いつだって最後のつもり—6年連続8度の手術を乗り越えたロッテ右腕の覚悟

3月24日(木)19時8分 フルカウント

特別な思いで新シーズン迎える内竜也

 特別な思いで開幕を迎える男がいる。内竜也投手、30歳。プロ13年目を迎える今シーズン、10年ぶり2度目の開幕メンバー入りを果たそうとしている。6年連続8度の手術を乗り越えての開幕。久しぶりの順調なスタートに、高ぶる気持ちが全身からみなぎる。

「プロ野球選手にとって開幕は特別ですよ。開幕独特の雰囲気がある。こんなに長い事、この世界にいるのにボクは一度しか経験はしていませんが、その雰囲気が好き。06年以来ですね。この場に立てる幸せを感じながら、しっかりと仕事を果たしたい」

 その表情には充実感がみなぎる。春季キャンプの一軍参加も実に2010年以来6年ぶりだった。当時はオープン戦で結果を残せず、開幕一軍から漏れた。その後、シーズン中に手術。クライマックスシリーズ前に復帰し、ポストシーズンで鬼神の働きを見せ、その名は一躍、野球ファンの知るところとなった。

 だが好事魔多し。その直後に待っていたのは右足首の手術。肘、肩、足首、さらに盲腸。昨年まで6年連続での手術によるリタイヤ。治れば、また手術の辛く苦しい日々が待っていた。そんな不運の連続にも気持ちを切らすことなく、いつも前を向いた。持ち前の負けん気から、あえて弱音を吐かなかった。時には強がり、自分を信じ、どんな時もプラス思考でひたすらリハビリを重ねる背中があった。

「もちろん悔しいし、辛かった。でも、いつも自分の中で絶対に落ち込まず、どんな時も前を向こうと思っていました。手術をするからには絶対に手術をする前の自分より少しでも良い状態でマウンドに戻ってやろうと。『アイツ、もう終わったなあ』と言っている人たちに、今に見ていろよと思いながら日々、取り組みました。ずっと、強い気持ちを持つことを意識していました」

ロッテ救援陣の絆、「アイツのユニホームを持って」

 辛い思いを重ね、我慢をしながら今のポジションに到達した。だからこそ人の心の痛みを誰よりも感じる事が出来る。

 昨年9月23日のイーグルス戦(QVC)。ストッパーの西野勇士投手が投球時に左足に打球を当て、亀裂骨折。登録抹消となり、その後のシーズンを棒に振った。昨シーズン、セーブシチュエーションでの失敗はゼロ。絶対的な安定感がチームをクライマックスシリーズへと導いた。しかし、その立役者は華やかな舞台を目前に控え予期せぬアクシデントで姿を消した。計り知れぬ無念さ。同じようにプレッシャーのかかる場面で登板を重ねてきた内らセットアッパー陣は仲間を想い、マウンドに上がった。

「アイツのユニホームをクライマックスシリーズに持って行こう! そして日本シリーズ進出が決まった時にはスタンドに向かって、そのユニホームを目立つように掲げよう」

 中継ぎ陣の間で自然発生的に出たアイデアだった。そしてその中心の一人として内は燃えた。

「一番悔しいのはアイツ。その気持ちは沢山の怪我をしてきた自分には痛いほど分かる。だから、せめてユニホームだけでも遠征に持って行って、一緒に戦おうと思った。日本シリーズまで行ったら復帰できると聞いていたので、アイツの為に勝とうと思っていた」

 みんなが同じ思いだった。西野のロッカーからビジターユニホームを1着持ち出すと、球団にお願いをして遠征用のトラックの中に詰め込んだ。一年間、一緒に戦ってきた仲間として、それぞれで誓い合って札幌、福岡と続くCSの戦いへと向った。

胸に秘める覚悟、「いつだって最後のつもり」

 札幌で勝利したものの志半ば、福岡で敗れ、マリーンズの2015年は終わった。それでもセットアッパー陣の気持ちは西野に通じた。そして今季、パ・リーグ最強の中継ぎ、抑えのリリーフ陣は万全、最高の状態で開幕を迎えようとしている。

「ここまで毎年のように怪我をして、いつ野球人生が終わっていてもおかしくはなかった。だから、失うものはないと思っています。いつだって、最後のつもりで、全力で投げたいと思います。悔いを残さないように燃える。怪我を怖れるような投球だけはしたくはない。いつだって全力。毎日、試合後に倒れ込むぐらい全身全霊の投球を見せたいです」

 開幕を目前に控えたロッカールーム。熱い気持ちを抑えきれない内は、まくしたてるように今季に賭ける決意を語った。

 王ジャパンによる第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)優勝に沸いた直後に行われた06年の福岡でのホークスとの開幕戦。20歳の若者は2番手として7回から登板をすると1回を被安打2、1四球、2失点。緊張の中、無我夢中で投げたが、ほろ苦い思い出しか残っていない。

 あれから長い月日が流れた。そして今年、内はその時以来の開幕の舞台に立つ。

「調子、状態はいいです。楽しみです!」。2016年、3月25日、QVCマリンフィールド、対北海道日本ハム戦。スタンドは超満員に膨れ上がる。今、この舞台に立てることを誰よりも感謝しながら、そして味わいながら内は13年目のシーズンを一軍で迎える。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara

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