【識者の眼】長友に求められる“世界基準”。示すべき“デュエル”の本質、伝えるべきハリルの意図

3月24日(木)10時38分 フットボールチャンネル

「クリーンなだけでは怖さが出ない」

 24日、日本代表はアフガニスタン代表と戦う。ハリルホジッチ監督はさまざまなメッセージを発信しているが、長年代表でプレーする長友佑都にはそれを他選手に伝える義務がある。長友は何をどう伝えるべきなのか? 世界の第一線で戦う男だからこそできることがある。(取材・文:河治良幸)

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「正直、ファウルが必要な場面もある。あとは相手とのメンタル的な駆け引きで開始10分の間にわざと“オレがいるんだぞ”というところを、削るまではいかないんですけど、そういう駆け引きというのはセリエAでもやっている」

 公式練習の後、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が選手に繰り返し要求している“デュエル”で強さを発揮しながら、ファウルをせずに攻撃を止める、ボールを奪い切る守備について質問すると、サイドバック(SB)の長友佑都は「それがメチャメチャ難しくて」と苦笑しながら答えた。

「悪い位置でのファウルや(相手の)FKというのは必要ないですけど、ぜんぜん危険ではないところでのファウル、あるいは精神的な駆け引きというのは大事になるんじゃないかなと思っていて。すべてがクリーンなプレーだけでは怖さも出ないし、球際の激しさも出ない」

 その話を聞いて鮮明に浮かんだのが昨年9月8日に中立地であるイラン・テヘランで行われたアフガニスタン戦だった。結果的に6-0の大勝を飾った試合だが、1つのプレーがその後の布石となった。前半3分に相手CBのロングボールを右ウィングのズバイル・アミリが頭で裏に落とし、FWのファイサル・シャイエステーが走り込んだ。

 その場面は森重真人がいち早くカバーして事なきを得たが、その場でジャンプした長友はズバイル・アミリに完全に競り負けていた。その1分後、日本のサイドチェンジがオーバーして左のタッチラインを割ると、アフガニスタンの右SBムスタファ・ハディドが自陣から前方にロングスローを投げ込んできた。

相手との対応のなかでレフェリーの基準もはかる

 再びズバイル・アミリと長友の空中戦になったが、今度は長友が助走を付けて先に跳び上がり、相手の背中に乗る様な体勢でボールを跳ね返した。判定は長友のファウルでアフガニスタンにFKが与えられたが、その後の勝負で長友が優勢を保ったことで、日本は左前方の原口元気を起点に積極的な攻撃を繰り出し、香川真司の先制点を皮切りにゴールを量産した。

「あのプレーで審判のジャッジ、何ていうんだろう……このぐらいだったらファウルを取るというのが分かった。あんまり無理に飛び込まずに、キープされても落ち着いて対応すれば前を向いた時に体を入れればというのは思いました」

 試合後にそう語っていた長友。普通に競るディフェンス、強く当たるプレー、その後という風に対応しながら対面する相手に対して存在感を示し、同時にレフェリーの基準もはかる。そうした戦い方は欧州の中でも守備の伝統が色濃いイタリアで経験を積み重ねてきた長友の真骨頂だが、多かれ少なかれ代表クラスのDFなら持っているべき意識だ。

 週末のセリエAで、リーグを代表する快速ウィンガーであるエジプト代表MFモハメド・サラー(ASローマ)と壮絶なマッチアップを繰り広げた長友は、「あれだけ速い選手と1対1ができるというのは僕自身すごく嬉しい。相手が速ければ速いほど、うまければうまいほど燃えるタイプ」と目を輝かせながら振り返るが、日本代表として戦うアジア予選はまた違った難しさもある。

「逆に相手が引いて来るから、やりづらいというのは正直ありますけど、僕個人としてはSBの選手はなるべく高い位置を取って、上がるタイミングもそうですけど、高い位置からどんどん攻撃に参加していかないといけないと思います」

指示に拘泥しすぎるのも良くない

 左右のSBが高い位置から攻撃に参加するためには、高い位置からボールを奪いに行く守備が機能するかどうかも生命線となる。SBにはその流れに連動しながらプレスのサポートに行くところ、下がってスペースを埋めるところの的確な判断が求められるが、その中で同サイドのアタッカーに対して、攻守に渡りどう優位に進めるかは個の経験がものを言う部分でもあるだろう。

“デュエル”(1対1や球際の勝負における激しさ)で強さを発揮し、かつファウルなく相手を止め、ボールを奪うプレーをハリルホジッチ監督は選手に求めるが、実際の試合では時間帯や状況に応じた相手との駆け引きも絡んでくる。

「そこは経験。自分で判断していかなければいけない」と語る長友は指揮官から国内組や若手にもっとアドバイスしていくことを求められている。また、その必要性を認めながらも、プレーで見せる大事さを強調した。

「口で言うのは簡単なので、まずはプレーで見せられる選手になりたいなというのは正直ありますね。プレーで見せてから、何かアドバイスできることがあればアドバイスしたい」

 ハリルホジッチ監督のメッセージは強く選手に響いており、その意識は着実に浸透してきている。一方で日本のチームでは監督のメッセージが強ければ強いほど、そこにこだわったプレーが判断の硬直を生みやすい。チームのベースとなるコンセプトを全体で共有しながら、より試合の流れや状況に応じた判断をしていけるか。

「そこは選手1人ひとりが責任を持って、いい選択を出来るようにしていかなければ成長はできない。日本人のいいところでもあり、悪いところでもあると思うんですよ。すべて言っていることをやるのは。ただ、あまり正直すぎても良くないんじゃないかと思う」

 長友が二次予選の残り2試合でどう判断しながら無失点、大量得点に貢献するかは注目してほしいポイントだが、チーム全体が少しでも駆け引きや状況判断の意識と能力を高めることが最終予選、その先に向けた成長につながるはず。長友のプレーはその1つの指標にもなり得るものだ。

(取材・文:河治良幸)

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