もがく香川「そう甘くはないのでね」。不完全燃焼の62分間、厳しい現実にも前を向く

3月21日(月)10時30分 フットボールチャンネル

「距離感があんまり良くなかった」

 ブンデスリーガ第27節、ドルトムントはアウェイでアウクスブルクと対戦して3-1で勝利を挙げた。香川真司は先発したものの、62分と早い時間帯に交代を命じられた。後半戦以降、戦い方を変えたトーマス・トゥヘル監督を納得させるには至らず、苦しい状況が続いているが、本人はもがきながらも前を向く姿勢を示した。(取材、文:本田千尋)

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 香川真司は、もがいている。2016年3月20日のブンデスリーガ第27節、ボルシア・ドルトムントはFCアウクスブルクとアウェイで戦う。先発の香川は2列目で、主にツー・シャドウを務めた。

 敵将ワインツィアルが「最初の40分はプランを上手く実行した」と手応えを感じたように、5-2-3で引いたアウクスブルクにBVBは手を焼いた。3-1-4-2でボールを回そうとするが、コンパクトな守備に苦しむ。

 香川は「距離感があんまり良くなかった。受けても不利な状況で、パスの回りが良くなかった」と振り返る。

 そして18分、先制を許す。左サイドへの一発のロングボールから、ゴール前に繋がれて、フィンボガソンに押し込まれた。0-1。

 内容も試合展開も悪い中、ドルトムントはじっくりと丹念にボールを回した。チャンスを掴もうとする。

 32分。エリアの手前で香川が、右サイドのピシュチェクに大きく展開する。ピシュチェクのクロスを、ラモスが頭で合わせる。左に外れる。

 41分。ムヒタリヤンの浮き球のパスに、エリア内でロイスがシュートを打つが、GKマニンガーにブロックされる。

 BVBは、根気強くゴールに迫った。

 そして45分。ムヒタリヤン、ロイス、シャヒンの3人で中央を崩す。最後はムヒタリヤンが左足で、繊細に押し込んだ。1-1。

動きを工夫した香川だが…

 ドルトムントの監督トゥヘルは「前半終了前の同点は極めて重要だった」と振り返る。後半に入ると、2位と13位の順位差=地力の差、が現れ始めた。アウクスブルクの体力は低下し、コンパクトな守備の維持が難しくなる。スペースが生まれる。

 後半にトゥヘルは布陣を4-3-1-2に変更した。5バックの中心の3CBに、ムヒタリヤン、香川、ラモスを3トップ気味にぶつける。そして縦に速い選手を投入していく。46分、カストロ。62分、ライトナー。68分、パスラック。力で押し切ろうとする。トゥヘルは「攻撃において我々は危険だったね」と手応えを感じた。

 69分。エリア内でラモスがボールを落とす。間延びしたスペース=カストロが走り込んでゴールを決める。2-1。

 75分。右のCKを、フィンボガソンが中途半端にクリアしたところを、ラモスが頭で押し込む。GKマニンガーが弾いたところを再び、左足のダイレクトで押し込んだ。3-1。

 ドルトムントが、アウクスブルクに逆転で勝利する。

 BVBが90分間をトータルにマネジメントして粘り勝ちする中、香川は、62分にライトナーと途中交代となった。

 対アウクスブルク戦の香川は、2列目のギャップでボールを受けようと、これまでにも増して、動きを工夫した。

「オフの動きの仕方であったり、スペースがない中でボールをどう引き出すのかは、意識しました」

 狭いスペースで小刻みに動く。2列目を左に縦断して、裏に抜けようとする。決して歩みを止めない。オフ・ザ・ボールで積極性を見せた。

後半戦以降の新布陣で結果を残せず

 しかし、前半という相手がフレッシュでプレッシャーの激しい時間帯に、2列目のギャップでボールを受けることは、簡単ではない。

 香川は「前半はなかなかいい形で受ける機会がなかった」と振り返る。

 決してバイタルで受けることばかりにこだわらず、中盤の低い位置に降りて、ボールを「引いて受け」ようともした。香川は「とりあえずボールに触らないと何もならない」と言う。

「もちろんいいポジションで、ギャップで2列目で受けることができて、前を向けたらベストですけど、そう甘くはないのでね。相手もコンパクトに3バックでしたし、中盤も固かったので、それは動きを変えていかなきゃいけないのかなあという気はしましたけど」

 後半戦に入って始まった新たな布陣の中で、結果を残せていない現状を打破しようと、香川は果敢に動いた。

「動きを変えていかなきゃいけない」

 しかし、どうしても“相手の存在”がある。敗北を避けるために、アウクスブルクの守備陣も必死なのだ。

「引いて受けたり、足元で受ける回数は多くなりましたけど、そこでリズムは掴もうと思っていましたけど」

厳しい現実にも歩みを止めない香川

 引いて受ける。足元で受ける。しかし次に繋がらず、なかなかリズムを掴めない。もちろん、それは香川だけの問題ではない。バイエルンのような欧州を主戦場とするチームでも、引いた相手には、どうしても苦しむ。

 手で受け取るように、足でボールをしっかりと掴むことは不可能だ。プレスが激しい狭いエリアで、寸分の狂いもなくトラップし続けることのできる人間はいない。いたとしたら、それはロボットだ。

 また香川が動きを工夫した前半に、チームとしてボールを回したことが、ボディ・ブローのように効いて、アウクスブルクの体力を奪っていったという側面もあるだろう。

 それでも、後半が始まって10分も経たない内での交代では、不完全燃焼である。対アウクスブルク戦で香川は、後半戦に入ってから苦しむ状況を変えようと、必死で動いた。しかし、トゥヘルを納得させるだけのパフォーマンスを残すことは、出来なかった。

 だからと言って、香川は歩みを止めないだろう。現実の難しさは、置かれた本人が誰よりも良く分かる。

「そう甘くはないのでね」

 前半戦のBVBのサッカーは、指揮官の中で、もはや過去のものとなった。トゥヘルもまた、歩みを止めない。

 3歩進んで、2歩下がったとしても、今は、前を向くしかない。

(取材、文:本田千尋)

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