角居勝彦調教師 ペリエ騎乗から欧州の手綱さばきに着目

3月20日(日)7時0分 NEWSポストセブン

 阪神の内回り、芝3000メートルは年にこのレース1回のみ。1着に天皇賞の優先出走権が与えられるが、それ以上に味わいのあるレースだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、阪神大賞典では3着に終わったものの、ヨーロッパの騎手の手綱さばきに着目するきっかけとなった馬、ポップロックについて語った。


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 なんとも妙味のあるコースです。しかし角居厩舎では2、3着が多くて一度も勝っていない(笑い)。それでも好きなレース。天皇賞の前哨戦だけとはいえない、奥行きがある。


 6つのコーナーがあり、立ち回りの器用さが必要で、上がり勝負が基本。しかし直線が短いために、長距離戦としてはペースが早くなりがちです。勝ち切るには絶対的スタミナが不可欠、むしろ天皇賞よりも長距離適性が問われるところもある。


 名勝負が多いのも特徴でしょうか。古くは1996年のナリタブライアンとマヤノトップガンのマッチレース。2012年のオルフェーヴルの大逸走なども印象的でしたが、昨年もいい競馬でした。


 ゴールドシップに貫禄の3連覇を許したものの、2着のデニムアンドルビーは1馬身4分の1差。道中、長く並走し、先に出られてもぴったりマーク。7番人気ながらしぶとく食い下がりました。


 そんな中で、思い出すのは2008年のポップロックです。スタートから道中を3番手で我慢して、直線のキレを狙った。しかし迫り切れずに3着でした(1着アドマイヤジュピタ、2着アイポッパー)。最後のコーナーまでじっとタメて、一気に突き抜ける。そんな競馬ができる馬です。


 ポップロックは開業当初から預かり、ずっと厩舎を見守ってくれた馬でした。凱旋門賞などGI5勝のエリシオ産駒。強い競馬ができる血統で、いつかはヨーロッパで戦いたい私の思いにすっと寄り添った。それで、デルタブルース、ハットトリックの調教を担当した調教助手に任せました。


 GI勝ちはなかったものの2006年と2007年の目黒記念(2500メートル)を連覇。また2006年のメルボルンカップではデルタブルースの2着に入り、角居厩舎はワン・ツーフィニッシュという快挙を成し遂げることができたのです。


 同年の有馬記念でも2着、2007年のドバイシーマにも出走(6着)して、ジャパンカップも2着。いずれも人気以上の好走で鞍上はO・ペリエ。彼とは妙に“馬が合った”。当たり前かもしれません。父エリシオのGI5勝のうち3勝(凱旋門賞も)はペリエ騎乗なのです。そういう事情かどうか、ポップロックはペリエに機敏に反応しました。


 そこで、私はヨーロッパの騎手の手綱さばきに改めて着目するようになった。彼らは一様に脚が長く、下半身に力がある。その特徴をフルに使って馬の上下動の振幅を制御する。馬に不自由な思いをさせず、膝の動きでスピードをコントロールできる。強い筋力を前提にした巧みな騎乗でこそ、強い馬は動かせる。そう確信できた意味でも、ターニングポイントになった馬です。


 9歳まで日本で走った後はアイルランドで現役を続け、引退後はチェコで種馬になりました。私の仕事は、預かった馬を種馬に返すこと。それが叶った馬でもあります。


●すみい・かつひこ 1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後14年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。競馬の他、引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者競馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。


※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号

NEWSポストセブン

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