今季のプレミア優勝争いは“浪漫”か“波乱”か。英国内で高まるレスターへの判官贔屓と自滅した強豪への失望

3月22日(火)10時42分 フットボールチャンネル

英国内で飛び交う「浪漫」と「波乱」の言葉

 今季のプレミアリーグ優勝争いは、例年とは違った様相を見せている。31節終了時点で、初の優勝を狙うレスター・シティが首位に立ち、2位にトッテナムが追っている。英国現地では、そんな優勝争いに「浪漫」「波乱」という言葉が飛び交っている。そして、毎年のように優勝争いをしていた強豪クラブの脱落には失望の声も挙がっている。(文:山中忍)

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 首位レスターをトッテナムが追う形で4月を迎える今季プレミアリーグ。まさかの優勝争いに沸く国内では「浪漫」という言葉が飛び交う。レスターにとってのリーグ優勝は、132年前のクラブ創設以来初という夢のまた夢。強豪の1つには数えられるトッテナムにとっても55年ぶりの悲願達成を意味する。

 特にレスターは開幕前の降格候補だ。監督も、昨夏の就任時には早期解任が予想されたクラウディオ・ラニエリ。おまけに、ゴールを重ねてチームの勢いを体言しているジェイミー・ヴァーディーは、4年前までセミプロだった苦労人ときている。

 弱者が逆境を跳ね返すサクセスストーリーは、サッカーファンに限らず人々の心を揺さぶるもの。そこに、「迷監督」と言われた前回プレミア時代も「好人物」としては評判だったラニエリの人柄と、英国人の「判官贔屓」気質が加われば、全国レベルでレスター優勝を心待ちにするムードが高まるのも頷ける。

「波乱」という言葉も頻繁に聞かれる。通常、終盤戦で優勝の行方を左右する番狂わせを演じるクラブが現れることはある。過去2年連続で、リバプールとマンチェスター・シティからポイントと優勝の望みを奪ったクリスタルパレスのように。

不甲斐ない主力クラブ。今季のプレミアは「過去最低」?

 だが今季は、アーセナルがウェスト・ハムとのホームゲームで完敗(0-2)した開幕節から番狂わせの連続。チェルシー、シティ、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドの昨季トップ4から1勝も奪えずに3月を終えるクラブは、ボトム2のアストンビラとニューカッスル、そして昇格組のワトフォードしかいない。

 ただし、弱肉強食が成り立たない理由は中小クラブの戦力アップだけではない。そこで、今やレスターとトッテナムの「二頭立て」とさえ言われる今季のタイトルレースには「失態」という言葉も付きまとう。

 連覇が有力視されたチェルシー、王座奪回を期していたシティ、FAカップ連覇で弾みがついていたアーセナル、そして優勝候補への復帰を狙っていたユナイテッドは、30節終了時点で合わせて33敗という不甲斐なさだ。

 現実的な唯一の対抗馬としてレースを盛り上げているトッテナムの勝ち点は31試合で61ポイント。昨季ならば4位、一昨季は5位がやっとの数字だ。レスターの66ポイントにしても、例年なら逃げ切りが予想されるような数字ではあり得ない。

『デイリー・メール』紙が今季プレミアを「過去最低」と評したのは、トップ6にウェスト・ハムとクリスタルパレスが顔を揃えて前半戦を終えた昨年末。当時14位に低迷していたチェルシーは、その後も優勝争いには絡めないまま。主力がほぼ一様に不振だった原因の特定が難しいという事情がなければ、「最低」を招いた「主犯」として咎められているところだ。

 この2ヶ月間で目標がトップ4争いに下方修正されたシティの言い訳は、ケビン・デ・ブルイネの戦線離脱と監督人事の影響といったところか。逆に監督のマヌエル・ペジェグリーニは、2月頭に「今季限り」が公表されていなければ、翌週からレスター戦(1-3)、トッテナム戦(1-2)、リバプール戦(0-3)と続いた3連敗時に、意識が攻撃に偏りがちな采配が「限界」の二文字と共に大々的に批判されていたに違いない。

自滅した常連組。アーセナルは優勝争いから脱落

 対照的にユナイテッドでは、ルイス・ファン・ハール監督が「報道によれば私はとっくに解雇されている」と嫌味を言うほどメディアに叩かれてきた。ファン・ハール体制は就任2年目にして「失敗」とみなされている。

 トップ6圏内を維持していても優勝争いには参戦できず、試合内容は結果以上に不十分。ポール・スコールズやリオ・ファーディナンドといった元ユナイテッドの解説者が、中継スタジオで「ボロボロ」、「バラバラ」などと古巣のパフォーマンスを嘆く様子は、街なかのパブで敗戦後に不満をぶちまけるファンの姿と変わらない。

 だが、最もファンをがっかりさせたのはアーセナルだろう。リーグ順位は30試合を消化して3位だが首位との差は11ポイント。アーセン・ヴェンゲル監督は3月19日のエバートン戦(2-0)後に「優勝争いから脱落したとは思っていない」と語っているが、同日にロンドンの『イブニング・スタンダード』紙が行ったアンケートでは回答者の6割強に「脱落」と理解されている。

 他のトップ4常連の躓きに乗じていれば、フィールド選手を補強せずに臨んだ今季には、育成重視のベンゲルならではと言える「優勝美談」が誕生するはずだった。黒星発進から立ち直ったチームは、得失点差ながら首位で年を越してもいた。ところが、年明け後は3ヶ月間で4勝のみ。それでもヴェンゲル更迭論は行き過ぎと思えるが、ファンの失望は当然。2004年以来となるプレミア優勝を実現する絶好のシーズンを単なるトップ4で終えようとしているのだ。

 いみじくも「今季は誰も優勝したがっていない」と言っていたのは、自軍が勝ち点ではアーセナルと並んで前半戦を終えた当時のラニエリ。常連が無様に自滅した優勝争いを美しく見せてくれているレスターの指揮官は、今季タイトルレース評も言い得て妙だ。

(文:山中忍)

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