「ムエタイの一撃キックを味わえる」見た目も走りもスーパーな傑作。マクラーレン720S/最新スーパースポーツカー試乗レポート

3月27日(金)12時28分 AUTOSPORT web

 驚くべき速さと、目を見張る美しさ。スーパースポーツカーは、このふたつの要素を兼ね備えた特別な存在だ。『オートスポーツweb 最新スーパースポーツカー試乗レポート』では、クルマ好きなら誰もが憧れる数々の至高のマシンの中から注目の1台をピックアップして、その走りの印象を伝えていきます。

 

 ハンドルを握るのは、モータージャーナリストの吉田拓生さん。第6回目は、『マクラーレン720S』を取り上げます。


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■芸術的な造詣や走りの完成度は、並みのスーパーカーにはない強烈な印象を残す


 マクラーレンのロードモデルにはスポーツ、スーパー、アルティメットという3つのシリーズ(梅、竹、松のようなもの)があるが、今回の720Sはまさにその中核にあるスーパー・シリーズの1台だ。


 最近はココに、利便性を高めた『GT』というモデルが加わって、さらに複雑になりつつあるのだが……今回は720Sである。


 マクラーレン720Sの特徴は、何と言ってもそのスタイリングにある。三角形の穴のようなヘッドランプや滑らかな流体が絡み合うような全体のシルエットまで、一見おどろおどろしく見える720Sだが、実物は迫力充分である。


 生産車メーカーとしての歴史が浅いマクラーレンは、2011年に登場したMP4-12Cとその後継である650Sによって「他のスーパーカーに似てる!」「個性がない」など色々と言われていたので、相当気合いを入れて720Sをデザインしているはずだ。

アグレッシブなドアの開閉式が特徴的な720S
アグレッシブなドアの開閉式が特徴的な720S


 通常のマクラーレンはひとつヒンジのドアだが、720SはかのマクラーレンF1と同じようにAピラーの上部にもヒンジがあって、斜め方向にダイナミックな開き方をする。


 ちなみに720Sにはスパイダーもあるが、ルーフがないこちらは標準的な前ひとつヒンジなので、ドアの開き方だけでクーペを選ぶ人がいてもおかしくないと思う。


 720Sが搭載するパワーユニットは4.0リッターV8ターボで、最高出力は読んで字の如しの720ps。昨今のスーパースポーツの世界は500psオーバー当たり前で、600psオーバーもゴロゴロいる。


 こうなると600も700も大した違いがないんでしょ? なんて思えてくるのだが、違うのだ。


 ターボエンジンはご存じのように低回転域は少し元気がなく、4000回転台あたりで盛り上がりが来て、5000回転台で収束していくものが多い。


 720Sも1次の盛り上がりまでは、これまでのモデルと似ているのだが、7000回転近くで2次の盛り上がりがある。


 しかもムエタイのキックのような鋭い一撃が、背中に向けてズドンと放たれる感じ。並みのスーパーカーなら空中分解してしまいそうな衝撃なのだが、強固なカーボンファイバーシャシーとアクティブな足が、その衝撃を余すことなく加速に変える。


 すると乗り手はどうなるか? 右足が勝手に怖気づき「今度はサーキットでも行くか」となる。実際にマクラーレン720Sは富士スピードウェイのストレートで実測で(メーター読みじゃなく)300km/hを越える稀有な1台だ。


 FIA-GT3マシンがレースに出ているので、そういう感情移入のしかたもあるだろう。見た目、走りともにスーパーな傑作と言い切っていいと思う。

マクラーレン720Sクーペのコクピット
マクラーレン720Sクーペのコクピット
マクラーレン720Sクーペのリヤスタイル
マクラーレン720Sクーペのリヤスタイル
2020年の東京オートサロンのマクラーレンブースには、最新モデルのGTと720Sが展示された
2020年の東京オートサロンのマクラーレンブースには、最新モデルのGTと720Sが展示された


■マクラーレン720S 諸元




































































車体
全長×全幅×全高4543mm×1930mm×1196mm
ホイールベース2670mm
車両重量1419kg
駆動方式RWD
トランスミッション7速DCT
サスペンション前/後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ 前/後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ  前:後245/35R19 : 305/30R20
エンジン種類V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量3994cc
最高出力537kW(720ps)/7250rpm
最大トルク770Nm(78.5kgm)/5500rpm
最高速度341km/h
車両本体価格3338万3000円


■Profile 吉田拓生 Takuo Yoshida


自動車雑誌の編集部を経て、2005年からフリーのモータージャーナリストとして活動をスタート。自動車、ヨット、英国製品に関する文章を執筆。現代のスポーツカーをはじめ、1970年以前のヒストリックカー、ヴィンテージ、そしてレーシングカーの試乗レポートを得意としている。


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