レアルの「BBC」は本当に有効か? 問題山積も最終的に勝利引き寄せるDNA【西部の目】

3月22日(水)11時32分 フットボールチャンネル

「BBC問題」に燃料投下

 3月18日、リーガエスパニョーラ第28節、アスレティック・ビルバオ対レアル・マドリーの一戦がスペイン・バスク地方で開催された。まさしく質実剛健のチームを相手に苦戦を強いられたエル・ブランコだったが、さまざまな問題が浮上するなかでも最終的に勝利を収めている。レアルのレアルたる所以を見せつける試合になったと言えそうだ。(文:西部謙司)

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 サンマメス・バリアはどのアウェイチームにとっても難しい場所だ。

 アスレティック・ビルバオはスペインの古豪であり、「バスク代表チーム」でもある。以前、ビルバオを訪れたとき、地元のテレビ局で草刈り競技を放送していた。広大な河原の草を大きな鎌を振り回してざくざくと刈り取り、それをまとめて重量を量っていくという団体競技だった。

 ほかにもよくわからない力自慢競技がたくさんある。質実剛健、バスク人のみで構成されたビルバオは戦闘力と団結力が看板である。

 レアル・マドリーは真逆の存在といっていい。スター揃いの多国籍軍、これでもかの豪華、どこまでもリッチ。草刈りをするロナウドやクロースなんて想像もできない。

 その才能と富のクラブの象徴がベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ(ロナウド)のBBCなのだが、このところ「BBCは本当に有効か?」という議論が起こっている。そして、ビルバオとの一戦は、炎上中のBBC問題に油を注ぐような試合になった。

スーパースターは守備をしなくてもいいのか?

 立ち上がりからビルバオが攻める。ビルドアップで広げて、隙間に縦パスを入れ、サイドへ回し、クロスボールを入れる。教科書のような攻撃、そして守備への切り替えも早く、さぼる者などいない。勤勉はバスクの美徳だ。

 こじつけるわけではないが、これもBBC問題の一端だろう。FWがしっかり守れない。ロナウドは上下動の激しいサイドを離脱し、ベンゼマと入れ替わる。実はBBCが全員守れないわけではない。ベンゼマは常にではないが守備はする。けっこうボールも奪える。ベイルはもともとサイドバックだった。

 全然守れないのはロナウドだけで、その点ではBBC問題ではなくてC問題なのだ。ただ、「年間60点とるロナウド以外は全員ハードワークしなければならない」が選手間合意だそうで、つまりCの守備は誰も期待していない。

 10分ほどビルバオの攻勢に耐えたレアルが徐々に反撃開始。先制点は25分、ロナウドが不揃いだったビルバオのディフェンスラインの裏へ走ってカゼミーロのパスを呼び込み、そのまま左サイドから絶妙のアーリークロス、ベンゼマが決めた。やはりロナウド、さすがロナウド。ここで懸案のC問題はひとまず沈静をみる。

4-4-2に変えた途端の失点

 後半立ち上がりにアドゥリスのヘディングシュートが炸裂、DFがクリアしたがビルバオの圧力が強くなる。右サイドのウィリアムスのスピードを抑えられない。

 えっ、この人もバスク人? と思われるのも当たり前、父親ガーナ、母親リベリア、完全な黒人なのだが、生まれはバスク州。血統ではなくて出生地主義なので、イニャキ・ウィリアムスは完全なるバスク人である。しかし長身柔軟、類い希な俊足は、バスクの山岳ではなく明らかにアフリカの大地が生んだ才だ。バスク代表にとって得難い逸材といえる。

 61分にジダン監督が動く。モドリッチに代えてルーカス・バスケス。フォーメーションは4-4-2へ。ベイルを左サイドに下げて、ロナウドとベンゼマをトップに残す。いつもの運動量増加&バランス再構築策だが、ウィリアムスの脅威にマルセロにベイルを足して対抗しようという意図もあっただろう。

 これでビルバオの右サイドを鎮火して勝利すれば、「やっぱりBBCより4-4-2じゃないの?」と議論が一気に傾くところだが、なぜかビルバオの右サイドはいっそう燃えさかってしまう。

 最初のウィリアムスの決定機はGKケイラー・ナバスのファインプレーでなかったことにできたものの、2分後にはウィリアムスのハイクロスをラウール・ガルシアに折り返されてアドゥリスがゴールした。ウィリアムス無双、ラウール・ガルシア&アドゥリスの制空権、ビルバオのいいところが全部出た。狙いどおりだ。

何だかわからないが勝つ。これぞレアルのDNA

 しかし、レアルはレアル。クロースの高精度CKにロナウドとベイルがニアに飛び込んでロナウドが頭でスラし、ゴール前至近距離からカゼミーロがプッシュして再び勝ち越す。いざとなればセットプレーから伝家の宝刀、勝てば官軍、いつもの白い巨人である。

 ここからは攻め合い。75分から続くビルバオの包囲網とハイクロスの雨をしのぎ、ジダン監督はイスコをフィールドに送る。これもいつもの手順だが、引っ込めたのがロナウドというところが違っていた。そもそも4-4-2はロナウドを前線に残すための善後策じゃなかったのか?

 そしてラスト5分にベンゼマ→モラタ。交代で引っ込んだモドリッチ、ロナウド、ベンゼマが並ぶベンチの絵図がある意味壮観だ。

 レアルは難しい試合を2-1でモノにした。BBCが並んだ時間帯は相変わらず疑問符が付き、懐疑派推奨の4-4-2に変えたら途端に失点、元も子もないロナウド交代のオマケまでついたが最終的には勝っている。

 何だかわからないが勝つ。これぞレアル・マドリーのDNAであり、BBC問題などそれに比べれば物の数ではないということかもしれない。

(文:西部謙司)

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