【識者の眼】ハリルJの新機軸となった原口、大迫、久保。“HOK”誕生? アジア規格外3トップに高まる期待

3月25日(土)9時58分 フットボールチャンネル

“前輪駆動型”の3トップで挑んだハリルJ

 日本代表は23日、アウェイで行われたロシアワールドカップ・アジア最終予選でUAE代表を2-0で下した。この試合は原口元気大迫勇也久保裕也の3トップで挑んだハリルジャパンだが、前線だけで攻め切る能力を持った3人はまさにアジアで規格外と言えるだろう。“HOK”トリオは、ハリルジャパンの新機軸になるかもしれない。(取材・文:河治良幸【アル・アイン】)

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 アウェイの地で2得点を奪い、無失点に抑える理想的な形で勝利した日本代表。その大きな推進力となったのが大迫勇也、原口元気に久保裕也を加えた3トップだ。この日は相手の司令塔オマル・アブドゥルラフマンの対策も意識した[4-3-3]を採用したこともあり、通常の[4-2-3-1]より3トップの特性が出やすくなった。

 もちろん守備時にはウィングの久保と原口がサイドハーフの位置まで下がることも少なからずあったが、攻撃の役割上は3トップと言える布陣であり、彼らのプレーにもその志向が強く出ていた。前線で攻め切る、いわゆる“前輪駆動型”の攻撃だ。

 マイボールになったら前線中央の大迫にクサビのパスを入れて、彼が落としたボールを久保や原口が縦に持ち上がるというのがメインの攻撃パターンだった。次に後方からのダイアゴナルなロングパスを受けたサイドで崩し、クロスに大迫や逆サイドのウィングが合わせる形も有力なオプションの1つとなっていた。

 開始5分には森重が右前方に大きく展開すると、走り込んだ久保が折り返し、大迫が合わせようとするが、うまく捉えられなかった。このシーンでは原口もファーサイドを駆け上がっており、結果的に相手3人を引き付けていた大迫がもし中に折り返せていれば得点の可能性がかなり高かった。

 このシーンで興味深いのは、後方からの1本のパスを起点にいきなり3トップと相手4バックの勝負に持ち込んでいることで、しかもそこで攻め切ってしまっていることだ。この場面では相手のDFラインが揃った状態ではあったが、日本の速い攻めに付いていけていなかった。一瞬だが大迫をフリーにしてしまっており、ファーの原口も右サイドバックの内側に走り込んでいた。

これまでの日本にはなかった3トップ。香川も「速攻がチームの一番の強み」

 先制点は、香川真司を起点に高めのポジションをとっていた酒井宏樹の縦パスを久保が相手左サイドバックの内側を抜け出す形で受け、そのままニアを破って決めたものだった。ここでも大迫がゴール前に走り込むことで相手センターバックの対応を遅らせるなど、速い流れの中で3トップが一気に加速して攻め切る形が結果に結び付いた。

 このシーンで起点になった香川は「必然的に前の3人であったり、速攻がチームの一番の強みになりつつある」と語る。ハリルホジッチ監督が植え付けてきた攻守の切り替えの速さや常に裏を狙う意識は、3トップによってその色が強まった。

 強いディフェンスを背負っても味方にボールを落とせる大迫、縦に速いランニングやドリブルが得意な久保と原口という、個人で決め切る能力を持った3トップはこれまでの日本ではあまり見慣れなかったものだ。

 後半の2点目は吉田のロングパスを大迫が競り勝って落とし、ボールを受けた久保が仕掛けて左足でクロスを送り、タイミング良くファーに走り込んだ今野が決める形だったが、中央では原口がディフェンスを引き付けていた。中盤の今野が加わり4人での崩しになったが、前線で攻め切る形のバリエーションと言える。

ようやく3トップを見出したハリル。アジアでは規格外の“HOK”誕生?

 振り返れば大迫と久保は昨年11月にハリルジャパン初招集、原口も前回のUAE戦は途中からボランチで投入されるなど起用法が定まっていなかった。ここに来て指揮官はようやくチームスタイルを象徴する3トップを見出した感がある。

 ブンデスリーガの一線で奮闘する原口と大迫、ベルギーでゴールを量産する新鋭の久保。流行にちなんで“HOK”と表現するには時期尚早かもしれないが、アジアの規格としてはかなり強力な3トップだ。

 今回のUAEは、前からボールを奪いにくると背後のディフェンスが後手を踏む傾向にあった。そのような場合、日本は常に前の3人が仕掛け、中盤から後ろはそのフォローをしながら機を見て攻撃参加する形を継続していけばゴールチャンスは増える。

 だが、あらかじめブロックを固められた場合にはポゼッションから起点を作って崩す形が必要になる。また、この試合でも時間帯によって緩急を使い分けられれば、ボールロストからピンチを招く場面を回避できたかもしれない。

3トップには課題も。見極めていきたい“取り扱い”

 この試合はオマルの自由を封じるという目的があり、サイドから果敢にドリブルを仕掛けるエル・ハンマディを警戒する必要があった。長友佑都と酒井宏樹の両サイドバックが最終ラインからの飛び出しを自重していたことも、攻撃がより“前輪駆動型”に特化した事情かもしれない。

 ただ、試合はこのまま2-0の勝利を収めたので問題ないが、いかなる試合、いかなる時間帯でも、型がはまらなかったら終わりというのは危険だ。

「サイドバックも今日はわりと相手の反撃、カウンターのためにあんまり参加していなかったので、そうなると必然的に前の3人であったり、速い攻撃が求められると思うし、そこがこのチームの1番の強みになりつつある。そこは割り切ってやるしかないですけど、そういう(ポゼッションで崩す)時間帯も必要なのかなと思います」

 そう語る香川は、速い攻撃が主体となる中で味方が奪ったボールを最初に受けたり、味方が潰したこぼれ球をいち早く拾ってつなげたりと、無駄なボールロストを生じさせず攻撃につなげる役割を果たしていた。

 一方で縦横無尽のハードワークで攻守に絡んだ今野、中盤の底でバランスを取り続けた山口蛍という中盤のバランスも悪くなかったが、時間帯によってより安定感と厚みのある関わり方をしていけばチームとしての機能性も高まる。

 ハリルホジッチ監督は攻守の切り替えや裏への意識、デュエルといったベースを就任時から高め、この最終予選になって対戦相手をしっかりスカウティングして準備する方法を取り入れてきている。

 おそらくタイ戦にはまた違った選択が用意されるだろうが、前線で攻め切ることができる3トップの強みをどう活かし、あるいは状況に応じてどう補っていくのか。さらなる戦力の台頭に期待しながらも、その“取り扱い”は今後見極めていきたいポイントだ。

(取材・文:河治良幸【アル・アイン】)

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