころは三振王って呼ばれていたんだよ」

 何気ない一言だった。ボソッとつぶやいた。しかし、当時の井口には胸の奥深くまで響く言葉だった。そして、王監督はそこから、どのように三振王を返上すべく練習したかを懐かしそうに振り返ってくれた。

「迷いの中にいた僕の心をあの王監督の言葉が励ましてくれた。あの人でさえ打撃に悩んでいた。そう思うと不思議と気持ちが楽になった」

 世界の王と言われた男でさえ、自信を失い、悩みに悩んだ時期があった。それにくらべると自分の突き当たっている壁はどれほどのものだろうか。自分も必ずこの壁を乗り越えてみせる。25歳の若者の心を奮い立たせるには十分な出来事だった。

「アドバイスが上手な人だった。打席に入る前に『フリー打撃のように打て』とアドバイスを頂いたことで、力みがとれてホームランを打った事もよく覚えている。あの人の言葉で心に残っているものは多い」

 あれから月日は流れ、今や球界最年長野手となった。日米通算2000本安打を13年に達成し、日本通算250本塁打まであと、6本塁打(日米通算300本塁打まであと12本)。1000打点まで32打点と様々な記録の、今季中の達成に注目が集まる。

「すべては積み重ね。これから準備を重ねて、つねにベストパフォーマンスをしたい。まだまだ若い選手には負けたくない気持ちが強い」

 3月25日、QVCマリンフィールド、対北海道日本ハム。井口の20年目のシーズンが幕を開ける。球界最年長としてチームを、球界を引っ張る。ファンに、若い選手たちに見せたい背中がある。背番号「6」の新たな戦いがまもなく始まる。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara

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