今野泰幸がもたらした新たなオプション。「出来すぎ」の34歳MFが見せた攻守のダイナミズム

3月24日(金)11時34分 フットボールチャンネル

ハリルJ、敵地でUAEを一蹴。34歳の今野が抜群の存在感

 日本代表は23日、ロシアワールドカップ・アジア最終予選でUAEと対戦し、2-0の勝利を収めた。この試合で存在感を放っていたのは、2年ぶりの代表復帰を果たした今野泰幸だ。試合を決定付ける2点目を決めるだけではなく、攻守両面で貢献を見せていた。特にインサイドハーフでコンビを組んだ香川真司を活性化させる働きも見せ、これまでのハリルジャパンとは違う攻撃のリズムを生んでいた。34歳のベテラン起用は、香川再生の光明となるかもしれない。(取材・文:元川悦子【アル・アイン】)

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 6大会連続ワールドカップ出場を果たすべく、敵地UAEでのリベンジが求められた23日の日本代表。しかし大一番を前に長谷部誠(フランクフルト)、高萩洋次郎(FC東京)の両ボランチが離脱。中盤が手薄になってしまった。UAEには2016年アジア年間最優秀選手に輝いたオマル・アブドゥルラフマンという天才司令塔がおり、彼を確実に封じなければならなかった。

 そんな中、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がどんな対策を講じるかが注目されたが、ふたを開けてみると、今回の日本代表の基本布陣は4-3-3。中盤のアンカーに山口蛍(C大阪)を据え、右インサイドハーフに香川真司(ドルトムント)、左インサイドハーフに今野泰幸(G大阪)を並べるという大胆なトライに打って出た。

 2年ぶりに代表復帰した今野も「オマルの管理っていうのは相当口酸っぱく言われたし、試合前からミーティングとかも沢山した。でも相当技術が高いんで、入る前はすごい不安でした。ポジションもガンバでやってるのとはやっぱり違う。全然一緒にプレーしてない人といきなりやるわけだから連携もくそもないし、ハリルのサッカーも体感していない。すごい難しさはありました」とピリピリするような緊張感の中、試合に挑んだという。

 それでも今野と山口、左FWの原口元気(ヘルタ)、左SBの長友佑都(インテル)、左DFの森重真人(FC東京)の5人を中心としたオマル潰しはうまく機能した。彼がボールを持つと2〜3人がチェックに行って仕事らしい仕事をさせない。昨年9月の最終予選初戦で2得点を挙げて日本を奈落の底に突き落としたアハメド・ハリルが負傷欠場し、日本のDF裏に飛び込んでくるのがアリ・マブフート1人だったのも幸いし、相手に主導権を与えなかった。

 そんな状況下の前半14分、新天地ヘントで7戦5発とゴールラッシュを見せている久保裕也が凄まじいゴールへの嗅覚を見せて先制点をゲット。「最初に久保が点を取ってくれたんで、僕も安心しましたね。ホッとしました」と今野も語ったが、それはチーム全体の共通認識だったに違いない。

香川と抜群の関係性を見せた今野。攻撃のリズムもたらす

 その後、タイトマークに嫌気がさしたオマルが左サイドや中央へ移動。代わって右に入ったイスマイール・アルハマディに起点を作られるようになる。一度は決定機も作られたが、高度な経験値を買われて10ヶ月ぶりの代表戦ピッチに送り出された川島永嗣(メス)の好セーブを披露。ゴールを割らせない。

 苦しい状況の下でも今野は攻撃の姿勢を忘れず、香川真司(ドルトムント)とともに高い位置を取りながら厚みを加えていく。2人が確実にボールをキープして攻めのメリハリをつけるシーンも見られ、これまで単調になりがちだったハリルジャパンの攻撃とは明らかにリズムが違っていた。

「速い攻撃だけじゃ難しいというのは試合前から真司と話していたこと。自分たちのリズムになった時にはしっかりボールをつなぎながら、落ち着かせることも大事だと。それを真司とお互いにできたかなと思います」と今野は前向きに言う。

 香川の方は「自分たちで攻める時間を作らないといけない」とやや辛い評価をしていたが、先制点をお膳立てした酒井宏樹(マルセイユ)へのタテパスに象徴される通り、起点となるボール出しは十分できていた。

 今野との関係性はある意味、昨季前半戦のドルトムントでイルカイ・ギュンドアン(現マンチェスター・シティ)と組んだインサイドハーフコンビを彷彿させるものがあった。

 これまでの彼は「お膳立ても得点も全て自分がやらなければならない」と力みがちだったが、今回は今野と組み立ての仕事を共有し、久保、原口、大迫勇也(ケルン)の前線3枚にフィニッシュを任せるような割り切りも見られた。

 クラブと代表の役割が近くなれば、2つのチームを掛け持ちしても戸惑わなくて済む。もちろん相手との関係もあるが、今野の代表復帰、4-3-3へのシフトは香川にとっても光明になりそうだ。

守備の貢献、香川の活性化、3トップとの連携。今野起用は新たなオプションに

 後半に入ると今野が前線に上がる回数は一段と増え、後半6分の追加点が生まれる。吉田麻也(サウサンプトン)のロングフィードを大迫が競って落とし、久保が右サイドで駆け引きして折り返したところにベテランMFが飛び込んだのだ。

「得点シーンは全く練習ではやってない。チャンスだと思ってかぎ分けた」と本人は天性の勘が働いたことを明かしたが、彼が前線3枚と絡んで攻めに出たシーンは随所に見られた。大迫は2014年ブラジルワールドカップに参戦した仲間だが、久保、原口とはプレー経験が浅い。それでも違和感なく彼らとも連動できていた。そこも前向きな要素と言っていい。

 結果的に日本は因縁の相手を敵地で2-0と一蹴。最終予選グループBで2位の座を死守することができた。ハリルホジッチ監督の今野抜擢と4-3-3システム採用は見事に的中。当初、「長谷部の代役」として投入された男は守備面でオマルやマブフートらを封じて失点ゼロで乗り切る原動力となり、攻撃面でも香川を活性化させ、前線3枚との好連携を見せた。

 今野自身は「今日は点も入って出来すぎ。奇跡ですね、奇跡」と冗談交じりに笑ったが、むしろ長谷部以上の存在感を示したと言っていいだろう。彼が代表に新たなオプションをもたらしたのは紛れもない事実だ。

 彼が久保や浅野拓磨(シュトゥットガルト)ら若い力と融合し、これまで以上に多彩な戦い方のできる強い日本代表が構築されれば理想的である。

(取材・文:元川悦子【アル・アイン】)

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