「防ぎようのない選手」王貞治球団会長が語ったイチロー、WBCでの秘話も…

3月23日(土)7時40分 フルカウント

「誰もがねスタートがあれば、終わりもあるということなんだけど」

 21日のアスレチックス戦後に現役引退を表明したマリナーズのイチロー外野手。2006年の第1回WBCで監督として日本代表を率い、このイチローとともに初代の世界一に輝いたソフトバンクの王貞治球団会長が、イチローの引退を惜しんだ。22日、ファーム本拠地のタマホームスタジアム筑後で報道陣に対応し、イチローへの思いやエピソードを語った。

 王貞治球団会長の一問一答は以下の通り。

——引退発表を受けて。
やっぱり来るべき日が来ちゃったのかなというね、誰もがねスタートがあれば、終わりもあるということなんだけど、彼にはもっともっとその日が来るとしても先だろうと思っていた。本当に残念だね」

——いつ知られましたか?
「なんとなく流れを見ているとそういう日が近いのかなというのは感じはありましたよね。第1試合で引っ込んだときなんかも交代した選手がスッと入るという雰囲気じゃなかった。そういうのがチーム内には伝わっていたのかなと思いましたね」

——東京ドームに行かれていましたが、イチロー選手本人と交わされた言葉は?
「とにかく日本で全力でプレーするということだけは言ってました。ただ、今回で辞めるということは言っていませんでした」

——会見は?
「見ましたけどね、やっぱりあれだけ日米で凄い成績を出した選手だから、そんなに悩みなんてなかったのかなと思ったら、大変な悩みでね。普通のレベルの選手が感じないというか、そういうところでの悩みかな。そこに立ったことのある人じゃなきゃ分からない悩みというのがね、それがあったから彼はチャレンジしてここまで来れたんじゃないかな」

——印象に残っているプレーがあれば。
「僕はホークスの監督になって何年かな、やったけど、とにかく防ぎようのない選手だったね。あれだけ広角に、ピッチャーが一生懸命速い球を投げたり、緩い球を投げたりするんだけど、不思議と打球が地面に落ちない、そんな馬鹿みたいに高くなっちゃうんじゃないけど、低く飛んでいくので。ゴロになったらアウトになるケースもあるんですけどね。それと、これは生まれ持った彼の運かもしれないけど、飛ぶコースがいいんだよね。不思議と人のいないところに飛んでいくというかね。神さまじゃなきゃ分からないことだけどね」

——第1回WBCでは共に優勝した
「とにかくあの時は第1回目だったので、なかなか選手が集まらなかったんですよ。12球団の足並みも揃ってなかったしね。だけど、彼が1番最初にアメリカから連絡をくれて『出ます!』ということを言ってくれたので大変心強く感じましたね。アメリカで戦うわけですから、アメリカでの野球を身を以て知っている人が先頭で参加すると言ってくれて、あの間の3週間くらいありましたかね、その間ずいぶんアメリカの野球について話してくれたことで、日本の選手たちはものすごくリラックスというか、みんなどうしても過大評価してしまうでしょう?それをそうじゃないんだ、彼も人間なんだ、むしろ我々のほうが優れている部分もあるんだと彼が常々話してくれて、一緒にやった選手はその言葉が力強かったと思いますよ」

「1人の人生が多くの人に影響を与えるということはないんで、これからもずっと語り継がれていくでしょう」

——連絡は?
「昨日見ていて、一昨日ちょっとお会いして話をしましたけど。昨日はちょっと用事があって東京にはいなかったんでテレビでしか見れませんでした。まあ、小さなことだけど、ヒット1本打って欲しかったね。彼も一生懸命応援してくれているファンの前で打ちたかったんじゃないかなと思います。連絡はしてません。しばらくは放っておいてあげましょうよ。そのうち、どうせアメリカに帰ってアメリカで生活するんでしょうから、しばらくしたらメールでやり取りしますよ、また」

——どんな言葉を
「今回のフィナーレを見ても、いかに彼の野球人生が多くの人に感動を与えたか。これはもう1人の人間の人生がそれだけ多くの人に影響を与えるということはないんで、これからもずっと語り継がれていくでしょうね」

——これからどう野球界に貢献を?
「野球界からまるっきり離れるということはないと思うんですね。昨日もちょっと話していたけど、子供達と野球をやるということに興味を持っているようでしたからね。だから彼のいろいろ経験したこと、持っている考え方とか技術とかを少しでも若い人たちに分かりやすく伝えていってもらいたいなと思います」

——会見はかなり遅い時間でしたが
「1時過ぎていたよね。でも、やっぱりあれだけの選手が引退するにあたって色々話す場面ていうのは見逃したくなかったからね」

——彼らしい会見だった。
「彼の感性での言葉というので、自分なりに苦悩があって、あのレベルでの苦悩があるわけじゃない。3本に1本打ちゃいいっていうレベルじゃないからね。それはそれなりの苦悩があっただろうし、アメリカ行ってからも、最初は行ってもどうしても受け入れてもらえないんだよね。でも彼が言っていたように、自分が結果、形で示すことによって受け入れられ、逆に敬意を持って接してもらえるようになったと言っていたけど、結局自分で道を切り開かないとそういう風にならないということだよね。今回の彼のことというのは、新たなチャレンジをしていく人にとってものすごいプラス、野球のことだけじゃなくて前に出るということは大変なことなんだと、でも前に出なきゃ味わえないことだし、右足を一歩出したら、次は左足を出すということを勇気を持ってやれ、というようなことを言葉の中に含んでいた。野球選手だけじゃない、特に多くの若い人たちにいい言葉だったと思う」

「やっぱりとにかくどんなところでも手を抜かない」

—イチロー選手は王会長とのWBCは宝物だと言っている。
「彼はやっぱりとにかくどんなところでも手を抜かない。手を抜かないというのは準備をしっかりして、WBCの時も彼は1番ストレッチだとかキャッチボールとかバッティングとか、1つ1つ全力で丁寧で。一昨日もライトから放ったけど、本当にラインが変わらないしね、スローイングの。だから、目指しているというか、意識している部分というのは、日本の野球選手もそこから学び取っていいものがたくさんあるよね。彼は彼だと、つい今時は言いがちだけど、少しでも彼に近づく、ヒット数はともかく、それくらいの気持ちで彼と同じような気持ちでやろうという形で受け入れるいいお手本だと思うんだよね」

—孤独感について
「確かに彼が話したようなことをチームメートに話したところでちょっと理解できない部分はどうしてもあると思うんだよね。彼の苦悩と若い選手たちの苦悩は違うからね。そういうのは、10歳の子には10歳の子なりの悩みがある。20歳は20歳でも。そういう言い方のほうが分かりやすいかもしれないけど、野球の技術の世界のレベルにも、2割5分しか打てない人、3割打つ人、首位打を争うような人、その人なりの悩みがある。だから彼はそう言った意味ではっきり言って、自分の悩みを話しても理解してもらえない、期待したような返事をしてもらえるという人がいなかったと思う。だから孤独で1人でやるしかないということだったんじゃないかな」

—WBCで配慮された部分は?
「彼はアメリカに家があるから、家から通わせてくれと言ったからいいよと。そのかわり我々のバスがグラウンドに着くとガンガン打っていたり、ストレッチしたり、走っていたりね。普通はあれくらいの選手なら、みんなよりもゆっくりやろうというところがあるけど、彼には全然そういうのが無くてね。そう言った意味でも、打つ打たない以外でも、一緒に参加した選手たちは大きな影響を受けたと思うね。そういうときに一緒にやった選手に聞いてみないと分からないけど、それまではホークスとオリックスというので見ていただけだったんだけどね、触れてみると深さ、大きさは感じましたね」

—監督は無理だ、と言っていましたが。
「人望がないとか言ってたね。人望とか何かは生まれるものだから。でも、彼は色々な監督の苦悩も見ているからね。今の時点ではなれないということだと思う。明日からトレーニングするって言ってたよね。まだ選手の気持ちなんだと思う」

—イチロー監督への期待は?
「見たいけど、彼にそこまで新たな悩みと戦わせることはさせたくない。少しは解放させてあげようよ」(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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