不調の克服なるか、2年目のニッサンZ NISMO。台風の目と期待される新コンビ【GT500/3メーカー開発状況】

2025年3月27日(木)17時15分 AUTOSPORT web


 2024年は最終戦を前にしてスーパーGT GT500クラスのチャンピオン争いから離脱することになってしまったニッサン陣営。今年は3年ぶりのチャンピオン奪還を目指してシーズンに挑むことになるが、オフのテストでの感触はいかがなものか。スーパーGTのニッサン陣営でGT500クラスの総監督を務める日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)の木賀新一氏に聞いた。


 今年のニッサン陣営GT500クラスのラインアップでまず驚かされたのは、3号車Niterra MOTUL Zの佐々木大樹/三宅淳詞のコンビだ。長年、ニスモのエースドライバーとしてニッサン陣営を率いてきたロニー・クインタレッリが昨年でGT500を引退したことから、23号車MOTUL AUTECH Zは千代勝正/高星明誠のコンビとなり、3号車には昨年GT300クラスに参戦していた佐々木大樹がGT500に復活することになった。


●「開幕してお楽しみに」新コンビの決め手は



 まずは木賀総監督に、今季のドライバー体制の意図を聞く。


「今のラインアップのなかで、どういう体制にしたら一番、勝利に近づけるのかを考えてさまざまな議論をしてきました。ドライバーの技量、個性や性格、そしてチームメイトとのコンビを考慮して勝てる、そしてチャンピオンに一番近いということで今回のラインアップがいいんじゃないかというので決めました」


 ラインアップとしてはニスモの2台のコンビが変わり、12号車TRS IMPUL with SDG Z、24号車リアライズコーポレーションADVAN Zは継続となった。23号車の千代勝正/高星明誠のコンビは一昨年の3号車のコンビでもあり実績がある一方、今年の3号車は佐々木大樹がGT500に復帰して、新鮮なコンビとなる。



2025スーパーGT富士メーカーテスト Niterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞)

「新鮮ですよね。たしかに新鮮ですけれども、まあ、開幕してみて見ていただけると分かりますけど、なかなかいいコンビネーションのように思えますね。僕はドライビングだけで見て判断したので、後から知ったのですけど、ふたりはカート時代からつながりがあったようですね」


 その話ぶりから、3号車の新しいコンビへの期待は高いようだ。


「開幕してお楽しみに、というところですね(笑)。(佐々木)大樹のスピードはピカイチですし、ふたりとも速い。いいコンビネーションでいけるんじゃないかと思っています。結構、今年の台風の目かもしれません。楽しみなコンビです」


●セットアップやエンジン開発は「まだまだ詰められる」。課題は対応力か


 今年のマシン、2025年型Nissan Z NISMO GT500の開発についてはどのような方針で取り組んでいるのだろう。今季のGT500は外観のエアロの開発が凍結されたことから、車内の各部の変更も難しい状況となっている。


「エンジンに関してはまだ開発ができる部分があるので進めていますけど、たしかにクルマの方はエアロの開発は凍結されています。ですが、そうは言っても去年1年走っているなかで、いい時と悪い時というのが結構、はっきりと分かれていました。そこの部分でどういう要因で、同じクルマなのに悪い時は何が悪かったのか、いい時はなぜ良かったのかという分析をシーズン終わってからニスモのファクトリーではずっと進めていました」


「今年はその分析から得られたものを反映させて、セットアップの部分が多くて見た目は変わらないのですけれども、クルマとしてはそういうところでまだまだ詰められる余地があるなというのが分かってきています。それをオフのテストから試しているところです」



2025スーパーGT富士メーカーテスト MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)

 昨年のニッサン陣営、とくにニスモの2台に関しては変更した要素が多かっただけでなく、その変更後のデータが大きくライバルに対して不足していたのが響いた形となった。2024年は車両がZ NISMOに変わってフロントノーズなど外観のエアロが変わり、ニスモの2台はミシュランからブリヂストンにタイヤメーカーも変わった。そしてレギュレーションで車高の5mmアップが決められた状況で、開幕前のテストは雨が多くてデータが足りないままで開幕を迎えた。


「去年は結構、戸惑ったことが繰り返されたシーズンでしたが、その要因が分かってきましたので」と微笑む木賀総監督。


 具体的に、どの部分に要因があったのかを尋ねる。


「それはね、とてもじゃないけど言えません(笑)。とにかく今年はもうチャンピオンを獲るために、全戦ポイントを獲りたいなと思っていて、去年のように取りこぼしてしまうのはなんとか避けたいと思っています。雨に翻弄されるとかがないように、夏の暑さに翻弄されることがないように、そういう対策を施してきたのをテストで試している段階です」



ニッサン陣営でGT500クラスの総監督を務めるNMCの木賀新一氏

「計画したとおりになっている部分と、またそうでないところもあります。その課題の修正を開幕に向けてしているという状況です。 期待どおりの部分と、そうでなかった部分はありました」と、車体のセットアップについてのオフの状況を話す木賀総監督。開発ができるエンジン面での効果にもある程度の手応えを得ているようだ。


「エンジンも実際には結構、長く使ってきているエンジンなので、3メーカーとも同じ状況だとは思いますけど、我々のちょっと弱いところを修正するという対策はしています。CNF(カーボンニュートラル・フューエル/合成燃料)の燃焼に関しても、まだまだできることがある。他のメーカーさんも一緒だと思いますけど、少しずつですけど伸びる部分はあります」


 2025年シーズンに向けて、着々と準備を進めるニッサン陣営。とはいえ、開幕戦の岡山はこれまでの実績を振り返ると、ドライコンディションでは得意と言えるサーキットではなく、例年、開幕後のゴールデンウイークの富士での好結果が印象的だ。


「開幕戦、岡山はね……テストでは悪くなかったですね。私的には悪くないように感じました(苦笑)。開幕戦は現実的には1位というよりも(ニッサン陣営の)4車とも着実に上位にというのが目標ですかね。少しでも他所様のポイント獲得を防ぎたいですね」


 木賀総監督の言葉からも、現実的なシーズン戦略で臨む姿勢が見える今季のニッサン陣営。新しいラインアップと、今年のZのパフォーマンスはどのように発揮されることになるのか。開幕戦の岡山で、ある程度の答えが見られることになりそうだ。



2025スーパーGT岡山公式テスト TRS IMPUL with SDG Z


2025スーパーGT富士メーカーテスト リアライズコーポレーション ADVAN Z

AUTOSPORT web

「不調」をもっと詳しく

「不調」のニュース

「不調」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ