問われる金本監督の手腕 遊撃・鳥谷の起用法が阪神の浮沈のカギに?

3月23日(水)9時51分 フルカウント

目指すべきは「ディフェンスの強化」と「現状維持以上の得点力」

 阪神にFAで入団した選手としては最大の成功を手にし、引退後も絶大な人気を誇ってきた金本知憲が今シーズンより指揮をとる。オープン戦は12球団トップの成績で戦い終え、ここ数年優勝に手が届かず悔しい思いをしてきたファンの期待もいよいよ高まっていることだろう。

 今オフの阪神の編成上の動きとしては、まずクローザーの呉昇桓と、主軸を打った外野手マット・マートンが退団した。一方で、2012年に阪神を離れ、MLBと四国アイランドリーグplusでプレーしてきた藤川球児が4年ぶりに復帰。また中日からベテラン左腕の高橋聡文を獲得しブルペンを補強。野手1名、投手2名の新外国人選手獲得も行った。

 キャンプでは、江越大賀、横田慎太郎、陽川尚将、高山俊ら若手野手が存在感を見せ、外国人選手とベテランに偏り気味だったレギュラーの座に挑む段階に到達した。金本新監督が4人のような若手をラインナップにいかに組み込み戦力にしていくかは、真っ先に注目が集まる判断だろう。今回はデータを見極め、より具体的な判断点について探っていきたい。

 昨シーズンの阪神は、得点はセ・リーグで最も少なく、失点は2番目に多かった。攻守ともに強みになっていなかったことになる。特に問題視すべきだったのはディフェンス面だ。「与四死球、奪三振、被本塁打がどの程度あったか」「フライやライナーなど、長打になりやすい危険な打球をどれだけ打たれたか」という、投手の責任範囲であることが明確な数字から投球の出来を評価する値tRA(True Runs Average)は悪く、また打球の処理状況などから野手の守備力を得点の形で表すUZR(Ultimate Zone Rating)も平均以下を意味するマイナスの値だった。

 攻撃面、得点の少なさも目を引くが、得点を生み出すために必要な安打や長打、四球などはある程度出ており(※1)、投球や守備に比べれば傷は浅いといえる。とはいっても他球団に対する強みといえるレベルにはなく、現状維持以上が求められる。

 整理すると、ディフェンスの強化を図りながら、現状維持以上の得点力をつくりだすことが、阪神の目指すべき課題といえる。

「鳥谷の攻撃力の高さ」が阪神を悩ませる

 しかし、昨シーズンの阪神の主力選手は、打力(得点力)はあるが、守備力に欠けるアンバランスなタイプが多く、単純に守備力の高い選手に置き換えることで課題解消を図るのが難しい。

 昨シーズンの阪神の各ポジションの得点力と守備力のバランスを見ると、まずマートンが守った左翼が両面でマイナスとなっている。弱みとなっており、放出は妥当な判断だったといえる。

 また、鳥谷敬が守った遊撃でバランスが崩れている。UZRでの評価では、鳥谷の守備力は2014、15年と2年続けて低下。15年は遊撃手の平均レベルを大きく下回っており(-20.4)、加齢もしくは故障の影響がうかがえる。一方で攻撃面、得点を生み出す力では遊撃手の平均レベルを大きく上回っており(27.3)、貢献量で出入りの激しい選手だった。大和、江越大賀らが守った中堅も逆のパターンでバランスが崩れており、攻撃で-21.6、守備で14.4となっていた。

 ディフェンスの強化を図りながら、現状維持以上の得点力をつくりだすためには、こうしたポジションでの数字の改善が必要だ。しかし「鳥谷よりも守備力に優れ、同じ得点力を備えている遊撃手」「大和や江越と同等かそれ以上の守備力を備え、得点力を備えた外野手」への入れ替えは簡単にできそうもない。現有戦力のやりくりで改善するしかないだろう。

 鳥谷については、守備でのマイナスを少しでも小さくするためのコンディション管理が鍵を握る。ただし、休ませすぎれば、代わりに出る遊撃手が相当頑張らない限り攻撃力は落ちる。守備のマイナスを小さくしても、攻撃のプラスも小さくなり効果を生まない可能性がある。

 このマネジメントは金本監督の手腕が問われ、また阪神の浮沈にも関わる重要な部分といえる。ただ金本監督は鳥谷が継続している連続試合出場記録、連続フルイニング出場記録の延長を求める発言をしており、この2年と同様、遊撃での常時起用が予想される。

 これが鳥谷の意欲を高めようという判断によるものか、鳥谷の攻撃力の替えは効かないという判断によるものかは量りかねるが、転換が必要な状況が訪れた場合、柔軟な対応ができるだろうか。

キーマンは大和? 中堅、左翼、二塁がやりくりのポイント

 マートンが去り空いた左翼、また中堅は、打力に定評のある横田、高山と守備力の高い大和、江越の併用でまかなっていくと見られる。この4人で、マートンを組み入れた場合よりも攻守で良い数字を残す起用を図っていく必要がある。これもなかなか難しそうだ。

 最も実績のある大和の高い守備力は魅力的だが、打率.225、出塁率.272、長打率.245だった昨シーズンレベルの打力では、得点力の維持に支障をきたす。もう少し良い数字を残していた2013、14年レベルの成績に回復すれば、軸になれるかもしれない。

 上本博紀らが務めた二塁には西岡剛が復帰する。オープン戦でも好調を維持しており、開幕戦でスターティングメンバーに名を連ねる可能性もありそうだ。しかし、西岡は7月に32歳を迎えることもあり、広い守備範囲を求められる二塁で守備の数字を大きく伸ばすのは難しいとみられる。

 昨シーズン苦しんだ右肘のケガも、回復状況によっては間接的に影響するだろう。併用されそうな上本の守備力も高くはなく、二塁での守備力の上積みは期待しにくそうだ。守備力で昨シーズン以下に陥る可能性もある、注視しないといけないポジションだ。

 鳥谷の遊撃での常時起用、西岡の二塁復帰などに目を向けると、金本監督は得点力アップを志向しているようにも映る。昨シーズンより守備力を高められそうなのは、若手野手が起用されそうな左翼ぐらいで、これだけで昨シーズン膨らんだ失点を減らすのは厳しい。

 そうなってくると、守備力のある選手が守るイニングを各ポジションでまんべんなくつくり、少しずつ守備でのマイナスを削り取り、失点を減らしていくというのが現実的な道となる。

 そこでキーマンとなるのが大和だ。どこかのポジションでレギュラーを張るには打力で不安があるが、遊撃、中堅、二塁という守備力を要するポジションを、平均以上のレベルで守るポテンシャルを備えている。大和を鳥谷や西岡らのバックアップとしてうまく起用できれば、両選手のコンディションを安定させ守備力低下を抑えながら、両選手の欠場時は大和本人の守備力でチームに貢献することも可能になる。このマネジメントに成功すれば、得点力を維持したまま守備力のアップにつなげることができるだろう。

※1 阪神の総得点は少ないが、これは得点の入りにくい球場を本拠地としていることや、巡り合わせの偏り(安打や四球などが出た割に得点があまり入らなかった)などが影響していると見られる。

DELTA●文 text by DELTA

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1〜3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を2015年3月27日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』(http://1point02.jp/)も2016年にオープン。

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