北中米W杯での初出場が期待できる隠れた強豪国5選
2025年3月27日(木)18時0分 FOOTBALL TRIBE

日本代表が世界最速で本大会出場を決めた2026FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会(アメリカ・メキシコ・カナダ)。今大会から参加国数が32か国から48か国に増加し、アジア枠が「4.5」から「8」となった。
これにより日本の独走となったアジア最終予選グループCの他国(オーストラリア、サウジアラビア、インドネシア、バーレーン、中国)は団子状態となり、最下位の中国代表にもまだプレーオフ進出のチャンスが残されている。
ここでは、実力はあるにもかかわらずW杯本大会出場の経験がなく、出場枠が増えたことで遂に悲願に手が届きそうな状況にある5か国を挙げ、各大陸の最終予選や大陸間プレーオフを展望したい。

バーレーン(FIFAランキング81位)アジア予選
3月20日に日本と対戦したバーレーン代表は、敗れたものの粘り強くタイトな守備で日本を大いに苦しめた(埼玉スタジアム2002/0-2)。通算対戦成績は日本の11勝2敗(27得点8失点)だが、2004年8月のアジアカップ予選から2009年3月の南アフリカW杯アジア予選までの8試合は、全て1点差試合だ。
日本が相手となると常に激闘を繰り広げるバーレーンに、W杯本大会出場の経験は未だにない。2006年のドイツW杯予選では、大陸間プレーオフに進出でトリニダード・トバゴ代表に2試合合計1-2で敗れ、2010年南アフリカW杯予選でも再び大陸間プレーオフでニュージーランド代表に2試合合計0-1で敗れ、あと一歩のところで本大会出場を逃し続けている。
バーレーンは、今アジア最終予選8試合終了時点でグループCの5位となっているが、ホームでの残り2試合(6月5日サウジアラビア戦、6月10日中国戦)の結果次第では、逆転でのプレーオフ進出も大いにあり得る状況だ。

ウズベキスタン(FIFAランキング58位)アジア予選
ウズベキスタン代表は、既に中央アジアの勇と評価されている強豪だ。1991年のソ連崩壊に伴い1992年に独立。アジアサッカー連盟(AFC)に加盟し、W杯アジア予選には1994年のフランス大会時から参加しているが、これまで本大会出場には至っていない。最も本大会出場に近付いたのは2006年のドイツW杯予選で、大陸間プレーオフ進出を賭けたプレーオフでバーレーンに敗れた。
今アジア最終予選では、グループAでイラン代表に次ぐ2位につけており、3位のUAE代表との勝ち点差は4であることから、初出場の絶好のチャンスだ。AFCアジアカップでも安定して上位進出(最高成績ベスト8)しており、FIFAランキングでは日本(15位)、イラン(18位)、韓国(23位)、オーストラリア(56位)、イラク(56位)に次ぐアジア6位に位置している。
ウズベキスタンは国内リーグ(ウズベキスタン・スーパーリーグ)が整備され、中でもパフタコール・タシュケントはACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)ではベスト16に進出した。さらに、アンダー世代の代表チームも強力で、2023AFC U-20アジアカップ中国大会で優勝し、2023FIFA U-20W杯アルゼンチン大会ではグループリーグを2位突破しベスト16に進出、2024年のパリ五輪にも出場した。
しかし、A代表は日本、韓国、イラン、オーストラリアといった常連国の壁を乗り越えられないでいる。国民の悲願であるW杯初出場が現実のものとなれば、ウズベク人、タジク人、カザフ人、カラカルパク人、キルギス人、ウイグル人、ドゥンガン人、ロシア人などで構成される多民族国家の強みを生かし、いい意味でアジアらしくない欧州的なサッカーを披露してくれるのではないかという期待感もある。

フィンランド(FIFAランキング69位)欧州予選
フィンランド代表は、2021年のUEFA欧州選手権ドイツ大会(ユーロ2020)において同大会初出場を果たし(グループリーグ3位敗退)、グループリーグ第2戦は敵地でデンマーク代表を倒した(コペンハーゲン・パルケン・スタディオン/1-0)。この大会初勝利を挙げた勢いで、W杯初出場を虎視眈々と狙っている。
今北中米W杯欧州予選では、同組にオランダ代表とポーランド代表が同居する“死の枠”に入ってしまった。しかし、欧州枠が「13」から「16」となったことで、グループ2位に滑り込めばプレーオフ経由での本大会出場がグッと近付いてくる。
背番号10を背負うのはアメリカのメジャーリーグサッカー(MLS)で活躍し、フィンランド代表の歴代最多得点記録を持つFWテーム・プッキ(ミネソタ・ユナイテッド)。3月22日に開幕した欧州予選の初戦では、敵地でマルタ代表を1-0で破り、続く24日に行われた第2戦のリトアニア代表戦はこれも敵地で2-2で引き分け、1938年のフランスW杯予選から実に“23度目の正直”へ向けて上々のスタートを切った。
国内リーグである「ヴェイッカウスリーガ」には、元U-20日本代表MF田中亜土夢が所属する欧州カップ戦の常連で、今季もUEFAカンファレンスリーグ(UECL)に出場したHJKヘルシンキをはじめ、育成に力を入れるクラブが多く、近年は選手の海外進出も増え代表チームの強化に繋がっている。W杯未出場国ながら、北欧の“隠れた強豪”とも言える存在になりつつある。

ベネズエラ(FIFAランキング47位)南米予選
W杯南米予選の出場枠は「4.5」から「6.5」となった。前回王者のアルゼンチン代表はいち早く本大会出場を決め、ベネズエラ代表はプレーオフ圏の6位コロンビア代表との勝ち点差「5」の7位につけている。
ベネズエラは南米サッカー連盟(CONMEBOL)に所属する10か国のうち唯一、W杯本大会出場経験がない国だ。前述のフィンランドを超える24度目の挑戦で、初の本大会出場を目指している。
2010年の南アフリカW杯予選では過去最高の6位に入ったが、出場枠が「4.5」だったため、上位4チーム(ブラジル、チリ、アルゼンチン、パラグアイ)が出場権を獲得し、5位のウルグアイ代表が大陸間プレーオフへ。ベネズエラは惜しくも敗退となった。
メキシコリーガMXで得点王となった初のベネズエラ人FWサロモン・ロンドンは、近年代表の最多得点記録を持ち、所属のCFパチューカでは昨2023/24シーズン得点王のタイトルを獲得。他にも、2018シーズンにアトランタ・ユナイテッドでMLS得点王の勲章を手にし、現在サンノゼ・アースクエイクスで活躍するFWヨセフ・マルティネスなどの海外組が台頭し、国内リーグ(プリメーラ・ディビシオン)も成長している。
以前までは“野球の国”という印象で、サッカーに関してはアウトサイダーと見なされてきたベネズエラだが、今では他の南米諸国にとって侮れない相手となった。2011年と2019年の南米選手権ではベスト8進出を果たすなど、着実に結果を残している。10か国参加とはいえ群雄割拠の南米予選だが、ベネズエラにとっては千載一遇のチャンスだ。

ニューカレドニア(FIFAランキング152位)オセアニア予選
オセアニア予選ではニュージーランド代表が4大会ぶり3度目の本大会出場を早々に決めたが、オセアニア枠が「0.5」から「1.5」となったことで、代表決定戦で敗れプレーオフに回ったニューカレドニア代表も不気味な存在だ。
これまでオセアニア地域からW杯に出場した国はニュージーランドと、2005年にアジアサッカー連盟(AFC)に転籍したオーストラリアのみ。ニュージーランドがFIFAランキング89位で、ニューカレドニアは152位。これだけ見れば“低レベル”と見られそうだが、そこに落とし穴が待っているのではないか。仮にニューカレドニアが本大会初出場を決めれば、W杯史上最もFIFAランキングが低いチームとなる(現在の記録は2010年南アフリカ大会に出場した北朝鮮代表の105位)。
ニューカレドニアは現在でもフランス領で、有能な選手がいればフランス代表に選出されてしまう。その代表格が、1998年のフランス大会で開催国Vを成し遂げた元フランス代表MFクリスティアン・カランブー(現オリンピアコス、スポーティングディレクター)だ。
そもそも1928年設立のニューカレドニアサッカー連盟がFIFA(国際サッカー連盟)とOFC(オセアニアサッカー連盟)に加盟したのは2004年のこと。ニューカレドニアはOFCネーションズカップでは2度の準優勝(2008、2012)という結果を残し、ヨハン・シダネル現監督を含め、代々フランス人指揮官によって強化が進められている。
今北中米W杯では、大陸間プレーオフのレギュレーションも変わった。北中米カリブ海から2か国、アジア、アフリカ、南米、オセアニアからそれぞれ1か国が出場し、 FIFAランキングに基づいた上位2チームがシードされた上で、2026年3月に開催国(アメリカ、カナダ、メキシコのいずれか)で一発勝負のトーナメントが行われ、勝ち進んだ2か国が出場権を得られる。
オセアニア予選決勝ではニュージーランドに0-3で完敗したニューカレドニアだが、大陸間プレーオフの組み合わせが直前まで分からない上、“未知のチーム”とあってスカウティングは困難を極めるだろう。そこに隙が生まれればニューカレドニアにもチャンスが訪れる可能性が生まれる。しかもホーム&アウェイではなく中立地でのトーナメント戦だ。何が起きるか分からないプレーオフとなること必至だろう。