【識者の眼】ついにハーフナーを活かした日本代表。“高さ”への意識に見せたハリルJの進化

3月25日(金)11時17分 フットボールチャンネル

高さばかりがもてはやされるが実は器用

 24日、大勝したアフガニスタン戦で途中出場したハーフナー・マイク。日本代表では久々の出場となったが、彼がこれまで代表で上手く活かされることは少なかった。短い時間ではあったが、“高さ”を有効に使おうとした攻撃にはハリルジャパンの進化が見られた。(取材・文:河治良幸)

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 ハーフナー・マイクが岡崎慎司に代わり投入されたのは後半28分。すでに3-0と試合の大勢が見えた状況だったが、直後のCKで相手マークの混乱を誘い、吉田麻也のゴールを呼び込むと、後半33分には清武弘嗣が上げたボールをエリア内で落とし、金崎夢生のゴールをアシストした。

「前で体を張って、どんどんシンプルにボールを落としてゴール前へ顔を出すという。普通の指示です」

 交代前にハリルホジッチ監督から出た指示をハーフナー本人はこう説明するが、このシンプルさこそ、現体制で初出場となった長身FWの特徴を発揮させるための明確なメッセージになったのではないか。そこには周りの選手たちの共通理解が伴っていたからだ。

「マイクを使うときは 空中戦と頭で折り返すという、彼の長所を活かすことを考えた。日本代表はここ数年、このようなプレーを習慣化していなかった。彼に向けてのセンタリングを多くしたが、これはオプションだった」

 ハリルホジッチ監督は起用の意図をこう説明する。2トップのままハーフナーを投入するという選択も、このメッセージを選手たちが実行する意味では適していたと言える。指揮官が「2トップを使うときは、1人がパス、1人が点を取るという補完関係も必要」と表現する形を常に中央で作ることができるためだ。

 横浜F・マリノスのユース時代から各年代の代表にたびたび選出され、ザッケローニ監督が率いていた2011年9月の北朝鮮戦でA代表デビューを飾ったハーフナー。その時も194cmという“高さ”が注目され、ブラジルW杯2次予選のタジキスタン戦ではその特徴を活かす形で2得点を記録した。

 ただ、一方でハーフナーは“高さ”に特化したタイプではなく、足下でボールをさばくこともできれば、ワイドに流れて組み立てに絡むこともできる。サイズがある分、ミスした時に目立つためにJリーグ時代から“ヘタウマな選手”というイメージも持たれがちだったが、それもさまざまなプレーに絡む中で発生していたものだ。

ハーフナー出場時もボールをつないでいた以前の日本代表

 時にこうした“なんでもできる”ことがチームの中では色を失い、個性を埋没させることにつながりがちだ。ザックジャパン時代からハーフナーを知る酒井高徳はアフガニスタン戦の前に「ハーフナーが何度も代表に入ってきた時に、それでもボールをつないでしまう時もあった」と振り返っている。

 その象徴的な試合が酒井高徳も出場していた2013年10月のベラルーシ戦。1点のビハインドを背負ったまま後半40分を迎えた日本は前線にハーフナーを投入したが、指揮官から明確な指示が伝わらない中で、選手たちは中盤でパスをつなぎながらもゴール前にボールを入れられず、ついにはハーフナーがワイドな位置に動いてチャンスメークに参加してしまう始末。

 結局、決定的な場面を作れないまま試合終了のホイッスルが鳴る。これがハーフナーにとって、ザックジャパンでは最後の試合となった。

「1人ひとりが自分はこういう選手なんだっていう要求をしないといけないと思うし、それでチームも個としても強くなっていく。周りが意識するのももちろんそうですけど、僕はハーフナー君の特徴は“高さ”だと思っているので、ヘディングできるボールを上げられる意識や工夫をしたい」

 酒井高徳はアフガニスタン戦に出場しなかったが、出ていた選手がハーフナーの最大の持ち味である“高さ”をしっかり活かそうという共通意識があったからこそ、それほど長くない時間の中でもハーフナーの特徴が際立ったのだ。

 得点差や相手との力関係を考えれば、周りがもっとボールを回してハーフナーにグラウンダーのショートパスを付ける形を増やしても、大きなチャンスが作れたかもしれない。

個の特徴を埋没させないために必要なバランス

 しかしながら、この時期に本人も周囲も明確に特徴を意識できたことで、より厳しい戦いが予想される最終予選に向けたオプションとして印象付けることができたのではないか。

 もちろんハーフナーが継続的に招集され、毎試合の様に長い出場時間を得るようになれば、所属クラブのデンハーグでもしばしば見せている様に、相手CBを引き付けられるハーフナーを囮に使って周りがグラウンダーで勝負する形や、足下を活かすプレーをアクセントに使うことも有効になりうる。ただ、そうした要素がどんどん出ることでかえって、彼の特徴が薄まれば、限られたFW枠に入れる意味が弱くなってしまう。

 ハーフナーに限らない話だが、チームの方向性を選手全員が共有し、誰が出てもその基本スタイルを実現できること、個人が特徴を発揮することをバランス良く共存させることは簡単ではない。

 しかし、例えばハリルホジッチ監督がブラジルW杯で率いたアルジェリア代表はそうした部分でチームと個人をうまく融合させることで、試合ごとにスタメンを変更し、選手交代を活用しながらグループリーグを突破し、世界王者となるドイツを敗退寸前まで苦しめることができたのだ。

 確かにホームのアフガニスタン戦は、どう戦ってもほぼ100%の勝利が見えていた試合かもしれない。ただ、その中で新しいチャレンジを行い、ハーフナーのようなオプションをテストした中で選手たちがビジョンを共有し、一定の成果を見せたということは、後になって振り返れば大きな意味を持った試合として日本代表の歴史に刻まれるかもしれない。

(取材・文:河治良幸)

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