ハリルの指示「聞きすぎ」で混乱。酒井高「監督はピッチで助けてくれない」。求められる自己解決力

3月25日(日)11時11分 フットボールチャンネル

「考えながらプレーしている選手が多いのが一番の問題」(大迫)

 現地時間23日に1-1のドローで終わったマリ戦。日本代表のプレーからは迷いが見られた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の指示とピッチ内での選手たちの意図が合わない。そういった場面で発揮すべき能力とは何か。停滞から抜け出すために必要なことが、選手たち自身の言葉から見えてきた。(取材・文:元川悦子【リエージュ】)

——–

 2018年ロシアワールドカップ予選敗退のマリに敗戦寸前まで追い込まれた23日の日本代表。後半アディショナルタイムに中島翔哉(ポルティモネンセ)の劇的同点弾が生まれて何とか1-1に持ち込んだものの、不完全燃焼感が色濃く残る一戦になってしまった。

 直後にパリまで移動し、ワールドカップ本大会初戦の相手・コロンビアがフランスに3-2で逆転勝利を収めるところをその目に焼きつけたヴァイッド・ハリルホジッチ監督の衝撃は大きかったはず。一夜明けた24日、トレーニング前の13分間にわたるミーティングで選手たちを激しく鼓舞していたのも、強い危機感の表れだろう。練習時間も現体制最長となる1時間45分。本田圭佑(パチューカ)ら前日のサブ組には大勢のメディアや観客が見守る中、1対1のデュエルを行わせるなど、指揮官はチーム立て直しに躍起になっていた。

 マリ戦後には長谷部誠(フランクフルト)と長友佑都(ガラタサライ)の両ベテランが「このままじゃロシアでは勝てない」と苦言を呈したが、彼らがそこまで発言するのは滅多にないこと。チーム内外へのインパクトは大きかった。

 最終ラインをリードした槙野智章(浦和)は隣に位置した長友と2人で話し合う時間を持ち、「2010年の南アフリカの時のような戦い方をするのか、自分たちが攻撃を掲げた2014年ブラジルみたいな戦い方をするのか、その整理をみんなで共通意識を持ってやらないとバラバラになってしまう危険性がある」という長友の考えを聞いたという。それを踏まえて、自ら率先してコミュニケーションを取っていく必要性を再認識した。

 彼ら30歳超えの年長者たちにリーダーシップや統率力があるのは、誰もが認めるところ。とはいえ、今の日本代表はブラジルワールドカップ経験者の山口蛍(C大阪)、大迫勇也(ケルン)、酒井高徳(ハンブルガーSV)らロンドン五輪世代が中心だ。彼らが主体性を持ってアクションを起こさなければチームの抜本的改革は難しい。いつまでも年長者に頼っているわけにはいかないのだ。

 マリ戦に先発出場した大迫は、「監督もメンバー選考に関して『まだ』という段階で、毎回変わっている感じなので、時間が経てば連係面は大丈夫だと思う。ただ、本当に本気でみんなが良くしていこうと思わないと良くならない。危機感を持ってやるしかない。今は悩みながら、考えながらプレーしている選手が多いのが一番の問題。その迷いが今、良くない方向に向かっている。考えずにプレーできればもっともっと変わっていく」と、チームが置かれた状況を冷静に分析する。

「監督はピッチでは助けてくれない」(酒井高)

 そんなモヤモヤ感は確かに見て取れた。これを改善しようと思うなら、真っ先に彼自身が本気度を前面に押し出すべきだろう。今の大迫は1トップに君臨する攻撃の軸。重責を担っていることを強く自覚し、行動することを求めたい。

 そんな意識は山口にも高めてほしいところ。本人は常日頃からも「ピッチの中では喋ってるし、いつもピッチ外で話をする必要はない」という割り切った考えを口にしているが、大島僚太(川崎F)のアクシデントで急きょ出場したマリ戦に関しては、意思疎通がうまくいかなかったと認めている。

「バタバタした展開だったし、もう少し自分たちがボールを持ってゆっくりしてブレイクする時間も作れれば中での会話はもっと増えていく。それを全部、前に前にと急いでやっちゃうから話し合う時間もなかった。そういう問題があったのは確かだと思う」と彼はピッチ内でのコミュニケーション不足を実感したようだ。

 その結果、大迫も言うように1人ひとりがプレーに疑問を抱き、迷いながら戦ったことでチームがまとまりを欠く事態に陥った。「今は1つになれていない感じを受けるんで、まず根本的にそういうところからやっていかないと。みんなが1つになってやれれば、距離感も近くなるし、パスコースも増えてミスもなくなる」と山口は前向きに提言していた。その考えを近いポジションや同世代のメンバーに意識的に伝えていくところから、変革の一歩が始まるはずだ。

 思いを内に秘める傾向の強い2人とは違って、ハンブルガーSVでキャプテンを務める酒井高徳はストレートに自分の意見を言うタイプ。今回は追加招集の立場で、マリ戦も前半にPKを献上した宇賀神友弥(浦和)に代わって後半から出番が回ってくるという苦境に立たされているものの、足掛け8年間も代表キャリアを積み重ねている選手。縁の下からチームを支える時間も長かっただけに、今の自分たちが何をすべきかをよく理解している。

「今、ハッキリしとかなきゃいけないのは『監督はピッチでは助けてくれない』ということ。監督がどういう戦術をくれたかどうかに関係なく、局面は自分で打開しなきゃいけない。マリ戦で1人ひとりができたかと言われれば、自分はできなかったと思っている。そういうことを自覚して、次は違ったメンタリティで試合に挑むことがまず大事」と彼は語る。ハリルホジッチ監督のタテに速いサッカーを尊重しつつも、それに縛られることなく自己判断力を持ってプレーすることが重要だと酒井高徳は考えているのだ。

今こそ求められる選手たちの自己解決能力

 実際、マリ戦では中島が投入された60分以降、指揮官は「左にロングボールを蹴り出せ」と口を酸っぱくして言うようになった。これには多くの選手が戸惑った。マリは前半ほどのハイラインではなかったから、単純に蹴り出しても守備の網に引っかかるだけ。「自分たち右サイドは時間を作りながらやっていこうと話をしていたけど、『蹴れ蹴れ』って指示が飛んでいて、僕らの思惑との食い違いがあった。全部が全部それではムリだと思った」と山口も強い違和感を覚えたという。

 そういう時こそ、酒井高徳が言う「監督はピッチでは助けてくれない」という言葉に立ち返るべきではないか。

 原口も「守備にしても、ハリル監督はどこの位置からプレスに行ってもいいという話をしている。前から行ってもいいし、引いて守る時間があってもいい。もっと自分たちでイニシアティブを取っていいって監督は言ってますよ」と話したが、指揮官の戦術やサッカースタイルを尊重しつつも、選手自身の判断を大事にして戦うところから始めた方が、日本は今の停滞感を打破できるのかもしれない。

 今こそ、ロンドン五輪世代がその主たる担い手にならなければいけない。そういう時期に来ているのは確かだ。本番前まで混乱が続いた2010年南アフリカワールドカップも、中澤佑二(横浜FM)から長谷部にキャプテンが代わり、松井大輔(横浜FC)や阿部勇樹(浦和)、大久保嘉人(川崎F)といった20代後半の面々が奮闘したことでチームが変わった。

 それを再現すべく、今の中堅世代にはより一層の奮起がを求められるところ。ウクライナ戦で彼らがチームを引っ張れるか否かに注目していきたい。

(取材・文:元川悦子【リエージュ】)

フットボールチャンネル

「ドロー」をもっと詳しく

「ドロー」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ