【岩政大樹×マリ戦】ハリルJに足りなかったワイドな攻めへの対応力。磨くべき世界仕様の距離感

3月24日(土)16時1分 フットボールチャンネル

マリ戦で露呈したハリル式守備の弱点

 日本代表は23日、国際親善試合でマリ代表と対戦し1-1で引き分けた。この試合ではどんな成果や課題が見つかったのか。2010年の南アフリカワールドカップにも出場し、現在東京ユナイテッドFCで選手兼コーチとして活躍する元日本代表DF岩政大樹に、現役ディフェンダー目線で話を伺った。(分析:岩政大樹、構成:編集部)

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 マリ戦前、日本代表が「最終ラインを高くする」という報道が出ていました。「最終ラインを高くする」というのは、基本的に判断の結果ですので、どのようにして実現させるのかに注目していました。結果的に高くはしたいけれど名分だけ、これまでと大きく変わったところはありませんでした。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の守備のやり方では、対面の相手のマークを掴むところから守備を作っています。基本的に相手の動きに合わせて自分たちのポジショニングを決めていくので、特にサイドで高い位置を取られると必然的にライン設定も高くはなりません。

 大きな変化がない中でも、立ち上がりにはサイドの久保裕也選手や宇佐美貴史選手が、相手の4バックのセンターバックにプレッシャーをかけていくような場面が見られました。彼らは本来サイドバックを見ていますが、何度かそれを捨ててセンターバックまで出ていっていました。そうやってズレて守備をすることができれば、結果的に最終ラインが高くなるんです。

 このやり方をしている時は比較的前からプレッシングにいけていましたし、押し込むことができていました。ですが、時間を追うごとに久保選手と宇佐美選手はサイドバックを掴んで、大迫勇也選手と森岡亮太選手が2人で前に並ぶような形になっていきました。相手のボランチが下がって3バックのような形でボールを回すようになり、それに対して2人で追っていくので数的不利になります。

 そうすると両サイドが下がります。基本的に中盤とディフェンスのラインはサイドを起点に決まってくるので、サイドが下がることによってサイドバックも下がるとなると、そこから最終ラインが高くなりようがありません。それによってどんどん全体が下がっていってしまい、全体で連動してボールを奪いにいくシーンはどうしても作りづらくなりました。

 ただ、この戦い方は「仮想セネガル」とはあまり関係ないと思います。ワールドカップ前にアフリカ勢との試合がもう一度ありますし、そもそも今回はヨーロッパで行われている試合で、セネガルに対して「こうやって戦います」というのを、ハリルホジッチ監督が全て見せているとは思えません。

 そもそもワールドカップ本番とはメンバーも相手も違いますので、あくまで選手たちの感覚、特にアフリカ勢の速さや強さ、足が伸びてくる感覚が「仮想」なだけであって、この戦い方をそのままセネガル代表にぶつけるとは思えません。一般的な監督さんが考えることを想像すると、本番仕様の戦い方をここで披露するはずがないですからね。

世界仕様には達していない日本代表の「距離感」

 守備のベースとして相手の出方に合わせてポジションを作るとなると、マリ代表はビルドアップ時に横へ広がっていきますので、日本の選手同士の距離感も横に広がります。ずっと両サイドが横が広がっている状態になるとそれぞれの距離感が遠いので、1人がマークを外された時にどうしても次のカバーが来るまでの時間が必要になってしまいます。

 そうするとだんだん時間を追うごとにマリの選手が日本の選手をかわしていくような場面が見えてきました。確かに「対応した選手が1対1でついていけ」という話になるかもしれませんが、それでアフリカ人選手に対抗していくのは、現時点では難しかったということになります。

 狭いスペースでは日本人の俊敏性などが生きますが、あれだけの広いスペースになるとどうしても1対1のデュエルはさすがに難しくなり、ストライドの広いマリの選手にぶち抜かれてしまうシーンが増えてしまいました。セネガルとの対戦を想定するのであれば、あの伸びにどう対処するかでしょうね。

 相手選手の動きによってポジションを決めるやり方で守備を構築するのであれば、当然距離が空いていくことが選手たちの頭に入っていなければいけません。局面によって当然距離感を変えなければいけないですし、カバーのポジションも変えなければいけなくなります。距離感が遠いという前提条件の中で、アフリカの選手たちはグッと伸びてくることもイメージしながら守備をしなければいけないと思います。マリ戦ではその部分の感覚や距離感を掴めていない部分はあったかもしれません。

 全体をワイドに広げて攻めるのはサッカーの基本です。当然守りづらくなりますので、アフリカのチームでなくてもそうしてくると思います。それに対して日本はもう少し距離を詰めないといけないですよね。ピッチの大きさは決まっていますし、11人でサッカーをするのは決まっています。これが12人になったらもう少しスペースをカバーできるんですけど、11人ってすごく上手い人数になっていて、全体が縮まろうとすれば空いてしまうスペースがあるし、広げようとすれば1人ひとりの距離が空いてしまうんです。

 この距離感をどの場面で縮めてどの場面で広げるかという調整がが鍵になってくると思いますが、そのバランス感覚がまだ世界仕様になっていないと感じています。今の距離感はアジアだったら日本代表選手の個のレベルが高いので1対1でも対応できますが、ヨーロッパやアフリカの選手と対戦して個々で勝てなくなった時に、どの場面でチーム全体で選手間の距離を縮めるのかをもう少し詰める必要があります。

チームで「同じ画」を描けるか。ウクライナ戦の注目ポイントは?

 チーム全体として縮まってしまえば身体能力の差は出ませんが、広がったままではどうしても個々の能力や身体能力の差が出やすくなります。マリよりもウクライナの方が対応はしやすいはずですから、次の試合では選手同士の距離感が良くなっているように見えるかもしれません。

 とはいえ、それによって守備が良くなったと錯覚すべきではありません。ワールドカップでは対戦相手がもっとレベルの高いチームになりますから、選手同士の距離感はチームとして微調整を進め、より緻密に詰めていくべきだと思います。

 ここまで守備の話をしてきましたが、結局サッカーは攻撃と守備が一体となって動きます。今の状態だと「ボールをどのように前線に運んでいくか」の画がどうしてもチームとして揃っていないので、そうすると守備のスタートもハマらなくなってしまいます。

 今は攻守ともに自分達がプレーしながらハマっている感覚がないと思います。うまくいっていない感覚で話しているような選手たちのコメントも出ていますので、攻守にどちらでも同じ画が描けるものをいくつか用意しておくと、その画が揃った時に全員が少し気持ち良くプレーできます。どちらかが良くなれば逆側も良くなるんですよね。

 そうなると他のプレーも少しずつ良くなってきて、相乗効果が生まれるはずなので、ウクライナ戦では攻守において同じ画を描けるシーンがいくつか出てくるといいなと思います。立ち上がりや、少し停滞した試合が落ち着いてきた時間帯、流れによって戦い方が変わってくる終盤の時間帯で1つずつくらいは同じ画が見えるといいのではないでしょうか。

 マリ戦では相手が日本のプレーに慣れてきた時間になると、みんなの解決策が全く揃わない感じに見えました。「こうなった時はこれをやろう」というのが揃っていると、みんなが前向きに戦えます。仮にうまくいかなくても、そこから見えたものを次にやろうという試合の運び方をしていくと、それ以外のうまくいかない部分も好転していったりするので、気持ちがポジティブになっていきます。流れによってみんなで少しずつ解決策を見出して、それをチーム全体でで共有していける試合になるといいですね。

(分析:岩政大樹、構成:編集部)

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