欠点は見て見ぬふり 松坂大輔の恩師が明かす「良いところを伸ばす」指導論

3月26日(日)12時3分 フルカウント

イップスが増加? 考えすぎる現代っ子に求められる指導法

 横浜高で甲子園春夏連覇を達成し、「平成の怪物」と呼ばれたソフトバンクの松坂大輔投手。その右腕が、中学時代に所属していた「江戸川南リトルシニア」で指導を受けていたのが、大枝茂明さんだ。現在、東京都大田区の「城南ボーイズ」で監督を務め、100人以上の子供たちの指導に当たっている。指導者生活30年以上に及ぶ大枝さんに、子供たちを教える上で気を付けていることを聞いた。

 自身も茨城県の江戸川学園取手高3年生の夏、甲子園に出場した。惜しくも初戦の2回戦で敗退したが、プロ入りを目指して大学に進学。しかし、けがのため1年の時に野球を諦めた過去を持つ。そのため、指導する上で「無理をさせない」ことを大切にしている。

「子供たちには、高校、大学で活躍し、プロに行ってもらいたいと思っています。中学生はそのための通過点。50〜60%の力でいいと思っています」

 投手にも、球種を増やすことはせず、ストレートを中心に投げさせ、投球フォームも変えることはしない。

「基本的なことは指導しますが、投げやすいように投げていいと言っています。フォームも変えません。変な癖があっても、高校に行けば直ります。スライダーやシンカーなど、変化球も高校で覚えればいいと思います」

欠点は“見て見ぬふり”…「素材を伸ばせるのが、良い指導者」

 大枝さんは、子供たちに持っている力を存分に発揮させるため、利点を伸ばすことを大切にし、欠点は“見て見ぬふり”をしているという。

「子供たちの持っている素材を伸ばせるのが、良い指導者だと思っています。良いところが伸びると、子供たちは力を発揮するので、欠点には目をつむるようにしています」

「良いところを伸ばす」という指導方法は、現代の子供たちの生活環境も影響している。

「昔と違って、自分の中で考え込んでしまう子供たちが多いです。スマートフォンやゲームの影響でしょうか、自分のイメージを持ってしまう子が多い。考えてしまうと、投げられなくなってします。イップスになる子供たちが多いんです」

 スランプになると、とことん調子を落としてしまうため「打てなくなったら何も教えない」という指導方法を取っているそうだ。

「会話をして、伸び伸びやらせています。2、3週間我慢すれば、ふとしたきっかけで状況も変わってきます。打てない時を、いかに耐えられるかだと思います」

「野球の指導は半分、あとの半分は心のゆとりをいかに持たせるか」

 大枝さんは「野球の指導は半分、あとの半分は心のゆとりをいかに持たせるか」だと話す。中学生という難しい年ごろの子供を持つ保護者からも、様々な相談を受けるそうだ。そんな時も「彼も彼なりに頑張っている。親御さんも耐えて下さい」とアドバイスしている。

「その場で怒ってダメにするのは簡単です。厳しいことを言う時もありますが、子供の大切な成長の時期です。多少遊ばせて、ゆっくり伸ばすことも大切だと思っています」

 プロで活躍する選手だけではなく、「大枝さんのような指導者になりたい」と、監督やコーチ、野球部長など、様々なところに自分の教え子が増えてきたと、大枝さんは嬉しそうに話す。近年は、甲子園に出場する強豪校に進学する生徒も増えている。

「僕はプロで活躍するという夢を諦めました。でも、その夢を教え子たちが叶えてくれている。これからも、プロに進んでくれる子たちが増えてくれると嬉しいですね」

 大枝さんは「プロで活躍する選手を育てる」という新たな夢を実現させた。「プロで活躍する」というかつての夢を教え子たちに託し、今後も指導に力を入れていく。

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

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