バルサで世界一になったサッカー選手。茂怜羅オズは大志を抱く

3月20日(水)5時55分 Sportiva

 3月7日から17日まで、タイで行なわれていたAFCビーチサッカー選手権。今年11月にパラグアイで開催されるワールドカップのアジア予選を兼ねたこの大会で、ビーチサッカー日本代表は見事に優勝を飾り、10大会連続となるワールドカップ出場を決めた。


日本のビーチサッカー界において絶対的な存在の茂怜羅オズ

 アジア制覇の立役者となったのは、茂怜羅(モレイラ)オズだった。キャプテンとしてチームをまとめ、全6試合に出場して9得点をマーク。得点王に輝くとともに、大会MVPにも選出された。ワールドクラスの実力をまざまざと見せつけた茂怜羅が、現在の日本のビーチサッカー界において代えの利かない選手であることを、あらためて証明した大会でもあった。

 茂怜羅は現在、東京ヴェルディのビーチサッカーチームに所属している。肩書は選手であり、監督であり、クラブの代表でもある。

 選手としてプレーするのはもちろん、監督としてチームをまとめ、代表者としてスポンサー探しに奔走する。東京ヴェルディBSが拠点とする立川の練習場も、茂怜羅自らが探し出し、使用できるように交渉したという。

 東京ヴェルディのビーチサッカーチームは、日本で唯一、Jリーグクラブに属するチームである。そもそも、日本のビーチサッカー界はプロリーグが存在せず、各地域でリーグ戦が行なわれている状況だ。地域リーグで上位になったチームが参戦できる「Beach Soccer地域リーグチャンピオンシップ」と、JFAが主催する「全日本ビーチサッカー大会」のふたつが、競技者にとっての大きな目標となる。

 チームごとにレベルに差があり、東京ヴェルディBSのように日本代表選手が所属するチームもあれば、エンジョイスポーツを目的に活動しているチームもある。そのため、大差に終わる試合も少なくないという。そんななか、東京ヴェルディBSは2017年に創設されて以降、無敗を維持する国内最強チームとして君臨している。

 もっとも、競技レベルの向上には、トップリーグの存在が不可欠である。

「やっぱりレベルを上げるには、プロリーグが必要。ビーチサッカー選手になりたいと思っても、現状ではお金が得られない。フットサルのようなプロリーグができれば、やりたいと思う人は増えるはず」

 茂怜羅は現状を憂(うれ)いながら、プロリーグの創設を訴える。

 こうした環境のなかで、茂怜羅が世界ベストプレーヤーのひとりに選ばれ続けているのには、理由がある。それは、ビーチサッカーには「移籍が自由にできる」というルールがあるからだ。

 茂怜羅は東京ヴェルディBSに籍があるものの、シーズン中であっても海外リーグのチームからオファーを受ければ、そのチームに参加できる。たとえば、普段は東京ヴェルディBSで活動し、週末だけロシアのリーグでプレーすることも可能だ。

 茂怜羅は2014年に、東京レキオスBSに所属しながら、バルセロナの選手として世界ビーチサッカー選手権に出場し、見事世界一に輝いている。そして今なお、世界各国のクラブからオファーが届き続けているという。

「世界的にビーチサッカーが盛り上がっているのはブラジルですが、リーグがしっかりと確立しているのはロシアとイタリアですね。ロシアは屋内コートがあって、1年中ビーチサッカーがプレーできる環境があるんですよ。月曜から金曜までロシアでプレーして、土曜に帰国。日曜に試合をして、そのまま成田空港に行って、また翌週にロシアでプレーする、なんて時もありましたよ(笑)」

 もちろん、日本にお金の稼げるリーグがあれば、そんなハードスケジュールをこなす必要はない。しかし、現状ではそうもいかない。

 他の選手はアマチュアで、練習や試合以外の時間はアルバイトなどで生計を立てているが、茂怜羅はプロプレーヤーである。海外に出て、お金を稼ぐ必要があるのだ。そしてお金はもちろん、自身のレベルや価値を高め、日本のビーチサッカーの認知度を高めたいという想いも、そこにはある。

「本気でやって結果を残したいと考えてやってきました。中途半端だったらやらない。だから僕は、世界ベスト5に選ばれる選手になれたんだと思います」

 茂怜羅は自身の仕事に、プライドを示した。世界での活躍が認められた茂怜羅は、国際連盟選出のベスト5(ビーチサッカーは5人制)に2014年から3年連続で選出され、2018年には4度目の受賞も果たしている。

 まさに世界のトッププレーヤーである茂怜羅は、身長190cmと恵まれた体躯を備え、しなやかなボールタッチと対人プレーに強さを見せる。ポジションは守備の要である「フィクソ」。相手の攻撃を封じ込め、攻撃の起点となる役割も担う。

 もっとも、守備職人のイメージにはそぐわない結果を残している。日本代表通算記録は87試合・95得点(2019年3月17日時点)と、1試合当たり1点以上の得点を記録しているのだ。

「ビーチサッカーの魅力は、アクロバティックなプレーが多いことです。オーバーヘッドとか普通にやりますから。あとは、砂がデコボコなので、浮き球でボールをつないだり、展開も速い。点数もたくさん入るスポーツです。自分は守りの選手なので、前に行く機会は少ないですが、ロングシュートが得意なので、遠くから点を獲ることが多いですね」

 今年は、ビーチサッカー界にとって重要な一年となる。11月にパラグアイでワールドカップが開催されるのだ。

 2005年から始まったワールドカップは、当初は毎年開催されていたものの、2009年以降は2年に一度の開催となった。日本はこれまで全9大会に出場し、最高成績は2005年大会の4位。前回の2017年大会は、グループステージ敗退に終わっている。

 わずか3枠のワールドカップ出場権をかけたAFCビーチサッカー選手権で、日本は力強さを見せつけた。

 クウェート、カタール、バーレーンと同組となったグループステージを3戦全勝で突破すると、準々決勝ではアジア最大のライバルと見られていたイランを延長戦の末に撃破。準決勝でレバノンに快勝を収めてワールドカップの出場権を手にすると、決勝ではUAEをPK戦の末に下し、4大会ぶりとなるアジア制覇を実現した。

「日本は今まで全部の本大会に出ていますが、アジアのレベルも高くなっている。イラン、UAE、オマーンといったチームがライバルですね。それでも日本のレベルが一番高いと思いますし、普通にやれば出場権は手にできる。ラモスさんも燃えていますしね(笑)」

 大会前に茂怜羅がこう語っていたように、日本は本来の力を十分に発揮し、見事にアジアの頂点に立ったのだ。

 もっとも、アジア予選はあくまで通過点。茂怜羅の視線は、世界を見据える。

「日本のビーチを盛り上げるためには、ワールドカップで結果を出すことが一番だと思う。そうすれば注目度も高まって、いろいろと変わるはず。簡単ではないけれど、そこを目指してやっていきたい」

 2007年に来日した際には、日本のビーチサッカーのレベルの低さに衝撃を受けた。しかし、あれから12年——、茂怜羅はうれしい変化を感じ取っている。

「何年か前、リーグ戦で対戦した相手のチームは、僕たちに負けた後なのに笑っていた。でも、今はどこのチームもヴェルディを倒そうと、必死になって向かってくる。ビーチサッカーに対する意識が変わってきたのは、うれしいこと。

 だから、ヴェルディは今まで負けたことがないけれど、これからも勝ち続けなければいけない。勝つことで、ビーチサッカーを引っ張っていく。そういう存在であり続けることが、日本のレベルを引き上げると思う」

 損得は二の次。常に全体を見据え、何をすればビーチサッカー界が発展できるかを考えている。その行動や思考は、もはやプレーヤーの枠にはくくれない。

 ブラジルからやってきた、ビーチサッカーの伝道師——。信じた道を突き進む茂怜羅オズに待ち受けるのは、おそらく明るい未来である。


【profile】
茂怜羅(モレイラ)オズ
1986年1月21日生まれ、ブラジル・リオデジャネイロ出身。東京ヴェルディBS所属。6歳からビーチサッカーを始め、地元クラブのヴァスコ・ダ・ガマに入団。2004年から2年連続でブラジル全国大会を制し、2006年にはドイツのウニオン・ブラジルでドイツ全国大会も制覇。2007年に初来日し、2011年に日本国籍を取得する。日本代表としてビーチサッカーW杯に2013年、2015年、2017年出場。世界ベスト5プレーヤーには4度選出されている。ポジション=フィクソ。190cm、90kg。

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