“日本人選手不毛の地”ベトナムでパイオニアになれるか。U-23代表・井手口陽介の兄・正昭の挑戦

3月19日(土)10時32分 フットボールチャンネル

ベトナムに日本人選手が少ない理由

 今季のベトナムプロサッカーリーグ(Vリーグ1)で日本人MF井手口正昭(27歳)が躍動している。井手口と聞いて、ガンバ大阪所属のU-23日本代表MF井手口陽介(19歳)を思い出すファンは多いだろうが、井手口正昭はその兄だ。今オフに横浜FCからベトナム屈指の人気クラブであるホアン・アイン・ザライ(HAGL)に移籍してきた。

 横浜FCとHAGLは昨年末にパートナーシップを締結しており、選手間交流という形で、「ベトナムのピルロ」ことU-23ベトナム代表MFグエン・トゥアン・アイン(20歳)が横浜FCに1年間の期限付き移籍。一方の横浜FCからは井手口が完全移籍でHAGLに加入した。

 当初は、多くのメディアがこの移籍をビジネス目的と考えており、戦力的には期待できないと報じていた。東南アジアで活躍する日本人選手はタイをはじめとして大勢いるが、ここベトナムで外国人選手に求められるのはなによりフィジカル。特に高さだ(井手口は173cm)。その証拠にリーグには190cm台の外国人センターフォワードやセンターバックがごろごろいる。

 それに加えて、ベトナムでは外国人枠の少なさも日本人をはじめとするアジア人が移籍しにくい理由となっている。外国人枠は2015シーズンから削減されて1部で2人、2部以下は0人。タイなどで採用されているアジア枠も存在しない。必然的に各クラブの補強ポイントは、センターラインということになり、比較的安価で大柄なアフリカ系の選手が大半を占めることになる。

 実際にクラブ関係者にコンタクトをとってみると強化担当者は、技術があり、プロ意識が高いという理由で日本人選手に関心を示すのだが、最終的な決定権を持つ肝心の監督やテクニカルディレクター(TD)がアジア人助っ人を軽視しており、これまで移籍が実現してこなかった。

 過去に日本人が在籍した例でいうと、「アジアの渡り鳥」こと伊藤壇が2003年に当時1部のカン・サイゴン(サイゴン・ポート)でプレー。その後、当時2部のホーチミン市郵便局クラブに新居秀元がいたが、長く活躍することは出来なかった。

兄貴分的存在の井手口。現地での価値も徐々に上昇

 実はトライアウトでベトナムに来たJリーガーは何人かいる。しかし、いずれも契約には至らなかった。そのため、今回HAGLが獲得した井手口も当初は戦力として疑問視されていたが、開幕からここまで3試合連続フル出場。横浜FCに移籍したグエン・トゥアン・アインの穴を補ってあまりある大活躍を見せている。

 チームメイトやスタッフ、サポーターからの評価も上々だ。特に、現地の文化や生活に早く馴染もうとする積極的な姿勢に称賛の声があがっている。井手口は以前、香港でプレーしたこともあるため、その時の経験が役に立っているのかもしれない。平均年齢最年少(22歳)のチームにあって、若手から兄貴分として慕われている。

 第3節で対戦したタンクアンニンのファム・ニュー・トゥアン監督は、「今日は井手口に攻撃陣がうまく抑え込まれた。彼のプレースタイルは、HAGLにマッチしている。HAGLは良い補強をしたものだ」と述べ、敵将もその力を認めた。

 ここまでは、ボランチとして文句なしの出来。前線に張っている元水戸のオズマールが怪我から復帰すれば、攻撃の厚みが生まれ、上位進出を狙うことも可能だ。今季の井手口の活躍次第で、日本人選手のバリューが上昇するため、今後はもっと多くの日本人選手がベトナムでプレーするようになる日が来るかもしれない。

Vリーグ第3節までの井手口正昭の個人成績

タックル:23回
クリア:15回
空中戦勝利数:5回
ボール奪取率:83%
パス本数:84(成功77)
パス成功率:92%
ドリブル突破:5回
ショートパス:79回
ロングパス:5回
チャンスメイク:7回

(文:宇佐美淳)

【了】

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