【F1最新技術ピックアップ】フロアに大胆なスリットを入れることで空力向上を狙うマクラーレン

2018年3月20日(火)13時2分 AUTOSPORT web

 技術ウォッチャーの世良耕太氏が、オフシーズンテストで走行した2018年ニューマシンの気になる技術トレンドを解説。 


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 フロアの前側に前後方向のスリットを入れてきたチームがある。メルセデス、トロロッソ、マクラーレンなどだ。このうちマクラーレンMCL33は最も大胆で、スリットはリヤの半分以上に達している。


 2017年の規則変更によるボディのワイド化にともなって、フロアの最大幅も変更された。車両の最大幅が1800mmから2000mmになったのに合わせて、フロアの最大幅は1400mmから1600mmになった。フロアがワイドになったのに合わせてモノコックやパワーユニットを収めたボディもワイドになったかというと、そうはなっていない。


 むしろ、スリムにするのがトレンドだ。フロアの外側の端から中央方向を見ると、ボディ(サイドポンツーン)はどんどん後退して、フロアの露出部分が増えている。


 フロアの裏面のみならず、表面の露出面積が増えたことで空力的な使い勝手が増したのだろう。2017年の1年間の研究開発で使い道が探求されたに違いない。その結果、フロアの前端から後方へ一定の範囲で一直線にスリットを入れた方が、空力的な効果が高まることがわかった。


 フロア前端左右のエッジ部分はもうずっと以前から、フロアの後端にあるディフューザーエリアと同様、大きな負圧(すなわちダウンフォース)を発生させるエリアとして注目されていた。ディフューザーエリアは空気を後ろに流して負圧を発生させるが、フロア前端両サイド部は前から入った空気を横に抜いて負圧を発生させる。

トロロッソの『めくれ』と呼応したスリット

 フロア前側サイド部が一部めくれ上がっていたり、そのめくれに対応してフラップ状の処理が施してあったりするのは、外への流れを促す狙い。トロロッソのような『めくれ』と呼応したスリットは、このエリアの流れを強化する目的だろう。


フロービズによって明らかになった流線

 マクラーレンMCL33の例は、それだけでは説明できない。フロービズによって明らかになった流線を見ると、サイドポンツーンのリーディングエッジ付近はほぼ真横に空気が流れているのがわかる。めくれは控え目だが、めくれの位置と真横の流れは呼応する。


 フロアの中心寄りは、奥まったサイドポンツーンの輪郭に沿って空気が流れ、フロアの後端に向かっているようだ。一方、それより外側はスリットに吸い込まれてフロア下に流れ込んでいるように見える(フロア下の強い負圧に吸い込まれて)。


 フロア下に流れ込んだ空気は、このエリアでカーブを描いてリヤに向かう流れに合流すると同時に強化し、強く速い流れになってディフューザーを通過するのだろうか。フロアの上面に空気を流してリヤに向かわせるよりも、一部をフロア下に取り込んで路面に挟まれたエリアに空気を流した方が、空力的な効果は高い。


 そのことを見つけ、実践したのがMCL33ということだろうか。MCL33は空力的に大胆な設計が他にも見られるが、フロアの大胆なスリットもそのひとつだ。


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