角居勝彦調教師 「厩舎で馬を選ぶ」が間違っていない理由

3月19日(日)7時0分 NEWSポストセブン

厩舎と馬の状態について角居勝彦調教師が解説

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 そろそろ桜花賞・皐月賞出走の顔ぶれが揃いつつある。目立つのはやはりリーディング上位常連の有力厩舎管理馬だ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、厩舎と馬の状態について解説する。


 * * *

 馬券検討では、ファンのみなさんは馬の状態を凝視しますね。鞍上のジョッキーが「乗れているかどうか」も大きな材料でしょう。


 そして厩舎。「厩舎で馬を選ぶ」という方策は、あながち間違ってはいないと思います。ありていに言って、勝てる厩舎とそうでない厩舎の二極化が進んでいる。今後も格差は広がると思います。


 勝ち鞍のリーディングを見ていると、上位に君臨している厩舎はここ数年同じような顔ぶれ。1年や2年では、その顔ぶれは簡単には入れ替わらない。なぜそうなっていくのか。わかりやすい理由と、わかりにくい理由があります。


 当然の流れとして、大手馬主さんはもちろん、競走馬を多く供給するクラブは会員数をふやしたいので、結果を出した厩舎に押しこみたい。いい血統の馬が集まれば、その厩舎はさらに勝つようになりますね。


 かつて勝ち星ばかりにこだわらない太っ腹な馬主さんもいましたが、いまは馬主というだけではステイタスではない。勝ちたいというオーナーが主流です。


 ポイントは厩舎の力ですが、現在はチームとしてきちんと機能しているかどうか。ファンからは見えにくい事情です。厩舎には調教師がいて、厩務員がいて、調教助手がいます。キーは厩務員です。


 昭和の時代には、各厩舎に「腕利きの厩務員」がいました。職人気質で、馬には乗れなくても、経験と技術を駆使して勝てる馬を作ってきました。まるで馬と会話ができるような親密な関係を築くことができる頼もしい存在です。そういう名厩務員が日本の競馬を支え、多くの名馬を世に送り出してきました。


 腕利きの厩務員にはお気にいりの調教助手がいました。センスのある調教助手を見つけ出してきて、馬の長所や癖を教え、調教のポイントを指示し、自分の担当馬を優先して調教をつけさせる。厩舎のためというより、自分のために調教助手を育てたわけです。その関係性で強い馬を作っていった。


 オーナーからの信頼も厚くなり、厩務員が厩舎の主導権を握ることもある。「オレが厩舎を支えている」と自負する人も大勢いたようです。若い調教師に「オレがいい馬を集めてやるから」と豪語する厩務員も珍しくなかった。


 ですが、腕利きの厩務員は馬を育てても、次代の若手厩務員を育てないものです。


 たとえば、厩舎で一番いい馬を若手に任せ、自分は少し崩れた馬の面倒を見る、ということをしない。「この馬は、オレに任せとけ」と胸を張られると、勝ちが見込めるために調教師もとりあえずは安心です。新馬が入ってくるとき、まず厩務員に担当したい馬を選ばせたというのはよくある話でした。


●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。


※週刊ポスト2017年3月24・31日号

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