W杯ポット1入りへ。日本代表がFIFAランキングを上げるには

2025年3月26日(水)14時30分 FOOTBALL TRIBE

日本代表 写真:Getty Images

サッカー日本代表は、3月20日の2026FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会アジア最終予選、バーレーン代表戦(埼玉スタジアム2002/2-0)で勝利し、史上最速かつ世界最速(開催国のアメリカ・カナダ・メキシコ除く)でW杯本大会出場を決めた。


前回大会から出場国数が16か国増え、史上最多となる48か国で争われる北中米W杯。参加チーム拡大に伴い、グループリーグは「4チーム×12グループ」というフォーマットとなる。全体の試合数はカタール大会までの64試合から、104試合に増加する。


各チームは従来通り3試合を戦い、各グループの上位2チームと、3位チームから成績上位8チームが決勝トーナメントに進出。よって決勝トーナメント進出チームは32か国となり、日本代表のこれまでの最高成績である「ベスト16」に到達するには、決勝トーナメントに進出した上で1回戦に勝利しなければならない。当然ながら、多くの選手が目標として口にする「ベスト8」に到達するには、決勝トーナメントで2連勝が求められる。ベスト16以上を目指すチームは従来のフォーマットよりも試合数が1試合多くなる。


その中、注目されるのがグループリーグの組み合わせ抽選会だ。開催国3か国に加えFIFAランキング上位9チームがポット1、続く12チームずつがポット2以下に振り分けられる見込みの中、最新のFIFAランキングでアジア最上位の15位(ポイント数1618.81/2024年12月19日発表)に位置する日本代表。目標としているポット1入りを現実のものとするためには、日本よりも上位の国が全て本大会に出場すると仮定すればFIFAランキング9位以内に入らなければならない。


FIFAランキングの仕組みと詳細をおさらいし、日本代表の現在地を見てみよう。




FIFAワールドカップトロフィー 写真:Getty Images

格下相手のドローは大きな減点に


4月3日にFIFAランキングが更新される予定だが、バーレーン代表(81位)に勝った一方で、3月25日に行われた59位のサウジアラビア代表との一戦(埼玉スタジアム2002)をスコアレスドローで終えてしまった日本代表。これが後に発表されるFIFAランキングに大きく影を落とすことになる。


さらに6月5日に行われる26位のオーストラリア代表戦(アウェイ)、6月10日に行われる127位のインドネシア代表戦(市立吹田サッカースタジアム)で敗れるようなことがあれば、バーレーン戦で稼いだポイントの3倍以上のポイントを失うことになる。


どういうことか。これはFIFAランキングの複雑な計算式によるもので、日本から見れば格下の相手にドローあるいは敗れた場合、対戦相手に多くのポイントが付く代わりに、日本代表はその分のポイントを失うことになるからだ。ちなみに先のサウジアラビア代表戦で引き分けたことで、日本代表は約7.28ポイント減算された。


FIFAランキングでは、試合前に「予想されるポイント」が計算される。これは対戦相手のランキング差や試合の重要度に基いており、ランキングが低い格下のチームとの試合では、勝利が「予想される結果」として扱われるため、勝っても得られるポイントが非常に少なく、ゼロに近い場合すらある。そして万が一敗れれば、ポイントが大きく減らされる。


一方、他の国のポイントが同じ時期に大きく変動(例えば強豪同士の試合で大量にポイントを獲得)すると、相対的に日本のランキングが押し下げられる。




FIFA 写真:Getty Images

FIFAランキングの複雑な計算式


FIFAのランキングでは「SUM方式」と呼ばれる計算方法を採用している。この計算方法はFIFA公式サイトで公開されている。


ざっくりと説明すると、過去4年間の国際Aマッチを対象に、各試合のポイント(P)は、結果(M)・重要度(I)・対戦国の強さ(T)・大陸連盟間の強さ(C)に基づき、M×I×T×C=Pで算出される。


結果(M)は、W杯本大会でも国際親善試合でも関係ない。全試合で勝利が3、引き分けが1、負けが0(PK戦の場合の勝ちは2、負けは1)に設定。重要度(I)は、国際親善試合やE-1選手権(東アジア)、ガルフカップ(中東)などの小地域別選手権が1.0、W杯予選やアジアカップなどの大陸選手権の予選は2.5、大陸選手権の本大会とコンフェデレーションズカップは3.0、ワールドカップの本大会は4.0に設定している。


日本のW杯予選が6月10日のインドネシア戦で終了することから、ポイントを稼ぐためには、W杯予選の残り試合と、7月に韓国で予定されているE-1選手権、10月と11月に国内で開催されるキリンチャレンジカップで勝ち続けるしかない。


しかしE-1選手権は、いわゆる「FIFAインターナショナルマッチカレンダー」の外で開催されるため、欧州組の招集は困難で、オール国内組で臨むことになる。それでも優勝はマストであり、秋のキリンチャレンジカップでは、日本よりもランキング上位のチームを招待した上で勝利を収めることが必要だ。


久保建英 写真:Getty Images

なぜW杯出場を決めた後も必勝が求められるのか


バーレーン代表戦後に報道陣の囲み取材に答えたMF久保建英は、あくまで願望と前置きした上で、対戦相手の希望にイタリア代表(9位)とモロッコ代表(14位)を挙げた。彼がFIFAランキングを念頭に入れた上で発言したのかは不明だが、わずかでもポイントを稼ぎ、1つでもランキングを上げるという目的にも即した、理にかなったチョイスとも言える。


なぜW杯出場を決めた日本代表に、今後も必勝が求められるのか。それはW杯欧州予選が幕を開けたからである(3月21日)。欧州枠は今大会から「13」から「16」に増えたものの、毎回必ずと言っていいほど“死の組”が生まれ、FIFAランキング上位の国でも予選敗退を強いられる。


今大会予選でもオランダ代表(7位)がポーランド代表(35位)と、スペイン代表(3位)がトルコ代表(28位)と同組となることが既に決定している。W杯優勝4回を誇るイタリア代表ですら、前々回、前回と2大会連続で本大会出場を逃しているのだ。その苛烈さは、余裕しゃくしゃくで日本代表が本大会出場を決めたアジア予選とは対照的で、なんだか申し訳ない気持ちにすらさせられる。


欧州の強豪国同士が対戦するということはすなわち、ポイントの奪い合いをすることに他ならず、その結果として日本が相対的にランキングを下げることに繋がる。日本より上の国がW杯本大会出場を決めればポイントに差をつけられ、日本よりわずかに下のスイス代表(20位)、デンマーク代表(21位)、オーストリア代表(22位)あたりが予選を突破すれば、FIFAランキングでも日本を追い抜いていく可能性は高いだろう。




日本代表 写真:Getty Images

意識すべきは欧州予選だけではない


日本代表がW杯本大会の組み合わせでポット1に入るために自力でやれることは「残り試合全勝」だけだ。それでも足りなければ他力に頼るしかない。


それはランキング上位のフランス代表(2位)、スペイン代表、イングランド代表(4位)、ポルトガル代表(6位)、オランダ代表、ベルギー代表(8位)、イタリア代表(9位)、ドイツ代表(10位)の中で少なくとも2か国が本大会出場を逃すという番狂わせが起きることを意味する。


逆にこれらの国が順当に本大会出場を決め、前述した日本よりランク下位の国もW杯出場となれば、逆にポッド3転落という事態に陥ることも十分にあり得るだろう。


カタールW杯でポッド3に入った日本代表は、スペイン代表(ポッド1)、ドイツ代表(ポッド2)と同組に入る不運に見舞われた。しかしその2チームを破り、逆にポッド4だったコスタリカ代表に不覚を取った。この結果から「ポッド分けやFIFAランキングなど関係ない」という声もあろうが、もう一度この組み合わせでグループリーグの1位突破を再現できるかと言えば、かなり困難だろう。


加えて、日本代表が意識すべきは欧州予選だけではない。開催国のアメリカ代表(16位)やメキシコ代表(19位)、アフリカ予選を戦うモロッコ代表やセネガル代表(17位)。現在行われている南米予選では前回王者のアルゼンチン代表(1位)が本大会出場を決めた一方で、エクアドル代表(24位)やパラグアイ代表(53位)が健闘を見せており、「6.5枠」内の順位につけている。


現実的に、日本代表がポッド1に入るためには「人事を尽くして天命を待つ」という言葉に尽きる。しかし仮にそれが叶わなかったとしても、早々にW杯本大会出場を決めてしまったことで目標を見失いがちだったところに、もう一度モチベーションを与える要素となっている点では大きい。




ポット1以外でW杯を制した国は未だにない


なお「ポット」という言い方になったのは1998年のフランスW杯からで、それ以前は「シード国」と言われていた。ポット1(シード国)以外でW杯を制した国は未だにない。日本代表が世界一を目指す上で、ポット1という道は必ず通らなければならず、まずはそこを目指すのは当然のことだろう。


バーレーン戦後、久保は「とりあえずホッとした」と正直な感想を口にしたが、彼を含めた代表イレブンの志はまだまだこんなものではないだろう。カタールW杯以上のインパクトを残すための戦いは既に始まっている。

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