早実・清宮vs履正社・安田 2020年侍ジャパンの4番は?

3月25日(土)7時0分 NEWSポストセブン

「怪物」清宮は筒香以上の逸材?

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 近年にない盛り上がりを見せるセンバツ甲子園。逸材揃いの球児たちのなかで、将来の日本球界を背負って立つのは誰か。新著『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』が話題を呼んでいる柳川悠二氏(ノンフィクションライター)がレポートする。


 * * *

 春分の日と重なった第89回選抜高校野球大会の2日目。満員札止めの甲子園から約10キロ離れた伊丹スポーツセンターの野球場にも、400人近い高校野球ファンが足を運んでいた。お目当ては早稲田実業(東京)の清宮幸太郎である。


 試合のない早実は紅白戦を行なっていた。清宮ら主力組に対し、控え組のマウンドに上がったのは早実OBで、早大2年の左投手。清宮は第1打席、大学生を相手に右中間スタンドのスコアボード直撃となる特大の一発を放った。


「甲子園の試合の前に、これだけのお客さんの前で野球ができるのは幸せなこと。ホームランは追い込まれたあとのストレート。状態は上がってきている」


 高校通算79本塁打。怪物1年生として騒がれた2年前の夏に比べて選球眼を磨き、ミスショットは明らかに減った。体重もこの冬の間に100キロを超え、怪物はさらに巨大化した。


「今年のセンバツは、清宮君の大会でしょう。飛距離は目を見張るし、スタンドへのボールの持って行き方を知っている」


 そう語ったのは、3月24日に、1回戦で早実と対戦する明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督だった。


 だが、大阪に彼と同等のポテンシャルを秘めた左の大砲が存在する。履正社の安田尚憲だ。188センチと身長は清宮を4センチ上回り、通算本塁打は49本。同校の先輩であるT−岡田(現オリックス)を彷彿とさせるがっしりとした体躯でありながら、やはり先輩の山田哲人(現ヤクルト)のような器用さも併せ持つ。


 高校野球界の両雄は2020年の東京五輪を21歳で迎える。その時、侍ジャパンの4番に座っていてもおかしくない逸材である。


◆2人とも筒香より上


 清宮の父がラグビートップリーグ・ヤマハ発動機監督の克幸氏であることは有名だ。一方、安田の父・功氏も、昨年末の全国高校駅伝女子で2年ぶり2度目の優勝を果たした大阪薫英女子陸上部の監督である。12歳上の兄・亮太は、PL学園で一学年下の前田健太(現ドジャース)とバッテリーを組み、現在は三菱重工名古屋で主将を務める。


 共にアスリート一家に生まれたふたりは、「東の清宮、西の安田」と、常に比較されるライバル関係にある。


 昨秋の神宮大会決勝で早実と履正社は対決し、清宮と安田は、揃ってライトスタンドに本塁打を叩き込んだ。軍配は履正社にあがったが、試合後、安田は清宮の印象をこう語った。


「レベルは清宮の方が上。自分が成長する上で、良いモチベーションになる」


「君付け」しなかったところに意地も透けて見えた。


 選抜における安田の初打席は大会初日だった。相手は、昨秋の東京大会決勝で、清宮から5打席連続三振を奪った日大三のエース左腕・櫻井周斗。清宮との力の差を測るには絶好の相手だ。安田は最初の3打席で3三振。まるでタイミングが合わなかった。


 しかし、最終第5打席ではレフトの頭上を弾丸ライナーで超えるタイムリーを放って勝利に貢献。


 この一打を評価したのは、名門・横浜高校の元コーチで、甲子園通算51勝の渡辺元智監督を参謀として支えた小倉清一郎氏だ。


「膝とキンタマの間ぐらいの高さのボールを、強い打球で逆方向に持っていった。これは清宮にはない技術。ただ、最初の3打席は、すべてボール球を振っていた。注目が集まり、良いところを見せたいという“色気”と、もろさが出た。1打席目は三振しても、2、3打席目は対応しないといけない」


 厳しい指導で松坂大輔や、今回のWBCで4番に座った筒香嘉智(現横浜)らを育てた名伯楽は、清宮についても次のように語った。


「インコースのボールを捌く能力は同じ左打者の安田より上かもしれない。引っ張り専門の清宮のほうが、飛距離も上。ただ、外のボールに対しては……。安田が右手でバットをコントロールして振り出しているのに対し、清宮は左手でコントロールしているように感じる。それだと、遠いアウトコースのボールにバットが届かない。また、一塁しか守れないのはプロに行ってから困るでしょうね。外国人選手と競わなければいけないポジションですから」


 だからといって「安田が上」と断じるわけではない。


「もう少し成長を見守る必要がある。高校時代の筒香は、バックスイングから振り出す際に腕がギッコンバッコンし、振り遅れてばかり。私は“どん詰まりの筒香”と呼んでいた。高校時点の筒香と比較すれば、ふたりの方が力は上回る」


 プロ入り後に筒香が悪癖を修正して伸びたという意味でもあり、ふたりが筒香のように活躍できるという保証ではない。


◆「自分の形」にこだわるな


 選抜優勝候補の一角・大阪桐蔭の西谷浩一監督は、2年前の夏にU−18侍ジャパンの指揮官として清宮を指導した。大会終了後、清宮に対し、こう苦言を呈していたことを覚えている。


「彼はよく、『自分の形』という言葉を口にする。それを大事にするのは重要ではありますが、こだわりすぎるきらいがある。そこがこれから2年間の課題」


 選抜を前に、改めて西谷監督の清宮評を訊ねた。


「特に内面(精神面)が成長したように思います。野球というスポーツは、主導権は投手にある。全打席で自分の形で打つことは不可能。崩されても打ち返す対応力という点では、2年前から成長が感じられます」


 甲子園のライトスタンドに放物線を描いた松井秀喜や前述の筒香ら左のスラッガーたち。メジャーや国際大会ではさらに輝きを放った。清宮や安田が同じように成長を続け、侍ジャパンの4番を打つ日がきても、何も不思議ではない。


※週刊ポスト2017年4月7日号

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